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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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私はそのたびに幸せを感じた

「こんにちは」


「こんにちは」


 彼と会ってもう一週間が過ぎた。


「お昼の十二時にこの公園で…会いましょう」


 あなたが緊張しながら言ってくれたその言葉のおかげで、私たちは毎日、お昼の12時にこの公園であなたと、そして猫ちゃんたちと会うようになり、話すようになった。


「今日も寒いですね」


「ふふ、そうですね」


 私達は毎日話した。今日の気温のことや、ニュースであったこと、好きなことの話や特にオチのないつまらない話、他の人たちが当たり前のようにしているような会話を私たちは毎日した。私たちはお昼の12時から、日が沈んで辺りが暗くなって優しいオレンジ色の蛍光灯が点くまでずっと話していた。話した内容は話した直後には忘れてしまっているようなどうでもいい話ばかり…それでも私は楽しかった。楽しくて楽しくてしょうがなかった。私たちはずっと笑っていた。あなたはハハハと大きな声で、私は口元を隠して大きな声で笑っていた。あんなに静かだったあの公園が私たちの笑い声で少し騒がしい公園になってしまった。


 私はあなたと話しながらニャーさんとメグちゃんを交互に撫で、ときにはおもちゃで遊び、猫缶をあげた。猫のカリカリのご飯も買ってきてあげた。いなばチャオちゅ~るもあげた。CMのように凄い形相で取り合っていた。おやつはとにかくいっぱいあげた。そしたら家で普通のご飯を食べなくなったと苦情が入った。私はそんなことより二人ともかわいい、と思った。


「…」


 日常はささいな変化でこんなにも楽しくなるんだと思った。モノクロのように感じていた景色が風景が、楽しく綺麗な色に彩っていく。家に帰ると明日が来るのを心待ちにしている自分がいることに気付く。明日が楽しみでしょうがない。明日も楽しみでしょうがない。足と心が少しだけ宙に浮いているような、そんな気持ちになる。


「ふふ」


 私はそのたびに幸せを感じた。


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