4の話【命のベル】
突如現れたドアから目を話せない波美と蒼太。
開けては駄目だと心臓が警鐘を打つように跳ね回る。
しかし、無情にもカチャリと音がしたかと思うとゆっくりとドアが開いていく。
「いらっしゃいませ」
中から現れたのはウエイトレス、それもボーダー柄の制服に身を包んだファミリーレストランで何回も見たような姿だ。
「あの…わたしっ、たちっ!そのっ…」
焦って何か言おうとする波美の言葉を待たずウエイトレスはマニュアル通りの言葉を口にする。
「何名様ですか?」
「あの、私たちお客じゃ…」
「何名様ですか?」
「……」
思わず閉口する波美に変わり蒼太が答える。
「2人です。だけど先に友達が来てるかも知れなくて。背の高い俺らと同い年の男なんですけど」
「それでしたら中に入りご確認下さい」
ウエイトレスはそう答えると自分はドアの脇に立ち、入口へと2人を誘う。
「…ソータくん」
波美が蒼太の腕を掴む。場所が違えば仲睦まじいカップルのようだが、2人の表情は暗い。
「行こう。悟史がいるはずだ」
無言で頷く隣人の存在を感じながらドアをくぐる。数歩いたところで後ろでドアが閉まる音がした。振り返るともちろんドアは閉まってあり、その前には先程のウエイトレスが立っていた。彼女に表情は無い。
更に数歩進むと再びドアがあった。入口と同じ木製のドア、今度は紫色である。
ドアを開けると壁に耳を当てて聞いた音楽が大音量で流れていた。内部の作りはまさしくファミリーレストランのそれである。全部で10あるボックス席には2人ずつ人がいる。長椅子には1人ずつ座り、ボックス席内の2人はそれぞれ向かい合っている形だ。
本来ドリンクバーがありそうなスペースは小さなステージとなっていて、そこにはタキシードを着た男と、ウエイトレスが2人その男の両脇に構えている。
タキシードの男は波美と蒼太に目をやると片手を挙げた。男が手を挙げると同時に音楽が止まる。
「いらっしゃいませ!2名様!申し訳ありませんが少々お待ちください!」
男は低いよく響く声でステージ上から入口の前で立ち尽くしている2人に声をかけた。更に続けて男は言う。
「そもそも!私共はそこのお嬢さんをご案内しました!2人もご友人を連れて来られたので人数が合わないのです!なので!先にご入店頂いたご友人に参加して頂き!あなた方はそこでご覧になっていて下さい!」
そう男が声をかけると、バックヤードらしき所からウエイトレスが4人現れた。そして素早く2人を入口脇にある順番待ちのための丸イスに押さえつけるように座らせ、更に椅子の足と2人の脚をそれぞれ鉄の輪で固定し、その輪に鍵までかけた。
椅子の足は床に完全にくっついていて動かせない。ウエイトレスの動きは洗練された兵士のように力強く、無駄がなくて2人は為す術もない。
「くっ、なんだこれ!っつーかオイ!友人って言ったな!?悟史!どこだ!悟史!!」
必死に室内を見回すが、ボックス席までは少し距離があり、しかも椅子の背が高くほとんど頭の先や一部しか見えない。
「蒼太!?蒼太!!ここだー!」
ガチャガチャという金属音と共に悟史の声が室内に響く。
「久留米くん!どこ!?こっちに来れる!?私たち捕まっちゃって!」
「波美ちゃん!俺も手足を固定されて動けねえんだ!1番奥の席にいる!」
「なにやってんだよ悟史!勝手に入って捕まってんじゃねー!」
身勝手な友人に腹を立てた蒼太が発した怒声にタキシードの男が答える。
「それは違います!久留米様は私共がお連れしたのです!一向にいらっしゃらない類瀬様の代わりに!」
「え…私の変わり?」
「そうですとも!ここにいらっしゃられる20名様は全て私共がメールにてご案内申し上げた方々!しかし!類瀬様は勝手にご友人を連れてきたばかりか外をウロウロするばかり!なので!こちらから出迎えたのでございます!」




