私、いろいろやりすぎかな…?
「ふふ」
見つけちゃった。
階段の七段目で、最近は上から来る方が多くなったから、階段の一番上を見て、耳をすませて待っている。
「…」
その姿を見ただけで私は涙が零れ落ちそうになった。なぜだかわからないけど、零れ落ちそうになった。
「…」
私はニャーさんに気付かれないようにそろりそろりと歩いていく。驚かせようと息をひそめて歩いていく。
「…」
あ、気付かれた。
「ミャー」
天使のような声と共に、ニャーさんは七段目から舞い降りてきてくれた。その姿はまるで、天使の翼があるのではないかと思うくらい軽やかで、そして美しかった。
「ニャーさん!」
私は両手を小さく広げてニャーさんを迎える。ニャーさんはその両手の中にすっぽりと頭を入れてくる。
「ただいま~」
これでもかと撫でくりまわす。可愛くて仕方のないきみを撫でまわす。これが至福かと思いながら。
「…」
「…」
そしてしばらく撫でた後、一人と一匹は、平然とした顔を装いながら、七段目を右に曲がった。
「…」
もう、つまずくこともなくなった。それくらい来てる。毎日来てる。雨の日も風の日も、晴れの日も曇りの日も、きみが心配で、きみに会いたくて来てしまう。
あの公園の、象のすべり台の下のくぼみのような隙間には私が色々細工をした。雨が入らないようにシートを切って貼り、その下に寒い風が入らないように段ボールを切って貼り(ニャーさんが入れるようにしてある)、地面は固くて眠りずらそうだったから、段ボールを切って敷いて、その上に私の使わなくなったタオルなどを三枚ほど敷いてある。
「…」
私、いろいろやりすぎかな…?
あそこにコンセントがあったらコタツでも持ってきてあげたいだなんて、思っているけど、私は、きっと、やりすぎではない。
「着いた~」
今日も街灯はオレンジ色に優しく、私たちを照らしてくれる。この街灯さんは、私たちしか来ないこの空間をどう思っているのだろう。少し不気味に思っているのかな?でも…もしもあなたたちが消えたら、ここはもうきっと、完全に終わってしまう気がする…。だからお願い、絶対に消えないで。きっと消えても誰も気付かない、私とニャーさんしか気づかない、私が言っても、こんなところきっと誰も来てくれない…。頭のおかしな女が、意味の分からないことを言ってると思われるだけだ。
「お願いだから消えないでよ」
私は入って右にある街灯にそう言い、ニャーさんの後ろを歩いていった。