ふフフフフフフ…ははははははは…ははははははは、ひゅ~ひゅ~…ひゆ~
その日私は夢を見た。
「ぁ、あ、あれで大丈夫かな?ぁ、あ、明日も来てくれるかな?」
彼が部屋でベッドに座りながら力なく言っている。
「さあ、どうかしらね~」
灰色の綺麗な猫ちゃんがベッドの下で座りながら、いたずらな笑みを浮かべながら楽しそうに言っている。
「さあ、どうだろうな~」
ニャーさんがその猫ちゃんの隣で、いたずらな笑みを浮かべながら楽しそうに言っている。
「ね~」
「ね~」
彼があからさまに少し引いている。
「…ぇ、クロ…」
「ぁ、間違えた…」
ニャーさんは一匹ワタワタし、布団を見つけ小走りで布団の中へ入っていった。
「クロ…」
「クロ…」
「…」
「あんなバカみたぃ…あんなにテンションの高いクロ、初めて見たよ」
「そりゃあそうよ!テンションが上がってクロがバカみたいになるのも当然よ」
「…」
「だって!私たちの計画が成功したんだもん!あなたは彼女と知り合いになれたし、彼女も少し元気になってた。クロを彼女に会わせることもできたし、その際疑われることもなかった」
「うん、確かに」
「あなたがへんてこなことを言っても、彼女は疑わなかった」
「うん…確かに…」
「それはあなたが一生懸命、熱意を持って言ったからだと私は思うわ。その一生懸命さ、熱意が伝わって彼女はあなたの言葉に真剣に耳を傾けたんだわ」
「うん、ありがとう」
「まあ、フリートークは聞くに堪えなかったけどな」
布団の中から声がする。
「あれは論外よ、気持ち悪い。初対面で急に自分は孤独なんです…なんて言う奴この世にあなたしかいないわよ」
「ぃや、ぁ…れは、さ、僕は彼女の境遇をさぁ、知ってたからさぁ…」
「…」
「……」
「………ほんとにね…彼女の心が…広くなかったら…いや、彼女じゃなければ、僕は確実に拒絶されていたと思う」
「思うじゃなくて拒絶されていた、よ…」
「確実にな」
「いやでもさ…そんなこともさ…」
「その場で拒絶されて全力疾走で逃げられてた、かも」
「俺はあの時、お前が狂ってしまったのかと思ったよ」
「…な…なんで…そ、そんなこと…」
「いえ、あれは狂っていたわ。だって普通だったら言わないもの」
「そうか、じゃあ、正しく言いなおそう。お前は狂っていたよ」
「ぁあぅ、っも、っもう、もうも~」
彼は奇声を発しながらガバッと勢いよく立ち上がり、台所に向かった。
「な、なに?」
「な、なんだ?」
彼はニャーさん達にあからさまに引かれていた。そして何かを両手に高く持って、スタンスタンと陽気なステップを踏みながら帰ってきた。
「な、なによ?」
「な、なんなんだ、本当に狂ったか?」
彼はその何かを、すぅっとニャーさん達の前に置く。
「ね、猫缶だわ!」
「ね、猫缶だ!」
それと同時にニャーさんがすごい勢いで布団の中から出てきた。ニャーさん達が目を輝かす。
「あげます…」
彼は目を大きく開けて、怪しげな笑みを浮かべて言った。
「やった!」
「やった!やった!」
「………」
彼は二匹を見たまま微動だにしない。
「早く開けてよ!」
「早く開けてくれ!」
「……」
彼は口角を上げて(にちゃぁぁぁ)と笑い
「開けません」
と言った。
「あげるけど、あけません」
そう言って彼は小走りでトイレに逃げ込んだ。逃げ込んだトイレでヘタクソな口笛を吹いている。
「ふフフフフフフ…ははははははは…ははははははは、ひゅ~ひゅ~…ひゆ~」
「…」
こんなに騒がしく、くだらない夢を久しぶりに見ました。