痛っ!この野郎!!
「おい…その足をどけろ」
どうやら黒猫は怒っているようだ。
「あ、ごめん」
「…」
「……」
ん?この猫、今、喋らなかった?
「ぇ…」
っていうか、なんでここに猫がいるの?
え?なんだ?よく…わからない。よくわからないことが、一瞬にして、たくさん、起こった…起こっている。そして、僕は今、頭が混乱している。
プツン
僕はとりあえずテレビを消した。そして猫を見つめる。
「君は誰?」
「…」
「喋れるの?」
「……」
僕は猫の目を見て喋っているが猫は顔を逸らして答えてくれない。
ムニィ
僕は猫の尻尾を右手で握った。
「痛っ!この野郎!!」
僕は右手を負傷した。そしてそれと同時にこの猫が喋れることも分かった。
「っ…結構痛い」
僕はさらに混乱し涙目になった。
「わからない…なにがなんだかわからない…この現状がなんなのかわからない…どうすればいいのかわからない…」
僕は現実逃避をしようとまたベッドに横になる。
「…」
シュタ!
「!」
すると猫が僕のベッドに突然乗ってきた。そして僕の顔をジッと見て
「わかった、お前だったんだな…俺と入れ替わっていた奴は」
と僕を頭からつま先までなめるように見ながら言った。
「そしてどうやら、お前は記憶がないようだ…」
「き、君はいったい…」
「めんどくせえ!ふざけんなよ!神この野郎!」
猫は突然天井を見ながら怒りだした。僕はそんな黒猫を困惑しながら見ていることしかできなかった。
「死にたいと願ったらなぜか人間と体を交換させられ、じゃあこの体で何も食べず衰弱して死のうとずっと眠っていたら、なぜか死ねず、衰弱もせず、意味もなく眠ったままただ生かされ、かと思ったら元に戻り、むこうは記憶を失くし、なぜか俺には記憶がある…」
この猫…何を言っているんだ。
「なにがしてえんだよ!神!おい!この野郎!」
この猫…何をこんなに怒っているんだ。
「…」
僕はとりあえず、この猫に怒りに任せられて頭からつま先までをギッタンギッタンに引っかかれたらたまらんと起き上がり、その場で正座をした。
「それで、えー、それで…な、なんだろう…き、君は一体なにに怒っているのかな?」
僕はとりあえず、優しく言った。そしたら物凄くぎろりと睨まれ、そしてなんだか複雑そうな顔をされた。
「いや、お前に、んー、お前に怒ることじゃない…ま、まず、まずだな…えーとだな、俺は別にお前には怒っていないんだ…」
「あ、あ、ありがとう」
そうなんだ。なんだか素直に嬉しかった。僕は素直に猫に怒られないことに安堵した。
「神、とか…よくわからないもの。よくわからないものがよくわからないことをしやがったんだ。俺はそれに怒ってるんだ」
「そ、そうなんだ…それで、そのよくわからないことって、一体なんなの?」
すると猫が僕の目を見て、息を深く吸い込んだ。
「俺たちは、体が入れ替わっていたんだ」
「え?」