目をつけられた
この世界では、男性の名前の尾母音は「う」と「お」で、女性の名前の尾母音は「あ」と「え」である。
僕はエルク。この度、デルタ星インテグラル王国の名門であるインバース学園に入学することになりました。
「エルク、お前はこの家の長男だ。己を秀でた男にするための努力を惜しむな」
記憶のなかで一番遠い昔の両親の言葉だ。
ここには、全国から選ばれた新入生が集う。といっても、ここに来れるほどの学力は、超がつく金持ちしか育てられない。
幸いその環境に恵まれたのだから、僕は決して家の顔に泥を塗れない。
「ねえみて!あそこに…!」
「あれは…!!この国の第一王子レージオ様と…」
「妹君の第一王女ルージア様!なんと麗しい…!!」
「ルージア様がついに入学を…!!!」
「みんなーー!ごきげんよう〜〜!!!」
「きゃーーーー!!!!」
「ルージア……はしゃぎすぎ…」
「いいじゃないですかお兄様!ほーらお兄様もご挨拶!」
「……おはようございますみなさん。今日もお疲れ様!(ニコッ)」
「レージオ様ァァァ!!!」
「今日も素敵ーーー!!!」
「あはは…こちら、妹のルージア!みんな、仲良くしてやってくださいな!」
「もちろんですわ!」
「だってこんなに愛らしい……!」
「レージオ様と似て美しいですわ!」
「え〜〜照れるなぁ〜って…おお、そこのあなた!そのペンダント、オーダーメイドかしら?」
「は…はい!」
「すげえー!グミみたいでおいしそう〜!」
「え」
「おいルージア…!ごめんよ〜みんな。じゃあ、朝礼遅れるから、急ぎましょうか」
いつもこうだ。周りは、まるで僕が見えていない。細い身体、控えめな身長、威厳のかけらもない顔立ち…
「なんであんな男らしくない息子が生まれたのか…」
「あなた…エルクはエルクではございませんか。」
「知るか!俺は息子を産んだんだ。女を育てた覚えはない!」
「産んだのは私ではありませんか!」
数年前の深夜、偶然部屋で聞いてしまった両親の声だった。
「エルクさまと申しますの?母音が「う」ってことは…」
「うっそー!女の子だと思ったのに〜」
「あ〜あ、友達になれると思ったのにな〜」
「ごめんなさい…」
生まれて初めて、両親に連れられて行ったパーティーでの出来事だ。
この学園では、せめて、誰にも蔑まれない生活を送りたい。
「ではみなさん、まずは自己紹介をお願いします。」
平淡に、目立たないように…
「エルクと申します。趣味は料理と散歩です。よろしくお願いします。」
ここに来るような人間は、表では人の容姿にとやかく言わないことを知った。
「…ルクさま!エルクさま!」
「え、はい……!?ルージア様!?」
「あら?私をご存知で?」
「そりゃ、もちろん、王女様ですから…」
「そうでしたわね!ねえエルクさま、あなた、入学試験の首席でしょ?」
「…はい。」
「私は次席よ!エルクさま、今後は私と…何かと勝負なさい!」
「…はい!?」




