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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第143話 体内世界の真実


「店長さん、ちょっとした質問なんだけど。ここってダンジョンの中……渋谷ダンジョン(・・・・・・・)下層7階(・・・・)で合ってるよね?」


「ん? ああそうだな。その口ぶりだと、無窮(・・)側からこっちに来たのかい?」


「まあそんな感じだね。しかしどうしてまた、こんな場所に店を?」


 イヴはトオルの雇い主である店長、アズマに世間話に扮して、さりげなく情報収集を始める。


(……イヴさん、話慣れてるなぁ。本当に人間みたい)

「もぐっ……ん、意外と美味いのこの肉」

「…………」


(……トオルは反応してこない。これくらいの質問ならセーフって事かな)


「まあ俺の趣味だな! 例えばダンジョンで探索中に、お宝が見つかったら嬉しいだろ? それと同じで、俺も探索者にとってそういう場を作りたいと思ってな」


「……ふむ」


「最初は大変だったが、今じゃそこそこ(・・・・)繁盛させてもらってるよ。特にそこのトオルが来てからは、食材調達も手伝ってくれるようになったからな!」


「店長、俺の事は話さなくていい」


 隅に立っていたトオルが口を挟む。しかし本気の拒絶ではなく、どこか気安い仲を感じさせる声色だ。ホムラにはそう聞こえた。


「ははっ、悪い悪い。という訳で、別に大層な理由があってダンジョンに店を開いてる訳じゃないんだ。……にしても、今日はちょっと客が少ない気もするが」


「まーまー店長。客が少ない事はいい事じゃないですか。私も遠慮なくサボれますし」


「シンシア、お客さんの前で何言ってんだお前」


 呑気な笑みを浮かべる女性のエルフ、シンシアと、呆れた顔の店長アズマ。

 トオルはそれを黙って見ている。窓の外からは、淡く光る鍾乳洞の景色(・・・・・・・・・・)が広がっていた。


「でも確かに、普段はもう少しお客さんが来るよね〜?

トオルちゃん、さっき店の外に出てたけど、何か異変とかなかった?」


「……。何にもねぇよ。いつも通り、呑気で平和なダンジョンだ」


 ぶっきらぼうな口調で、トオルは嘘を吐く(・・・・)

 そのやり取りで、イヴはトオルの立ち位置を把握した。


(……店員二人は、この店の異変に気づいてない。渋谷ダンジョン下層を模した環境も、自分自身も模造品なのに。そしてこのトオルは、その事実を隠そうとしている。

まあ無理もないか。自分が実は偽物です、って言われたら、普通は動揺しまくるだろうし。余計な負担を掛けさせたくない、って所かな?)


 この二人に真実を暴露して揺さぶり、この閉鎖空間に何らかの影響が及ばないか試してみるという案もイヴの中にあった。

 それをイヴは密かに却下する。そんな案を実行すれば、トオルは恐らく本気で殺しにくる。


(どういった理由でトオルがこの店に居るのか、ボクも理由は知らないけれど。随分この二人を大事に想っているようだ)


「そこのトオルって人、さっきは用心棒って名乗ってたけど。彼もこの店のスタッフなのかい?」


「ああ。見た目はちょっと怖いかもしれんが、あいつもこの店の一員だよ。まあちょっとした偶然で(・・・・・・・・・)雇ったんだがーー」


「店長、俺の事は話さなくていいって言ったろ」


「すまんすまん。ともかく、用心棒としての腕は本物だぜ。だからお客さんも安心して食事していってくれ」


「……そうさせてもらうよ。貴重な話をありがとう」


(トオル本人への詮索はNGか。これ以上の情報収集は難しそうかな)


 残ったサラダをフォークで突きつつ、イヴは知り得た情報をまとめる。

 彼女の思考には、この体内空間の全体像が出来上がりつつあった。


(バエルはボクから奪ったダンジョンマスターの権能で、この体内世界に新しいダンジョン(・・・・・・・・)を作り上げた。この偽りの背景も店も店員も、全てがダンジョンの生成物。バエルの意のままに操られる模造品)


(しかし、模造品である彼ら三人の行動に違和感はない。思考パターン、技術、戦闘能力。それらをそっくりコピーしただけで、操られてはいない。……バエル本人が操っているのなら、必ずどこかに違和感が生じるはずだ)


(……できる限り自然の状体でボク達と接触させて、何かを起こそうとしている。バエルはそれを狙っている。

人物だけでなく、店そのものまで構成したという事は……)


 イヴはバエルの冠するあだ名を思い出す。

 【暴食】。人間が宿すという、七つの原罪の一つだ。




(あのカエルは、人間の料理に興味を持っている。それを自分で複製して再現しようとしていて、僕たちはそのテスター。味見役ってところかな)



 ……イヴの考察は、的を得ていた。

 バエルは美食を追い求める魔王種。しかしそれを、彼は再現できないでいる。

 その為の試行錯誤を行う空間。それが彼女達が今いる、バエルの体内空間なのだ。


(すぐに私たちが殺されなかったのもそういう事なんだろうね。このままじゃボク達は、一生ここで味見役をする事になるだろう。……そして)


 イヴは少年トオルに視線をやる。

 現在の彼に、恐らく料理の心得はない。先ほどの調理の際、彼は全く手伝わなかったからだ。

 美食を再現するだけ(・・)なら、トオルをコピーする必要性はない。ならば、彼がここにいる理由とは。


門番(・・)。ダンジョンにおけるラスボス。この世界、いやこの店の守護者。

――少年トオルを倒さない限り、恐らくボク達はこの世界から出られない)


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