4 勇者1
時は一月ほど遡る
深い深い青が茂る森の中、涼しそうな木陰に一人の男が倒れている。男は青白い鎧を着込み、様々な、派手とも取れる装飾を身に着けていた。
見れば顔は貴公子という言葉が良く似合うほどの美形で、銀の髪が顔立ちと相まって高貴な雰囲気を醸し出している。
男は眠っているのか、はたまた死んでいるのか、目を閉じたままぴくりとも動かない。
その時、ガササッと、落ち葉を踏みしめる音が響いた。青年の左の方からだ。
「・・・まだ寝てるみたいね」
音の正体は女性だった。彼女は倒れている青年に近づくと、膝を曲げて青年の顔を覗き込んだ。
青年も相当な美形だが、彼女も負けていない、透き通るような長く艶やかな金髪。とても深い碧の瞳。意志の強そうな顔立ちでありながら、優しそうな笑みのとても似合う美貌。そして凹凸のハッキリした長身。いずれも非の打ち所などなく、完璧といっても良い。
彼女は青年の髪に触れ、ひとつため息をこぼした。
(いつになったら起きるのかしら・・・)
青年が倒れてからもう丸一日がたっている。彼が負った深手は彼女の力で癒し、一命は取り留めたものの、深手を負った時の衝撃が大きすぎたのか、精神が戻ってこないようだ。
「早く覚めてくれないとあの子が魔王になっちゃうのに・・・・・」
彼が負った傷―丁度胸の中心をぽっかりとやられていた―を撫で、もう一度小さくため息を漏らした。
(それにしても随分と豪勢な格好をしているのね。勇者なんて言うから聖人君子みたいな人かと思ってたわ。それともこの装飾には何か意味があるのかしら?)
そのまま傷痕を何度も撫でていると、青年、勇者の体がぴくりと動いた。
「ん、んん・・・・・」
ゆっくりと勇者の目が開いた。彼は自分の手を顔の前に持って行き、握ったり開いたりを何度も繰り返している。
「あ、あっれ?生きてるわ・・・。なんじゃこりゃ」
上体を起こして辺りを見渡す。するとすぐにすこし離れた所で座っている女性に気づいたようだ。
「君が助けてくれたのかい?」
どことなく情けない笑いを浮かべ、問いかける。
女性は少し怯えたように顔を強張らせていたが、微かに頷いた。
(び、びっくりした・・・。いきなり起きないでよ)
いきなり勇者の目が覚めたものだから、思わず飛びのいてしまったのだ。お気に入りのスカートが土で汚れてしまったが、今はまず勇者だ。
あまり状況が飲み込めていないようで、勇者はこちらをボーっと見ている。
なのでまず彼女は何が起きたかを説明することにした。
もうちょっと続ける気だったけど長くなりそうなので一区切り。
っていうかあれだ。久しぶりに天高全巻読み返してると自分の文の拙さが良く分かる。
なので今回は動作描写に気をつけました。
これでも頑張った方です。