私は誰とも喋らないから、大好きな猫に話を聞いてもらう…
ニャーさんはベンチに座る。
私もニャーさんの隣に座る。
ニャーさんが私をジッと見る。
私もニャーさんをジッと見る。
「ふふ、なんだか恋人みたいですね~」
そう言ってニャーさんを撫でくりまわす。
そうやってニャーさんは撫でくりまわされる。
「…」
「…」
そうして私たちはまた平然を装う。二人で空を見つめながら。
ガサガサガサガサ
「!!」
私は袋から猫缶を取り、クワン!と開けた。
「!!!」
ニャーさんは声を出せないほど凄くしどろもどろしている。
「まあかわいい。かわいいねニャーさん」
私はそんな可愛すぎるしどろもどろニャーさんをもっと見ていたくて、いたずらに話しかける。
「は、はふ、はぅ、はふ」
目を大きくさせて、鼻息を荒くさせて、口元緩みっぱなし、隙(好き)だらけニャーさんを私はニマニマと、これでもかと眺め、ニャーさんの目の前にトンッと優しく「どうぞ」と置く。
が、ガモガもワチャ、ふーふー、わ、ワチャワチャガも、キュー!がーもがもがも、ふシュー、ペロペロペロ…
ニャーさんが私をジッと見る。そして首を傾けて
「ニャー」
と天使のような声で鳴く。
クワン!
あ、いつの間に…私は二缶目を開けていた。
わ、ワチャワチャ、しゅるり、ペロンペロン…
「ミャー」
ニャーさんは二缶目を半分程食べ、私の膝の上に乗ってきた。最初の頃は膝に乗られると毎回かわいさで失神しそうになっていたけど、もう慣れた。
「じゅるり…」
今ではよだれを何とか垂らさない程度にまで成長した。
「美味しかった~?残った奴はまた後で食べてね」
そう言いながら私はニャーさんの頭を撫でる。
「…」
あぁ…私はきみといると、あんなに荒れていた心が嘘のように落ち着いて静かになる。
「…」
きみは人の心を癒してくれる。緩やかに穏やかにしてくれる。
そして、きみといると、喋りたくなる。
「ねぇ、ニャーさん、今日の私いつもと少し違うと思わない?」
ニャーさんがこちらをヒョコっと見る。
「今日ね、久しぶりにショッピングに行ってきたの」
私は誰とも喋らないから
「凄く、物凄く大きなショッピングモールでね…」
大好きな猫に話を聞いてもらう…
「なんでもあるの!」
子供の頃の自分が今の私を見たらどう思うだろう…
「凄く楽しかった…」
冗談だろうと、何かの間違いだろうと、思うのだろうか…
「すごくすごく、たのしかった…」
頭が、おかしくなったのではないかと、思われるのではないだろうか…
「いっぱい、すごくいっぱい、人がいて、みんなだれかときてて、幸せそうで、楽しそうで、笑ってて…わたしは、それをただながめてた。ポツンとひとりぼっちのわたしは、後悔しながら、ただながめてた」
気でも触れたんじゃないかと、思うだろうか…
あれ?私…いつも…こんなこと話さないのに…