言葉を発して言葉が帰ってくる、その当たり前を僕たちは心の底から幸せに思い、そして感謝した。
彼女に会ってから2週間が経った。
僕らは毎日あの公園で会っている。
「お昼の十二時にこの公園でお会いしましょう!」
その言葉を言えたおかげで僕らは毎日会えている。
その言葉を言えたのも実はメグとクロのおかげである…彼女に抱かれているメグのギロリという視線と、目の前にいるクロの無言の圧力、それとともに発せられた「ぉ、ぉ、ぉお、お昼…」であった事は彼女には内緒だ。絶対に。
僕らは毎日いろんなことを話した。話した内容は、話した後には忘れてしまっているようなどうでもいい話ばかりで、帰った後には今日話したことをあんまり覚えていなくて、それでも楽しくて、楽しくて楽しくてしょうがなかった。
彼女は口元を抑えて小さな声で笑い、僕はヌワッハハハと仁王立ちで男らしく笑った。
「…」
僕らは、やっと、会話ができた。
あなたの言葉に、僕が言葉を返す。
そしてそれをあなたが聞いてくれて、また言葉を返してくれる。
それができることを、心の底から幸せに思った。
「…」
この世の当たり前は、僕にとっては、いや、僕たちにとっては、当たり前ではなかったから。
言葉を発して言葉が帰ってくる、その当たり前を僕たちは心の底から幸せに思い、そして感謝した。