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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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誰も来ない公園で、ひとり寂しく、きみを待っている

 その後、猫が教えてくれた。


 僕とこの黒猫が入れ替わっていたこと、その間に僕が何をしていたかわからないこと。猫は僕の身体に入って一度も起きることなく寝続けていたこと。それなのに衰弱もせずに健康のまま寝続けられたこと。


 僕は猫の言ってることが冗談にしか聞こえなかった。僕は眉間にしわを寄せながら話を聞いていた。


だって意味が分からないから。冗談にしか聞こえなくて、嘘にしか聞こえなくて、頭が混乱して、それどころではなくなって、話が両方の耳から出て行ってしまう…。


「今の日付とやらを見てみろ。人間の時間というやつは数値化されていると聞いたことがある」


「え?」


「昨日はなんだった?」


「ぇ…ぁ、ぇと、ちょっと待って…ごめん、思い出せない…」


「今日が何か見てみろ」


 僕はスマホを手に取り、画面下のボタンを押す。


「え?二月…?え?そんな、違うよ、昨日は、二月じゃない…昨日はどう考えても二月じゃないよ…」


「俺たちはかなりの時間入れ替わっていたということだ」


 僕たちはどうやら相当な期間、入れ替わっていたらしい。


「……………………」


 ここで僕はもう考える、疑うという事を拒否した。だって疑ったらきりがないし、話が前に進まない。これはテレビの素人に仕掛けた悪ふざけのドッキリでしたとか、これは現実ではなくて夢だとか、頭の中に無限に出てくるけど、その度集中力が散漫になってよくわからなくなる。これがもし夢であっても、悪ふざけのドッキリであっても、今は今あること、起こっていることを全て信じて向き合わなければいけないと思った。


「もういい、わかった」


「ん?」


「僕は、全てを信じよう」


「信じてなかったのかよ…」


「ごめん!」


 黒猫は少しムスッとした。


           〇


 クロはこの公園に突然来なくなった。


「…」


 そして…彼女だけが毎日この公園に来るようになった。


 朝から晩まで…


 力なくベンチに座って、涙で真っ赤に腫らした目をさらにこすりながら、クロ…あなたを待っている。


            〇


 きみがいなくなって、もう一カ月が経った。


 私は毎日この公園に来て、力なくきみを待っている。


 今日は来てくれるかな?


 きみは今どこにいるんだろう?


 死んじゃったりしてないよね?大丈夫だよね?


 そんなことを思いながら、今日も私は待っている。誰も来ない公園で、ひとり寂しく、きみを待っている。


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