ここで、ぐっすりと、眠っていてくれれば…そして、目を大きく開けて、驚いてくれれば…
ついに公園に到着した。
公園は嫌というほど静かで、私の吐く息の音しか耳に入ってこない。
「…」
辺りを見渡しても、きみはいない。
さっきから嫌な予感しかしない。頭には不安しかない。マイナスなことばかりが頭をよぎる。
「はあ、はあ…」
公園を一周してみたが、きみはいなかった…。
「もう、あとは…ここしかない…」
象のすべり台のくぼみの中。
ここで、ぐっすりと、眠っていてくれれば…。
そして、目を大きく開けて、驚いてくれれば…
そしてかわいく、すり寄ってきてくれれば…
私は自分で、雨や風が入ってこないように、寒くないようにと貼っていたシートをガサガサとどけて、シートの下に更に冷たい風が入ってこないようにと貼っていた段ボールに手を掛けた。
ゴク
唾をのみ、大きく息を吸った。
ガサガサ…
段ボールをずらして中を見る。
「………………………っ…………………」
…きみはぃなかった
頭が絶望感に覆われて、ショックでその場で倒れそうになる。涙がぽろぽろと零れて、大きな声で喚きたくなる。のたうち回りたくなる。だって
この公園にきみがいなかったことなんてなかったのだから
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
私はすべり台の前でただただ立ち尽くす。
静かに涙を流しながら立ち尽くす。
もぅ、何分こうしているのかわからない。
昨日のあれは夢なのではないかと、朝起きたときから、実は何度も何度も頭によぎっていた。走っていた時も、この公園に着いた時も、そして今も…。
そう思うと、少し気が紛れて楽になる。今ニャーさんは、たまたまどこかに行っているだけで、また少したら帰ってくるんじゃないか…そう思うだけで心がスッと軽くなる。
でもそれと同時に、そんなことありえない!だって昨日の出来事は絶対夢じゃない!と、強く反発する自分がいる。そして(この現実は、現実逃避なんてしないで、絶対にきちんと見なければいけない!向き合わなければいけない!中途半端にしていてはいけない!)という考えが、私の頭に強く響いた。
「……………………グス…」
気が付くと、下にある砂が、私の涙で濡れていた。
そこだけ軽く雨が降ったようになっていた。
「…」
私は涙を手で拭う。
「ぇ…」
この服、昨日着てた服だ。ショッピングモールに着ていった服だ。
「っぅ…」
私の下にある砂に更にまた私の涙が降りそそぐ。
これでもう、私は、昨日のあれが夢であるという現実逃避ができなくなってしまった気がしたからだ。