表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
176/184

楽しくて仕方がない時間…この大切な時間をもっとあなたと過ごしたいと、心の底から思った

「ぁ、あの!公園ではなく、今度、いえ、明日でも、どこかデートに行きませんか?」


あなたの隣でニャーさんを撫でていたら、何の脈絡もなく、突然あなたにデートのお誘いをされた。私は驚いて目がまん丸になり、急に胸がドキドキして、頭が混乱して脳みその思考回路がショートして、頭と耳の穴と鼻の穴と口から煙が出そうになった。


 なんなの!こんなに突然なの?こんなに何の脈絡もないものなの?「ニャーさ~ん、メグちゃ~ん、か~わいい!」って言った20秒後くらいにこんな言葉出るものなの?なんなの?のんの?メンズのんの?スゴクビックリ!へん、しん…いや、変事、返事…言葉を返さなきゃ、早く!速く!こんな機械、いや、こんな機会、ないんだから!生きてて全然、滅多に、いや下手すりゃ今後一生ないんだから!やっとお誘いをされたんだから!私が勇気を出して言わなかったから言ってくれたんだから!勇気を出してこんな私を誘ってくれたんだから!


「ぁ、はい。いいですよ。喜んで」


 義家田!じゃなくて!よし言えた!


「ぬわ!」


「ぬわ?」


 ぬわって言われた!ショック…


「はっ…よかった…」


「ぇ」


「よかった…やった…なんだか突然言えた…でも、何の脈絡もなく突然、言ってしまった…」


「ぶふ!」


 私は吹き出していた。


「確かに、突然すぎて驚きましたけど、でも、なんでしょう、そういう言葉って、言うタイミング…って全然わからないですよね」


 私もここ最近、ずっとそうだったから…ものすごくわかってしまう。大事な言葉は、今よりもまた新しい所へと踏み出そうとする大事な言葉は、言葉に出すのに、本当に勇気が必要で…その言葉によって、全てが良い方向へと動き出すときもあれば、全てが悪い方向へと動き出すときもあるから…。


あなたとの今の関係を、この落ち着けて楽しくて仕方がないあなたとの関係を、私はここ最近、もう一歩、新たに踏み出したくて…あなたと、新たに踏み出したくて、仕方がなかった。でも、その言葉で、その言葉を聞いた時のあなたの反応で、全てわかるのがわかっていたから…私は、何度もあなたの困った顔を想像してしまって、大事な言葉を、喉の奥に隠してしまっていた。


「で、デ、デートに誘ってくれて、私、とても、ぅ、う、嬉しかったです」


 うわ!気持ち悪くなってしまった、噛みに噛んでしまった。嬉しかったとあなたに優しく伝えたかったのに、大事な言葉というのは、いつものどうでもいい話のようにスッと声に乗ってくれない。


「…」


「……」


 私はニャーさんだけを一点に見ながら、赤い顔して無心で撫でる。


「ど、ど、どこ行きますか?」


 あなたのどことなく焦った声が聞こえてくる。


「え、え、映画とかはどうでしょう?」


 私のどことなく焦った声も聞こえてくる。


「映画ですか!い、い、良いですね」


「ですよね!な、な、なにか見たいものありますか?」


 あなたは斜め前にいるメグちゃんを無心で見た。


「……ぁ、あっ、あったような……」


「なかったような?」


「…はぃ」


「なにやってるか、わからなかったような?」


「はぃ…」


「ぶふ!」


「ははは…情けない」


「いえいえ、実は私もです。私も今、どんな映画やってるのか知りません」


「ずるい…僕だけかっこ悪い感じになった」


 楽しくて仕方がない時間…この大切な時間をもっとあなたと過ごしたいと、心の底から思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ