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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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どうしてぼくはここにいる

 あなたが苦しんでいても、何もすることができなくて…


 あなたが泣いていても、何もすることができなくて…


 あなたが死にたいと、消えたいと泣きながら言っていても、ぼくはただ、見ていることしかできなくて…


「だったらぼくは、なんでここにいるんだ。なんで猫になったんだ。あなたを助けられないのなら、あなたの暗い本音を断ち切ることもできないのなら、(そんなことないよ)とも(生きてほしい)とも言ってあげられないのなら、あなたに想いが伝わらないのならば、どうしてぼくはここにいるんだ。どうして猫になったんだ!こんなに、こんなにも無力なら、こんなにも、こんなにも悔しいのなら、どうしてぼくは猫になんてなったんだ。こんなにも、こんなにも自分を憎く思ったことはない。伝えられないという不幸をここまで憎んだことはない!」


「でも、(大人になったらきっと、死にたくなくなる)(生きててよかったって思える日がきっと来る)っていう言葉が頭をよぎって、私はいつも死ぬのをためらっていた…でも…でもさぁ…」


「ぼくはあなたに生きててほしい!消えないでほしい!死なないでほしい!生きててほしい!元気に元気に!嫌なことなく生きててほしい!ぼくは!あなたに生きててほしい!」


 ぼくは、ぼくの今の気持ちを、全力であなたに言った。あなたに届くように、あなたの目を見て、ぼくの全ての想いを込めて言った。


「そんな日、全然来ないじゃん…」


 つぅ…


 その言葉を聞いて、ぼくは怒りと悲しみでぐちゃぐちゃになって、わけが分からなくなって、どうしてか涙が零れ落ちた。そしてそれが溢れて止まらなくなった。


「死にたくて、死にたくて死にたくて、どこを見ても希望が見えなくて、きっと私、もうアルバイトもできなくて、こんな状態親にも言えなくて…どんどん貯金がなくなっていく。貯金が私の寿命に見える。0円になったら私、そのまま、何もできないまま、死んじゃうんじゃないかって思う」


 どうすればいいんだ…


 どうすれば…あなたに想いを伝えられる


「希望が見つからないなら…」

 

 まあだから!簡単に言っちゃうとね!大人になって、ダメって言われてたことが、もう大人だし大丈夫だよってなると、全てのことがこんなもんかって、あっけなく思っちゃうの。パンパンに膨らませていた夢や妄想や希望も、4年か5年でだいたい全部食べ切っちゃうの。ああこんなもんか…ってなって、大人ってこんなもんなんだって、急に現実の世界に連れ戻されるの…


ぇ…


 急にぼくの頭の中に前の、あなたとの記憶が蘇った。


「また見つければいい!」


缶詰を食べ終わっちゃったら、その後の何十年は、どうすればいいの…


「夢や希望を全て食べてしまったら、その缶詰を食べてしまったのなら…また、新しいものを食べればいい。また、新しい缶詰を見つけて、食べればいい…」

 

 ぼくはあの時、あなたにこれを伝えるために、なにかをした…うまく伝えることはできなかったけど…勘違いされて怒らせてしまったけど、必死で何かをした…。


「ぁ…」


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