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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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特別訓練と事情を持った亜人ハンター-10

サブタイトルを変更させていただきました。

「私とサティヴァ―ユさんが沢山の冒険者を連れて師匠の下に戻ったのはそれから1時間近くが経った頃でした」


「1時間って、それじゃあ……」


 俺の言葉にサクラは目を伏せ、静かに一度頷き、そして一拍おいてから言葉を吐いた。


「私たちが師匠と別れた所に戻った頃にはその場には師匠の姿はなく、数体の『血猿(ブラッド・エイプ)』と師匠の物だと思える2本のダガーが転がっていただけです」


「じゃ、じゃあその師匠の遺体は……ッ!」


「いえ、確かにその場にはいませんでしたが、少し離れた所で『血猿』に囲まれるように『血猿』の中心でかなりの量の血を流してる上に虫の息に近い状態になって倒れている姿を他の冒険者が見つけてくれました」


 そこで一息ついたサクラは新たに運ばれてきた飲み物で喉を潤すと当時を思い出したか瞳を潤わせており、今にも泣きそうな表情にもなっていた。


「師匠はすぐに街に運ばれ、数人の神官に治療を施されたのですが、傷も深かった上に流れた血の量も多かったせいで一日と持たずに亡くなりました。その後は流れるように簡易的ではありましたが師匠の追悼式を行いました。……多分、その辺りからでしょうかサティヴァ―ユさんがああいう風になってしまったのは」


 サクラは自分とサティヴァ―ユそしてリアという師匠との過去を話し終えると思い出したかのようにサティヴァ―ユのことを話し始めた。その辺りのことは俺も知っている情報を照らし合わせるような形になっていた。


 ☆★☆★☆


「その、こんな時間まで色々と付き合わせちまってすまなかった」


 サクラと酒場で話していたら既にかなり時間が経っていたようで酒場を出ると既に往来には人の姿はポツリポツリとなっており、時刻を確認するとすでに寝る時間に差し掛かっていた。


「いえ、私も誰かと久しぶりにゆっくり話せたので大丈夫です。それより明日から彼女とはどうするつもりですか?」


「そうだなぁ、とりあえず努力はするが上手く付き合っていけるか分からねぇな」


 正直、サクラとサティヴァ―ユの過去を知ることは良かったのかもしれないがそれが明日からの生活にどう役立つのかユウキはまだ悩んでいたがそれが解決するのも時間の問題だと頭で無理やり理解させることにした。結局は明日にならないと分からないものだ。


「まぁ、どう付き合おうがあなたとサティヴァ―ユさんはペアであることは変わりませんので頑張ってください。それじゃあ私はこれで……今日はありがとうございました」


 サクラはそう言うとユウキに一度会釈をすると身を翻し家に帰ろうと足を進めた。俺は流石に街に灯りが灯っているとはいえ夜道に女性を1人で帰らせるのは男としてどうかと思い、声を掛けようとした瞬間、サクラは何かを思い出したかのように「あぁ、言い忘れてました」と言いながらユウキの方へと一度振り向いた。そして—————


「ペアの5組はダンジョン攻略前日の午前に2対1の摸擬戦をするのでそれなりに連携が取れないと判断された場合はダンジョン攻略への参加は無しになりますのでサティヴァ―ユさんにも伝えてくださいね」


 と言葉を残し、サクラはもう一度小さく頭を下げると家の方向へと歩き出した。


「嘘だろ……」


 いきなりの事でサクラの言葉を瞬時に理解できなかった俺はサクラが視界からそれなりに離れた頃に一言だけ言葉をポツリと溢した。


「あと5日、あと5日、か……時間はあるかもしれないが正直足りる気がしねぇ」


☆★☆★☆


 そしてすでに訓練期間の内の5日目。今日も今日とてサティヴァ―ユは当たりもしない矢を放っていた。ユウキはサクラと話をした次の日にサクラの伝言を伝えるべく久し振りにサティヴァ―ユに声を掛けたが「そうか」とだけ答え会話はほぼ強制的に終了した。


 ただそれだけで終わってしまってはユウキとサティヴァ―ユの間にはさらに溝が深まるばかりだと思ったユウキはついでに質問として、ただの疑問として何故そんなにも1人でやり遂げようとするのかサティヴァ―ユに尋ねたが彼女は何も答えなかった。さらにサクラから聞いたサティヴァ―ユとリアとの過去が原因なのかを尋ねたところサティヴァ―ユは何も答えはしなかったがユウキにも分かるレベルでユウキと会話するのを拒んでいるのは分かった。


 そこでユウキは気付いた。この質問はさらに2人の間に溝が深まる上に、この質問は触れてはいけないことだと気付いた時には遅く既にサティヴァ―ユから拒絶されたかのように距離まで取り始めたのだ。


 —————詰んだ。もうこれ詰んだわ。あいつはなんであんな頑なにも1人でやりきろうとするんだ?反応から見ても原因はサクラからも聞いた師匠—————リアとの過去にあるのかもしれないけど、正直なところそれは絶対っていう確証はないし、話し合うにもあっちはこちらの話に耳も向けないしでこれ以上俺にどうしろと?


 ユウキはサティヴァ―ユの姿を諦めたような虚ろな目で眺めながら愚痴を溢した。さらには先日のサクラとサティヴァ―ユとのペアを考えたソウジや他の攻略隊を恨めしく思っていた。


「くそッ!また外した!」


 標的である『翠眼兎(グリーンアイ・ラビット)』へと放った矢が外れたことを目にしたサティヴァ―ユは逃げる『翠眼兎』の後ろ姿を恨めしそうに睨みつけながら近くの樹木に拳を力任せに叩きつけた。暫くしてから何かを思い出したかのように叩きつけたせいか微妙に赤くなっている拳を樹木から話すと次は暗い表情へと一変させ、近くにいるユウキにも聞こえない声量でブツブツと呟きながら外れた矢を拾う。


 —————まただ、また外した。これでもう何回目だ?何故、私はこんなにも努力しているのになんで当たらない。


 拾った矢を見つめながら何故一発も当たらないのかを思考する。だが、彼女には原因が全くと言っていいほどわからない。


 —————いや、本当は理解しているはずなんだ。だけど……やはり受け入れたくない。


 サティヴァ―ユは手のひらにある矢を見つめながら昨夜あった出来事を思い出す。

次回更新は6/19です

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