どうしてそう死にたいとか、死んでとか、人間ってそう軽々しく言うの?
夜中の3時、僕は天井を見上げていた。
「幸せが何かわかったから…」
僕は彼女にそう言った。
「夢の中でだけど…」
幸せがわかった?
僕が?
本当に?
「…」
幸せ?
「…幸せとは何ですか?見つけにくいものですか?カバンの中も、机の中も、捜したけれど見つからないのに…」
探し物か…
「幸せ…」
小さな幸せも負けないくらいたくさんある…
僕が猫の時に彼女に言った言葉だ…
「幸せ……」
僕は人間に戻って、見つけた幸せがまた、わからなくなった…。
昨日、彼女を見つけた。
見つけて、話して、幸せに思った。
大きな不安が消えて、幸せを感じた。
彼女が生きててよかった、話せてよかった、抱きしめたときは世界で一番幸せだった。
「そして…幸せと同時にまた、新しい不安を覚えた」
明日、あなたは、来てくれるだろうか?
来なかったらどうしよう?
来てくれなかったらどうする…
そしたらまた…
「死にたくなるのかな…」
「ねえ、さっきからぶつぶつうるさい」
「メグ…」
「死にたいのなら死ねば…私は止めない」
「ぇぃや、そぉぃぅわけじゃ…」
「ねえ!じゃあ!どうしてそういうこと言うの!」
「…」
「ぇ、ぁ、なんでって…」
「意味わからない!どうしてそう死にたいとか、死んでとか、人間ってそう軽々しく言うの?」
そう言いながらメグは僕の足を本気で引っ掻いた。
「…っ」
「痛いでしょ?あんたなんかもっと引っ掻いてやるわ!」
「痛いよ…」
「死ぬのはもっと痛いの!痛くて痛くてしょうがないの!苦しくて苦しくてしょうがないの!」
「…」
「…」
「死にたいなんて考えるバカな人間以外の皆は生きていたくてしょうがないの!この世に…この世に、まだ、未練があってしょうがないの!生きていたくてしょうがないの!どうして?どうしてまだ、死にたいなんて言うの?せっかく彼女に会えたのに、まだ不安があるの?まだ不満があるの?なんなの?どうしてそんなバカなことが考えられることが幸せだって思えないの?」
「ごめん…」
「他の生き物に食べられるかもしれない、仲間と喧嘩して殺されるかもしれない、今日の食べ物、明日の食べ物があるかなんてわからない…自動車に轢かれて死ぬかもしれない」
「…」
「…」
「死ぬことが…(死)が身近にないからそんなことを考える、死にたいなんて考える!私の飼い主もそう!毎日死にたいと嘆いてる。あの公園の彼女も…死ぬことを望んでる」
「…」
「…」
「どうして?なんで?意味わからない!じゃああなたたち変わりなさいよ!猫の私と変わりなさいよ!猫の卑劣で、無残で傲慢な縄張り争いに加わりなさいよ!食べるものを毎日歩いて見つけなさいよ。見つけたらその生き物を殺して食べなさいよ。その殺した奴の子供が目の前にいても普通の顔して食べなさいよ。子供を産んで子供を守りなさいよ。そして…自分よりも強いものに子供を食べられなさい!」
「…」
「…」
「そうしてやっと言いなさいよ!死にたいって!この世は地獄だって!死にたくて死にたくてしょうがないって!」
「…」
「…」
「僕は不幸だ?私は不幸だ?ああそうでしょうね!不幸でしょうね!そんなバカな考え方してるあんたたちは死んでも不幸よ!いつまでたっても変わらない!」
「ごめんメグ…」
「…」
「謝ったって許さないわよ!何回引っ掻いたって許さないわよ!不安なんていう小さな敵に、どうしてあなた達大きな人間が負けるの?他の生き物たちはそんな弱い小さな敵に負けたりなんてしない!どうして生きてることに、死が身近にないことに、自由であることに幸せを感じないの?毎年歳を重ねることをどうしてもっと喜べないの?」
「…」
「…」
「彼女が明日来ないかもしれない…」
「!」
「…」
「そう思ったら死にたくなった」
「ぇ、なんで?」
「わかるわよ!バカで愚かな人間が考えることはだいたい予想がつく!彼女が来ないわけないじゃない!少し考えればわからない?もし来なかったら、体調が悪くて起きることができないとか、ちゃんと重要な理由があるはずよ」
「ぁ…」
「どうしてそんなこともわからないの!あの感じであなたが嫌われてるはずがないの!彼女は急に来なくなるような人じゃないの!優しい人間なの!」
「ぅん…」
「…ねえクロ…」
「!」
「なに?」
「あなたは猫の時…きちんと幸せをわかっていたわ。そしてあなたは幸せだった」
「…うん」
「私と話して、あの時を思い出したなら…彼女を見つけて、そして彼女をつけて、彼女を思い出したなら、それがなんだったかわかるはずよ」
「うん」
「喋り過ぎて疲れたわ…まだ深夜よ…あんたも、さっさと寝なさい」
「うん、ありがとう。ありがとう。本当にありがとう。メグ」
「明日も彼女に会うんだから」
〇
「こんにちは」
「こんにちは、ごめんなさいお待たせさせちゃいました?」