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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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一人でなんでも抱え込まずに、あなたの言葉で話しなさい!

 僕はまずは母さんに連絡しなければと思い電話を掛けた。そしたらすぐにすごい勢いで母さんが電話に出た。母さんは僕の声を聞いただけで、声が震え、異様に鼻をすすっていた。そして少し間があって「よかった…」と心の底から言葉に出した。


「あなたが死んでなくてよかった…また、声が聞けて良かった…あなたとまた話せてよかった。あなたが生きているなら伝えられる。あなたは私たちの宝物だと、愛してると、掛け替えのない大切な大切な宝物だと…」


「…ごめん…」


 僕はうつむくことしかできなかった。そして母さんは大きく息を吸った。


「これでやっと怒れる」


「ぇ…?」


「どれだけ心配したか、どれほど胃を痛めたか、なんでメールを返さなかったのか、電話を折り返さなかったのか、どうして電話の電源を切りだしたのか、あなたは今まで何をしてたのか………ねぇ…私たちでは頼りにならない?あなたが傷付いたならいつだって話を聞く。夢を諦めたのならまた帰ってくればいい。帰ってゆっくり休んで、また夢を追えばいい。夢を追うのが若いうちである必要は、もしかしたら皆が思っているよりもないんじゃないかな。年を取ってからでも出会う役はあるんじゃないかな。あなたがすごく努力してたのは知ってる。努力は絶対にあなたを裏切らない。裏切るのは、あなたの努力も見ない、人の先っぽのところしか見ようとしない人間の方だ。だから…あなたは傷付かなくていい、そんな人間に認められないからといって傷付かなくていい…一人でそれを抱え込まなくていい…人に話しても何も変わらないなんて思っちゃいけない。人に話すだけで軽くなることもある、何かが吹っ切れることもある。人に、誰かに頼りなさい。何かにつまずいたら、また壁にぶち当たったら、苦しいと思ったら誰かに話しなさい。人に話したからって、大きな壁は乗り越えられないかもしれない。でも、話すことによって壁の大きさが把握できることもある。どれくらいの大きさで、その壁は登れるのか、やっぱり無理なのか、それとも頑張れば超えていけそうなのか、一人では怖くて見れなかった壁の全容が見えるときもある。何かにつまずいて立てないなら、手を差し伸べる!あなたが苦しいなら傍にいる!あなたにはどうして口があるの?何かを伝えるためでしょ?だったら伝えなさい!どんなつまらない事だっていい、どんな悩みだっていい!一人でなんでも抱え込まずに、あなたの言葉で話しなさい!」


 僕は今、きっと真っ赤な顔をしている。そして異様に鼻をすすっている。息を大きく吸うけど、吸う息が震えてるのがわかる。だとしたら、僕が声を発したらその声は震えちゃうなと、僕はよくわからない心配をした。


「ごめん…っ…ごめんなさい…ごめんなさい…」


 案の定声は震えていた、それが少し恥ずかしかった。でも、こんなにも頼れる家族を持ちながら、一人で全てを抱え込んでいた自分自身を凄く傲慢でとても、とても恥ずかしいと思った。


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