表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
167/184

ふフフフフフフ…ははははははは…ははははははは、ひゅ~ひゅ~…ひゆ~

 その日私は夢を見た。


「ぁ、あ、あれで大丈夫かな?ぁ、あ、明日も来てくれるかな?」


 彼が部屋でベッドに座りながら力なく言っている。


「さあ、どうかしらね~」


 灰色の綺麗な猫ちゃんがベッドの下で座りながら、いたずらな笑みを浮かべながら楽しそうに言っている。


「さあ、どうだろうな~」


 ニャーさんがその猫ちゃんの隣で、いたずらな笑みを浮かべながら楽しそうに言っている。


「ね~」


「ね~」


 彼があからさまに少し引いている。


「…ぇ、クロ…」


「ぁ、間違えた…」


 ニャーさんは一匹ワタワタし、布団を見つけ小走りで布団の中へ入っていった。


「クロ…」


「クロ…」


「…」


「あんなバカみたぃ…あんなにテンションの高いクロ、初めて見たよ」


「そりゃあそうよ!テンションが上がってクロがバカみたいになるのも当然よ」


「…」


「だって!私たちの計画が成功したんだもん!あなたは彼女と知り合いになれたし、彼女も少し元気になってた。クロを彼女に会わせることもできたし、その際疑われることもなかった」


「うん、確かに」


「あなたがへんてこなことを言っても、彼女は疑わなかった」


「うん…確かに…」


「それはあなたが一生懸命、熱意を持って言ったからだと私は思うわ。その一生懸命さ、熱意が伝わって彼女はあなたの言葉に真剣に耳を傾けたんだわ」


「うん、ありがとう」


「まあ、フリートークは聞くに堪えなかったけどな」


 布団の中から声がする。


「あれは論外よ、気持ち悪い。初対面で急に自分は孤独なんです…なんて言う奴この世にあなたしかいないわよ」


「ぃや、ぁ…れは、さ、僕は彼女の境遇をさぁ、知ってたからさぁ…」


「…」


「……」


「………ほんとにね…彼女の心が…広くなかったら…いや、彼女じゃなければ、僕は確実に拒絶されていたと思う」


「思うじゃなくて拒絶されていた、よ…」


「確実にな」


「いやでもさ…そんなこともさ…」


「その場で拒絶されて全力疾走で逃げられてた、かも」


「俺はあの時、お前が狂ってしまったのかと思ったよ」


「…な…なんで…そ、そんなこと…」


「いえ、あれは狂っていたわ。だって普通だったら言わないもの」


「そうか、じゃあ、正しく言いなおそう。お前は狂っていたよ」


「ぁあぅ、っも、っもう、もうも~」


 彼は奇声を発しながらガバッと勢いよく立ち上がり、台所に向かった。


「な、なに?」


「な、なんだ?」


 彼はニャーさん達にあからさまに引かれていた。そして何かを両手に高く持って、スタンスタンと陽気なステップを踏みながら帰ってきた。


「な、なによ?」


「な、なんなんだ、本当に狂ったか?」


 彼はその何かを、すぅっとニャーさん達の前に置く。


「ね、猫缶だわ!」


「ね、猫缶だ!」


 それと同時にニャーさんがすごい勢いで布団の中から出てきた。ニャーさん達が目を輝かす。


「あげます…」


 彼は目を大きく開けて、怪しげな笑みを浮かべて言った。


「やった!」


「やった!やった!」


「………」


 彼は二匹を見たまま微動だにしない。


「早く開けてよ!」


「早く開けてくれ!」


「……」


 彼は口角を上げて(にちゃぁぁぁ)と笑い


「開けません」


 と言った。


「あげるけど、あけません」


 そう言って彼は小走りでトイレに逃げ込んだ。逃げ込んだトイレでヘタクソな口笛を吹いている。


「ふフフフフフフ…ははははははは…ははははははは、ひゅ~ひゅ~…ひゆ~」


「…」


 こんなに騒がしく、くだらない夢を久しぶりに見ました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ