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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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私はきみに救われていたから…なにもない私に、きみは優しく寄り添ってくれていたから…

 昨日は本当に不思議な夜だった。


 きみを包む謎の光、きみを連れていこうとする竜巻のような強い風。力なく倒れているきみを…私は抱きしめることしかできなくて、涙を流すことしかできなくて…そして意識を失って、気付いたら朝、私は部屋のベットにいた。


 いくらでも、夢であったと終わらすことができるような場面が山のようにある。でも、絶対に違うという確信が自分の中である。昨日の出来事は絶対に夢なんかじゃない。あれは実際にあったことだ。


「…」


 でも、そう思うと、目を逸らしたくなる現実が頭に降ってくる。


 きみはどこに連れていかれたんだろう…


 きみはまだ…生きているのだろうか


 もう、きみと、会うことはできないんだろうか


「…っぅ」


 そう思うだけで、泣いてくちゃくちゃな顔が、更にくちゃくちゃになる。


「……はぁ」


 もう立っているのもつらくなってきた。でも、座りたくもなかった。座ったら、私はもう、立てないんじゃないか、という言葉が頭をよぎる。私はベンチに座ったらそのままもう、立てないんじゃないか、燃え尽きてしまうんじゃないか、灰になってしまうんじゃないか…だってもうすでに、全身に力が入らない。立っているのもやっとだが、これで座ったら…


「もぅ…」


 そう思いながらも、私はベンチへ歩いていく。心は色々めんどくさいが、体は正直だ。「いつまで立っているのよもう!」とずさずさと力なく歩いていく。


「…」


 ベンチに座って、両手で顔を覆ってまた泣く。まだ涙が出るのかと、自分の中の水分は大丈夫なのかと心配になるくらい、私は泣いている。


 悲しくて、カナシクテ、かなしくて…どうにかなってしまいそうだった。私はきみに救われていたから…なにもない私に、きみは優しく寄り添ってくれていたから…私のつまらない話を聞いてくれて、私の膝に乗ってくれて、私に甘えてくれた。それがどれほど嬉しかったか、私の心をどれだけ癒してくれたか、どれだけ救われていたか、支えになっていたか…たぶん、いや絶対に、きみは知らないんだろうな。


 部屋にいると気分が途方もなく真っ暗になって、今の自分に憤りを感じて、見えない未来に恐怖して、先の見えない自分に、何もできない自分に、何もしない自分に、言い訳ばかりをしていたら、本当に何もすることができなくなってしまった馬鹿な自分に、絶望して、絶望して絶望して、生きていたくなくなってしまう…。


 でも公園に行くと、いつもきみがいてくれて、こんな私に甘えてくれて、こんな私に寄り添ってくれて話を聞いてくれて、こんな私の顔を、目を、ジッとかわいく見てくれた。


私はいつしか、ここで、きみの前だけで笑い、そしてきみにしか喋らなくなった。


この何億と人がいる世界で私は、きみ以外の繋がりがなくなってしまっていた。


私の世界はいつの間にか、私と一匹のニャーさんだけになっていた。


「でも…きみがいるならそれでいいって、思ってたんだよ」


 それなのにきみは…


「…」


 どうしよう…きみが心配で仕方がない。


 きみを思い出すたびに胸がキュッと痛んで苦しくなる。


 きみの最後の姿が心配で、本当に死んでいないか、きみが生きているのかと気がおかしくなる。


 きみがどこにいるのか、きみを永遠に探したくなる。


「…」


 でも…見当もつかない。


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