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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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特別訓練と事情を持った亜人ハンター-9

「はぁ、はぁ……ここまでくれば……」


 『血猿(ブラッド・エイプ)』の群れから逃げ延びたリアたちは一度いつも魔物を狩っている辺り—————街にもすぐに戻れる位置まで戻っては来ていた。


「師匠、一度街に戻って他の冒険者に救援をお願いしましょう。流石にあの数は体勢を整えた所で私たち3人だけじゃ無理です」


 サクラは乱れる呼吸をゆっくりと整えながらリアに提案する。リアもサクラと同じことを考えてはいたが、それが出来るとはリアは思っていなかった。何故なら今は確かにもう少し逃げれば他の冒険者がいる街に戻ることは出来るが、すでに『血猿』たちはサティの放った矢に染み付いたサティの匂いや、逃げる際に残った匂いを嗅いでいる。


 今、全員で戻り、街で体勢を整えた所で『血猿』たちは匂いを辿って街の近くまで追いかけてくるだろう。最悪、体勢を整えている間に街に侵入し、住民を襲う可能性も考えられる。だから、リアには簡単には決断は出来なかった。


「師匠……どうする?」


 自身の問いにまったく返事をしないリアに不安を抱いているのかサクラは再度問いかけをする。その表情には初めて会った時と同じ表情をしていたが、1つだけ違った。それは瞳に宿る光が違った。初めて会った時は完全に死ぬという覚悟をした瞳をしていたが、今は師匠がいて、サティがいるこの状況にまったくとは言えないが自信があるという強さのある瞳をしていた。


「そうだね。とりあえずあんたら2人は街に逃げてギルドで他の冒険者に救援を求めてきな」


 予想外の返答にサクラとサティは自身の耳と目を疑った。その返答は見習いのサクラでもわかることだった。だから『血猿』にばれない程度の声量で声をあげた。


「そんな!それじゃあ師匠は……」


「あたしはあんたたちが戻ってくるまで街に近づかない様に囮をするさ。なぁに、あたしの能力ならそう簡単にはやられないさ」


「お、囮なら私がやる!今回の件は私の失態なんだ。だから、師匠はサクラと一緒にギルドに戻って!」


 リアの言葉にすかさずサティが声をあげた。確かに今回の件はサティの走り過ぎた結果だ。だが、リアもサクラもサティが囮なった所で結果はわかっていた。無論それは党の本人であるサティもわかってはいた。だが、自分の失態で師匠に囮をさせるわけには行かなかった。


「あたしのことを心配してくれるのは嬉しいけどそれは余計さ。それに例えあんたたちが囮になった所でまだ経験も浅い上に『血猿』の情報もそんなにないんだ。すぐに見つかって殺されるよ。それにさっきも言ったように囮ならあたしの能力が適任なんだよ」


 リアはそう言って不安な表情を浮かべる2人の頭に手を乗せ、笑みを浮かべた。


 —————リアの能力は『気配遮断』。それは自身と周りの人間に用いることの出来る能力であり、自身の姿を見られたことのない相手にだけ通用する。また、対象の近くで音を立てたり魔力を強めたりするなど気配を察知させる行動をすると即座にバレ、又同じ相手には効かなくなる。


「で、でも……」


「ほら、いつまでもここで駄々こねてないで早く行きな。あんたたちがいつまでもいるとあたしが本当にあんたたちの想像す現状になっちゃうよ!」


 リアはいつまでも行動しようとしない2人に向かって少々残酷な言葉を投げつけるや否や渋々だがサクラはリアの言葉を信じた。だが、サティは俄然駄々をこねるがサクラに無理やり襟首を掴まれ強引に連れていかれた。


「師匠……絶対に私たちが戻るまで無事でいてくださいね。絶対ですよ!」


「はいはい、分かってるさ。あたしもまだ死ぬつもりじゃないし、それに簡単に死ぬつもりはないよ」


 リアはそう返すとサクラたちが見えなくなるまで手を振り続けた。そして、見えなくなるや否や自身に能力を使い、近くの木の上に上り、姿を隠した。


「さぁて、まずはどこら辺まで近づいてきているか確認しないとね」


 リアは腰に身に付けているツールバックから1つの小瓶を取り出し、その液体を自身に振りかけた。それは自身の体臭を掻き消す匂い消しだった。振りかけ終えると弓を手に持ち、1本だけ矢を矢筒から抜き取るといつでも射てるように矢を番えた。


「東に1、2……4体、西に5体……そしてその間にボスっぽいのを囲むようにいるね。……ふぅ、流石にこれは一度でも外したら終わりだね」


 『血猿』の位置を確認するや否や音を立てずに素早く東に移動する。そしてボスから一番離れた位置で自分たちを探している1匹の『血猿』に狙いを定めるとすぐさま射った。なるべく音を立てず、他の『血猿』に気付かれない様に仕留めるリアの表情はサクラとサティの前では見せることのない真剣な表情だった。射った矢は寸分狂わず狙った『血猿』へと吸い込まれるように矢が刺さった。『血猿』は「グッ!?」という短く小さい呻きを上げて絶命した。


 一時は近くの『血猿』に気付かれるかとも思われたが、なんとかなった。リアは続けて残りの3匹を倒し切ると今度は西の方へと走った。しかし、流石に仲間がやられたことに気付いたのかボスである『血猿』はそれなりに距離を取っているリアの耳をも劈くほどの声量で叫び始めた。それに合わせるように他の『血猿』も声を上げた。そして、ある一定の方向へと向かって一斉に走り始めた。その方向とはリアの元であった。


 リアも最初はその行動に気付いていなかった。何故なら自身の能力を解いたわけでも、バレたわけでもなかったのだから。だからこそ、自身の位置がバレたのか疑問でならなかった。そしてその疑問を思考している間にいつの間にかリアは『血猿』に囲まれていた。


「ははッ……マジかい。これは流石に……」


 突然の出来事に頭の回らないリアの様子を見るなり、『血猿』たちは自分たちが圧倒的に有利な立ち位置にいることに不気味な笑みを浮かべており、口元からはだらしなく涎を垂らしていた。その時、リアの脳内にはこの状況をどう打開するか、そして2人の弟子の顔を思い浮かべていた。


—————そう、あの子たちが戻ってくるまでの間だけ耐えれば何とかなる。それまでは何としても耐えるんだ!そしてあの子たちとの約束を果たす!


 リアはサクラたちと約束した「絶対に死なない」という約束を守るため、手に持つ弓を投げ捨て、腰にいつも装備していた2本のダガーを思い切り引き抜いた。そして深く息を吸い込むと目の前に立つ『血猿』たちに向かって言葉を投げつけた。


「いや……あたしだって簡単に死ぬつもりはないさ。いいよ!かかってきな!この獣ども!」


 リアの言葉が合図かのようにリアを囲む群れの少し離れた所からボスらしき『血猿』ニヤリと笑みを浮かべると耳を劈く声量で再度叫んだ。それを合図にリアを取り囲む『血猿』たちはリアへと一斉に襲い掛かった。

次回更新は6/12です

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