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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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ほら、やっぱり、生きててよかった

 私は電車の中にいた。


 電車の座席は満席で、座れずにつり革を持って立っている人も少しいた。


「…」


 電車の前の方に目をやると黒板があり(幸せとは何でしょう?不幸とは何でしょう?)と白いチョークで書かれていて、皆はその議題を頭を抱えて悩んでいた。


「幸せとは、日々を、悩みながらでも…懸命に、生きる、こと」


 私は手を肩くらいまで小さく上げて、そして自信のない小さな声で言っていた。


「時には考えすぎたり、皆に流されたり、嘘を付いたり、反省したり、答えがわからずに迷ったり、自問自答を繰り返したり、それによってまた路頭に迷ったり…猫を撫でたり、散歩したり、ショッピングモールに買い物に行って…勝手に傷ついたり、人恋しくなって勝手に泣いたり、そしてまた、猫に話を聞いてもらったり…人と喋ったり、大きな声で笑ったり、小さな声で笑ったり…好きな人ができたり、胸が勝手に弾んだり、明日を楽しみにしたり、顔が勝手ににやけたり、それを抑えるために必要以上に真顔を装ったり、本音を話したり、話した後に忘れてしまうようなどうでもいい話をしたり、顔が赤くなっていないか心配したり、香水がきつすぎないか悩んだり、バカみたいに、必要以上に、考えすぎたり…」


 私の声はどんどん大きな声になっていた。


「…」


「一人は寂しくて虚しいもの、一人は寂しくて辛いもの、人は一人じゃ生きていけない。いくら強がっていても、一人がいいと言っていても、夜にはなんだか寂しくなって、泣きそうになって、不安に支配される。そして考える、考えて、また考える。バカみたいに同じところを何往復もして、同じような事をニュアンスを変えながらずっと考える。そうしてやっと答えを見つけて、その答えにしがみ付く。しがみ付いて心の支えにするけれど、心が不安定になると、その答えも合っていたのか不安になって、その答えが合っていたとしても、目に涙が溜まって、ポロポロと泣きそうになる。人間は弱い生き物で、人間はバカな生き物だ」


「…」


「そして、私も、バカな生き物だ。元気になっても、元気でいても、気がついたら勝手にまた不安になって…心がキュッと苦しくなって、胃が痛くなって、食欲がなくなって…勝手に一人で弱っていく…。考えても意味がないといくら思っても、また気がついたら考えてる。自分で自分の首を勝手に絞めて、苦しくなって離して、気が付いたらまた絞めてる…」


「…」


「幸せが何かを考えて…不幸が何かを考えて…当たり前に答えなんて出なくて…被害者ぶることしかできなくて、一人で勝手にヒロインを演じて……」


「…」


「幸せが何か、不幸が何かなんてわからない…何が幸せで、何が不幸かなんて、誰にだってきっとわからない…」


「…」


「でも…私は今、幸せだ」


「…」


「生きててよかったって思ってる」


「…」


「ニャーさんに出会えて、彼に会えて、メグちゃんに会えた。今まで、たくさんの人に出会えた。その人たちとは深い関係を築くことはできなかったけど、でも、それがあったからこそ、人に寄り添えるありがたさに気付けた。言葉の大切さに気付くことができた。当たり前だと思っていたことは、当たり前なんかじゃないって、気付くことができた。それが幸せだったんだって、気付くことができた」


「…」


「この世の中を天国にするのも地獄にするのも、結局は自分自身なんだって、自分の考え方なんだって、感じ方なんだって、捉え方なんだって…」


「…」


「すべてを当たり前に思わず、なんでもないことに幸せを感じて、いろんなことに感謝して、この世の中を、生きていることを、感謝しながら生きていこう」



 シャ!



「ん…」


 暖かい日差しが私達を包んだ。


 ガタンガタン


 私たちは電車の中にいる…。


 私が辺りを見渡すと、あなたは優しい笑顔で「ぁ、起きた」と言った。


 私はあなたを見て、心の底から安心した。


 そして、あなたの優しい目を見ながら


「私…あなたの事が、大好きです。よかったら、これからもずっと、私の側にいてください」


 と言っていた。


 言った瞬間、これはさっきの夢なのではないかと、頭が混乱した。それと同時に心臓の音が全身に大きく響いた。


 あなたは目を見開いて驚いていた。そして顔を真っ赤にさせた。口を半分開けて、目を素早く瞬きさせて、そして私の目を見て、大きく息を吸って、少しだけ震えた声で


「………はい…僕でよければ、いつでもあなたの側にいます。これからも一生、あなたの側にいたいです」


 と言ってくれた。


「ふふ、やった」


 ほら、やっぱり、生きててよかった




おわり




 今まで見てくださった方、少しでも読んでくださった方、心の支えになりました。本当にありがとうございました。

 そしてとても長くなってしまって大変申し訳ありません。

 心の内側を描くと、自然と文字数が増えてしまうという事に気付きました。ごめんなさい。

 また近くに、このお話の一年後のお話を書きたく思っているので(少なめに)、よかったらまた読んでみてください。

 今まで本当にありがとうございました。

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