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面倒な人たちに囲まれて。  作者: 枯木榑葉
第二章 ~明るいけど実は××××だった幼馴染みに囲まれて。~
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後編

「今からデートしよう」



Aさんがそう囁きました。



お礼がデートとは…。

古典的ですね。面白味にかけます。

まあ、面白味があったからといって、特に何もないんですけどね。


さて、どうしましょうか。

この時間に、外に出るのはどうかと思います。しかし、お礼はしなければいけませんよね。



私が紡ぎ出した答えは――






「ごめん、行けない。さすがに、この時間に外に出るのは危ないと思うの」

「ちゃんと、家まで送るぞ?」

「うん…。それでも、行けない。ごめんね」



C君のこともありますし、やはり警戒はしておかないといけないと思うんです。

Aさんもそうとは限りませんが、用心しておくことに越したことはありません。

それに、何かC君と同じ匂いがするんです。

あ、物理的にではありませんよ? 雰囲気です。



「……そっか、分かった。急にごめんな、こんなこと言って」

「……いや、私の方こそごめん」

「そんじゃあ、帰るな。また明日」

「……うん。またね…」



Aさんは悲しそうに帰っていきました。

その姿を見ていると私はAさんに対して罪悪感が湧いてきす。



さすがに、デートだけなら行ってもよかったでしょうか。

家に来いと言っていたわけでもありませんし。



そんなことを思いながら、この日は過ぎていきました。



そして、事件が起こったのは次の日の放課後です。



「暑いぃぃー」

「そりゃあ、夏だからね、姉さん。熱中症には気を付けるんだよ。ちゃんと、水分と塩分取ってね」

「それ、あんたに言うべき言葉じゃないかな? これから、部活でしょう? 気をつけなさいよ」

「わかっているよ。姉さんじゃあるまいし」

「なにそれ、私がバカだといいたいの?」

「何言ってるの? そんなこと言うわけないじゃないか」

「そうよね…。そんな酷いことを実の姉に向かって言わないわよね」

「今更、姉さんに向かってバカなんて言わないよ。既にわかっていることだもの」

「あれ!? 予想以上に酷い扱いなんですけど!? あんた、私のことどれだけ出来ない姉だと思ってるの!?」

「さて、もう行くからね。でも、本当に帰るだけで熱中症とかならないでね。距離も徒歩10分なんだし」

「スルーですか、天羽君。そして、キミは私を何だと思っているの? 徒歩10分で熱中症とか私そんなに虚弱体質じゃないんですけど!?」

「あ、家に帰ったらまず手洗いうがいをするんだよ。この時期の風邪って長引くって言うから」

「わかってるわよ!! 私を小学生かなんかと勘違いしてない!? もう高校生なんですけど!! そして、あんたと私は同い年!!」

「いや、小学生のほうがまだ姉さんよりしっかりしてるよ。知らないところで迷子になっても携帯で戻れる子とかもいる時代だしね。その点、姉さんは手を繋いでないとすぐに迷子になるよね。何度も通っている道でもたまに迷子になるし。小学生と比べるのもおこがましいよ。世界中の小学生に謝って」

「……ゴメンナサイ…。って違うでしょ!? あんたが私に謝りなさいよ!! それから、さすがに何回も通っている道で迷子になんかなるわけないでしょう!?」

「ついこの間も、通学路で迷ってオレに電話で助けを求めてきたくせに?」

「なっ! あ、あれは、たまには他の道も通ってみようとしてただけよ!」

「はいはい、そういうことにしておいてあげるね」

「だから! 本当に違うからね!?」

「うんうん、分かったから。そうだ、帰ってもなにもしなくていいからね。夕飯とか作ろうとしなくていいから。包丁を持つのは危ないし、火を扱って火傷とかしても、そこにオレがいないんだから対処できないでしょ?」

「だから、私は小学生じゃないっ!!」

「あぁ、それから、帰ったらちゃんとすぐに制服はハンガーにかけるんだよ。シワになっちゃうからね」

「もう、いいから早く部活に行けよ!!」

「うん。じゃあ行くから。絶対だよ!! 絶対何もしないでね! 寄り道とかもせずに帰るんだよ!!」

「あんたは私のお母さんかぁぁぁあああああ!!」




見てお分かりになられた通り、私の双子の弟は超過保護です。

高校生にもなって未だに包丁を触らせてもらえないのはどうなのでしょうか。

私と天羽はクラスが違った例がないので(なぜ、いつも同じクラスなんだ? 普通双子とかの場合、クラスを分けるものなのではないの?)、調理実習はいつも同じ日の同じ時間。

違う班にしていても実習当日は何故か、同じ班に。

そして、私がやらなければならない工程は全て天羽が根こそぎ奪っていくのです。

先生やクラスメートの抗議はなんのそのと丸め込み、私はただ、見ているだけ。

その為、私は今まで一度も料理をしたことが無いのです。

カップラーメンですら作らせてもらえないって、私は何処の御令嬢ですか?

てか、大体仮にも姉に向かって何あの態度。

確かに、同い年だから少しバカにしてくるのは、よしとしよう(いや、本当はムカつくんだけど)。でも、アレ。少しどころじゃないよね!? 完全にバカにしているよね!? いつも私のほうが年下みたいに扱って! 私も今日で17歳になったって言うのに、小学生に接するみたいさ!!




などと、弟に対して独り愚痴りながら帰っていると…



「おーい、妹。熱中症には気をつけろよー」

「何ですってぇー!?」

「うおっ!?」



Aさんが声をかけてきました。

私は、Aさんだとは気付かずに『熱中症』という単語に反応し、物凄い剣幕でAさんのほうを振り返ってしまい、Aさんを驚かせてしまったようです。



「あ、なんだ、ごめん。Aさんか」

「あ、ああ。急に睨まれるんで何かしたかと思った」

「本当にごめんっ! ちょっと、今機嫌が悪かったから」

「まあ、何にせよ。熱中症には気をつけろよ。ほれ、飲みな」

「…お茶?」



そう言って、Aさんが渡してきたのはペットボトルに入ったお茶(?)でした。

ラベルに張ってある実際の商品とは違う色だったので、きっと家で作ったお茶をこのペットボトルに入れたのでしょう。

私が、まったく飲む様子がなかったからか、Aさんが怪訝そうにしています。



「なんだよ、言っとくけど、今日それに口付けてないからな? 俺今日は2つ持ってきてるから」

「そうなんだ。なら、頂こうかな」

「それがわかったとたんもらうとか、俺傷つくんだけど」

「そっか。なら、もっと傷つけばいいよ」

「俺、マジでお前怒るぞ、ほんと」

「それは、勘弁してください」

「はあ、ほら。さっさと飲め」

「うん」



そうして、私はそのお茶(?)を口に含み、飲み込みました。



「……え?」



そのとたん、お酒でも飲んで酔った人のように私の体はふらつきはじめます。

視界はだんだん黒くかすんでいき、耳鳴りがしてきました。



私はとうとう自分の足で体を支えておくことが出来ず、Aさんのほうに倒れていきます。






Aさんが妖しく笑っているのを捉えつつ、私の意識は深い闇の中に沈んでいきました――



これで、主人公視点は終了です。

次はAさん視点に移ります。



※誤字脱字等ありましたら、お知らせ下さい。

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