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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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もういいじゃん死んじゃえば

 きみの名前はニャーさん。


 全身真っ黒でエメラルドグリーンの目をした、かっこよさとかわいさを併せ持った、無敵な猫。


 公園の外では少しツンとしてるけど、公園の中では甘え上手のツンデレさん。


 おにぎりもパンも大好きだけど、猫缶も大好き。人間のものをあまりあげてはいけないって、テレビや本で言ってた気がするから猫缶に変えたら、少しふてくされた様な表情をしながら食べ始めて、ぺろぺろ、から、ガツガツに変わり、ペロリと綺麗に食べて、ゲフ!と言いながら可愛く私を見上げていた。


 頭を撫でられるのが大好きで、顎も大好き、尻尾の前のお尻のような場所を撫でると天にも昇りそうな顔をして、お腹を撫でると少し目を大きくさせてビックリしている。お腹はきっと少し嫌い。そしていつの間にか、目をトロンと閉じながらゴロゴロと可愛く鳴いている。


 かっこつけたいのに、うまくかっこよく決めることができない、かわいさに溢れた男の子。


「……………………」


 そんなきみは今どこにいるんだろう…。


 きみのいろんなことを知っているのに、肝心なことがわからない…きみが、きみが生きていたら、ここに、この公園に、帰ってきてくれるだろうか…。この、何もない私に会いに来てくれるだろうか…。


「こんな空っぽな自分に…」


 この先私は、きみなしで生きていけるだろうか?


「…」


 あぁ…どうしよう、無理な気しかしない。


 きみがいない世界なんて、この地球なんて、誰ともつながっていない私には、ただただ意味のないものだ…。


 あぁ、どうしよう…絶望しか見えない。


 頭が痛くなってきた、胃がむかむかしてきた、きみがいないと思うと頭が焦って大変なことになる。狭かった視野がもっと狭くなる。


 きみがいない世界なんて考えられない…


「どうしよ…」


 きみがいなかったら私、どうやって生きていけばいいの?誰と話せばいいの?誰に救われればいいの?


「…」


 もういいじゃん死んじゃえば


「…ぇ」


 不意に頭にこんな言葉が出てきた。


もう、わたしにはなにもなくなった。にゃーさんもいなくなった。もう、いまのわたしには、しごとも、ともだちもいない。おやにたよればたすけてくれるのに、なにをいじになっているのか、しごとをやめたともいわずに、れんらくすることをきょひしている。そんなんだからだれにもすかれない、だれもよってこない、だれにもあいてにされない、そしてもうだれもわたしをおぼえていない。もうわたしにはなにもない。もう…いいきかいじゃん、わたし…しんじゃえば?もう、にゃーさんもいないんだし、もう、いきてるいみないじゃん…もう、もういいよ、もういいよ、つかれたよ、つかれた…いきてることに、こどくなことに、さみしいことに、つらいことに…なくことに、だれにもてをさしのべられないことに、すくわれないことに、だれもいないのに、だれかにたすけをもとめているじぶんに…もう、もういやけがさした。つかれた、もう、もういいじゃん…もういいじゃん死んじゃえば


「…」


 そうだよ…


「もぅ、ワタシなんて、しんじゃえばいいんだよ、しんじゃえば」


 生きる理由がなくなった。


「…」


 わたしは顔を覆い隠していた手を力なく下に下ろし、ただただ下を見つめる。また私の下だけ雨が降ったようになっていた。灰色の砂をただただ見つめる。


「……ぇ」


 私の視界に何かが映る。地面に何か書いてある、私は瞬時にそれを目で追う。


           い


           き


           て


「ぁ…ぁぁ、ぅ、っ、ぁあ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 大きな大きな声で私は泣いた。


 これは…きみが、私の話を聞いて、私に何かをうったえようとして書いた字だ。死にたいと言っていた私に、一生懸命書いてくれた字だ。泣きながら、声をからしながら、書いてくれた字だ。


 ニャーさんは私に、「生きて」と言ってくれていたんだ。そして伝わらないからと、砂に書いてくれたんだ…。


 私はまた、砂にかかれたその文字を見る。


             い


             き


             て


 きみがどうして、文字が書けるのかわからない。でも、きみが、生きてというのなら私…


「生きなきゃ…」


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