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きみが待ってる公園で  作者: 柿の種
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ぁ!ゲロ

「君…貴君と言ってしまってすまない貴君」


 そして誠心誠意謝ってきた。わたしはオドオドしながら


「ぃ、いぇ、そんな…貴君なんて言っていただけて、うれしいんです。嬉しいんですよわたしは。だってまるできっくんみたいではないですか」


「「「…」」」


 わたしは何を言っているのだろう…。昆虫同士の会話、動物同士の会話、人間同士の会話を何百年と腐るほど聞いてきたのに、なんだこの会話のスキルは…なんなのだこの会話のスキルは!


 きっくんとは誰だ?貴君はきっくんみたいではない!貴君はきっくんみたいではないではないか!!わたしは何を言ってるんだ、わたしは何をたわけたことを言っているんだ!


 あぁ…見るだけではダメだった。


 あぁ…聞くだけではダメだった。


 得体の知れないものは表情は見えないがポカンとしているのはわかる。これは人間でいう目が点というやつだろう。そしてその得体の知れないものはおもむろに話し出した。


「私もそれが言いたかった…」


 ほ


「私は貴君と言ったのではなく、私は貴君を(きっくん)と言ったのだ」


「や、やはり…」


 こ、ここは乗っておくものだ…。


「きっくんにあだ名がなさそうだったから…ふ、なさそうだったから、即興で付けて、呼んでみた、だけ、で、ある…」


 彼は下を見ながら言った。明らかな嘘を、即興で考え、オドオドしながら、ときに吹き出しながら、唇を尖らすように言った。


「や、やはり…」


 もうわたしもこれしか言えまい。


「よ、よしよし…貴君に(きっくん)という素晴らしき名前も与えたことだし、私も何か、名前、でも、付けてもらおうかな?ん?」


 ほ


「な、名前?ですか?」


「うぬ」


「ど、ド…どー、ドロ…ゲ…ロ、ぁ!ゲロというのはいかがでしょうか?」


「今後は!私をプーやんと呼ぶように」


「え?」


 なぜ…ぷーやん…


「私をプーやんさんと呼ぶように!!」


 わたしは初めて怒られた。


「はぃ…」


 そして初めて言いくるめられた。そして彼はボソッと「名前が胃液はイヤである」と言った。


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