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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第121話 トオルとシラユキの作戦会議


(三人称視点)


 トオルがシドウと二度目の会談を行う、三日前。

 客のいない『止まり木亭』にて、今後の経営戦略会議が行われていた。

 会議といっても、参加者はトオルとシラユキ、二人だけであったが。


「結局の所、一番の問題は“顧客が自力で店に来れない”点なのよ」


 淡々と事実を突きつけるシラユキに、会議が始まって早々トオルは居心地悪そうにしていた。


「現状お店に来てくれているのは、唯一自力で来れるホムラちゃんと、抽選で当たった数人のお客様だけ。――本来お店っていうのは、顧客に選択権があるものでしょう。店に入るかどうか、その選択権が顧客に無い現状、正直お店としての(たい)をなしていないのよ」

「お、仰る通りだと思います……」

「だから目下の課題としてはそこを解決するべきなんだけど……そもそも店長は、止まり木亭をどんな風にしたいの?」


 計画を練るからには、目的(ゴール)を明確に定めておかなければならない。

それを再確認するための問いだった。


「どんな風に、か」

「店長が思い浮かべる、“止まり木亭がどうあってほしいか”っていう理想(ビジョン)よ。そこがハッキリしてないと、目的地も経路も定まらない。

……一応、店の成り立ちとかは前にも聞いたけれど。念の為の再確認」

「……」


 サカガワトオルは、この店を前代の店長から引き継いでいる。

 こことは別の世界線。同じように渋谷ダンジョン下層7階で、店名こそ違うが飲食店を営んでいたのだ。

 わざわざダンジョンで店を開いていた前代の店長。トオルもその理念を引き継いでいるそれは。


「探索者にとってのオアシスを……止まり木を提供したい

色々理由はあるけど、一番の目的(ゴール)はそれだ。探索で疲れ果てた人、大きな戦いに挑もうとする人、進むべき道がわからなくなった人。そういった人達が一時、羽を休められるような場所にしたいんだ」

「……それだけなら、必ずしも繁盛する必要はないと思うけど。でもお客さんは欲しいのよね?」

「お客ほぼゼロとか流石に寂しくない??」


 それに、こうも閑古鳥じゃ前代に顔向けできないしな――小さな声で、トオルはそう呟いた。


「……わかった。でも現状、誰もこれないオアシスと化してるのよね。紛れもなく立地が悪いせいだけど、場所を変えるつもりもないんでしょう?」

「それは本当に最終手段にしたいな……一応、見張り役って仕事もあるし」


 トオルが下層7階というクソ立地に居座っているのは、前代からそのまま引き継いだ他にも理由がある。

 以前にホムラとの初コラボの際は濁した理由、それは深層の監視と管理だ。

 無窮を通って地上に上がってこようとする侵入者の検知。そして深層に迷い込んでくるユニークモンスター共の処理。

 ダンジョンを好きに使っていい代わりに、この二つの役割を果たす事……それが実質家主であるイヴから、この世界線に招かれた際に契約した決まり事であった。


 ……厄災のトオルが消えた以上、その役割も無意味になったのでは? とトオルは考えているが、今のところこの場所を動くつもりはなかった。


「なら、やっぱり店までの過程(・・)をどうにかしないといけないわね。ゴール地点が変えられないなら、その過程を楽な道程(みちのり)にするしかない」

「結局そこなんだよな……俺もあれからいくつか考えてはいるんだが」


 今トオルが行っている、抽選で直接送迎するという手法はあくまで間に合わせのものだ。

 先の“探索者にとってのオアシス”という理念を叶えているとは言い難い。ただただお客を呼んでいるだけである。


「シドウさんにも以前、ちょっと話してたわね。転移門(・・・)を設置してみたい、とか。あの時は保留になったけど」

「良い案だと思ったんだけどなー。店内に直通のワープゲートを作って、もっと浅い層に設置する作戦。コラボ配信でその行き方とか映したらすげー効果あると思ったんだけど」

「多分、安全性とか諸々の問題でしょうね。転移できる門だなんて、この世界にはないオーバーテクノロジーみたいだし、安全性も責任も誰が保証するのかって話。例えば魔物に逆利用される可能性もあるし」

「ムムム……」


 眉をひそめて唸るトオル。さすがに転移門だなんて大掛かりな装置、協会の許可なく設置するのは大きな問題に繋がる。

 そこはトオルも承知していた。


「……となると、他の案を探すしかないんだよなぁ」

「そのための今回の会議でしょ? お互いに案を出して、現実的なものを考える。それが纏ったら、改めてシドウさんにプレゼンする。この現状を打破するには、協会の力添えがないと難しいと思うわ」

「そうだね。この三日間でなんとか考えないとね」


「……三日間?」


 その単語を聞いたシラユキが、疑問の表情を浮かべた。

 彼女は今日すぐに良い案が出るとは考えていなかった。なので三日間などと期間を定めず、これからゆっくり時間をかけて、二人で考えるつもりだったのだが。

 なんだかシラユキは猛烈に嫌な予感がした。


「あれ、そういやシラユキちゃんに言ってなかったか。三日後にシドウさんとここで会う約束したんだ」

「なんで?? なんで案もまとまってないのに約束しちゃったの???」

「いやぁ、こういうのは期限を決めて自分を追い込んだ方が、やる気が出るもんだと思って……」

「その気持ちはわかるけど私まで巻き込まないで!?」




 この後散々怒られたトオルだったが、シラユキは何だかんだ最後まで付き合ってくれた。


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