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スピリチュアルX /風水大作戦(前編)ーOperation: Focus Impossible

風水大作戦(前編)――一介の主婦が「55年体制」を終わらせた日


近所では「気のいいおばあさん」で通っている私の母。

だが、その日常の裏側には、教科書には決して載らない「もう一つの日本史」が流れている。

マダムからの電話と、黒塗りの車

ある日、母のもとに一本の電話が入った。


あるじは、通称「マダム」。

彼女は、海外旅行に行けば空港のVIPルームから機内まで、

空港幹部がエスコートするほどの影響力を持つ人物だ。


「先生、私の大事なお友達が悩んでいるの。相談に乗ってあげて」

いつものように迎えの車が到着し、母はそれに乗り込んだ。


今回ばかりは、あのマダムでさえ、相当な気を遣っている様子が伝わってきた。


母が案内された先にいたのは、独特のオーラを纏った一人の男だった。

彼は当時、長野オリンピックの役員の仕事に内定しており、他にも数々の名誉職のオファーを抱え、

その進退に迷っていた。いわゆる『定職に就かなくても食っていける階層』の人間だ。


その男を前にして、母は一切の迷いなく即答した。

「次の衆院選に出なさい。歴史が変わるわよ」

母はさらに、具体的な指図を次々と繰り出した。

男は食い入るように聞き入り、気づけばノート二冊分ものメモを取っていたという。


「確かに、天命を賜りました」

男はそう言い残し、晴れやかな顔で帰っていった。


翌年の1993年。長く続いた自民党の「55年体制」は、誰もが予想しなかった形で終焉を迎える。

日本が大きく揺れた首相指名の夜。我が家の電話が鳴った。

電話に出たのは、何も知らない私の妹だ。


「細川でございます」

「……どちらの細川さんですか?」

妹の問いかけに、相手は静かに、しかしはっきりと名乗った。


「細川護煕でございます」


妹は、受話器を持つ手が震えるほど驚いたという。


細川氏は、興奮を抑えきれない様子で、真っ先にこう口にしたという。

「今回のことは、すべて、あなたのおかげです」


もちろん、政局は一人の助言で動くほど単純ではない。

だが、決断の瞬間には、必ず誰かが盤面を示している。


翌年の大河ドラマ、『花の乱』で細川勝元を演じていた野村萬斎氏の見事な所作を画面で見るたび、

私は電話の向こうの彼とイメージを重ね、歴史の不思議を感じることになる。


(※かつてマダムは、母のシナリオに従い、草月流の勅使河原宏氏の監督作「利休」にカメオ出演して、同じく細川幽斎役でカメオ出演していた細川護煕氏との親交を深めていたのだ。予め、こうなる事は予定調和だったのかも知れない。 

つまり“バタフライエフェクト”だ。)


その後も細川氏と母の不思議な交流は続いた。

「官邸が盗聴されていましてね」という物騒な相談に対し、母が「じゃあ、禅問答でいきましょうか」と返す。まるで掛け合い漫才のような関係だったというから、世の中はわからない。


結局、細川政権は短命に終わった。

だが、その後の氏の二人の令嬢は、一人は裏千家へ、一人は三井総領家へと嫁がれた。

まるで、あの時動いた巨大なエネルギーが、日本の文化と経済の核心へと静かに還っていったかのように。


そしてもう一つ、細川氏とマダム、そして一介の主婦である私の母。

この三人が囲んだ酒の席から始まった「日本新党」という流れは、

その後の日本政界を形作る巨大な苗床となった。


野田佳彦、枝野幸男、前原誠司、小池百合子、茂木敏充……そして、我が敬愛する河村たかし。

今やメジャーとなった政治家たちの多くが、あの時の「小さな酒席」から芽吹いたのだ。


歴史は英雄で動くのではない。

利害が整列した瞬間に、決断が下るだけだ。


だが、母はそれらの喧騒を眺めてこう言い放つ。

「菜の花には蝶、梅には鶯、ゴミにはゴキブリ、利権には政治家」


母にとって、国家を動かす「構造設計」も、集まってくる政治家たちの狂騒も、等しく自然の摂理に過ぎない。

自身が時代の分水嶺となった事実さえ、母にはどうでも良いことなのだ。


今日も彼女は、ただの「気のいいおばあさん」として、近所の風景に溶け込んでいる。



これは予言ではない。歴史の構造設計(Structural Design)である。

Operation: Focus Impossible


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