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自分のせいで

   ◇◇◇


「セ……ル、セシ…セシル!」

「あ、え。ノエル様?」


 いつの間にか傍にはノエルがいた。


「セシル、大丈夫ですか。顔が真っ青です」

「大丈夫ですよ、今日は少し頑張りすぎただけで」


 あははと笑うが自分でも空元気なのがわかる。表情がうまく作れない。笑えない、泣けない。自分に泣く資格なんてない。牧師失格だ。街の人一人が守れないなんて。

 泣く資格なんてないのに、眼の前が涙でぼやけていく。


 泣いたら駄目なのに。


「セシル、泣いていいんですよ」

「……でも私なんかにそんな資格」

「泣くのに資格なんていらないんですよ。辛いときは泣けばいいんです」


 ノエルの穏やかな声を聞くと、緊張が溶けていく。それに比例するように涙が一粒こぼれた。

 静かに泣くセシルをノエルは抱きしめた。


「……だいたいのお話は聞きました。でもセシルのせいではありませんよ」

「でも私が早く結界を張っていれば」

「セシルはただの人間なのに一人で3つの結界を張ったんです。それだけでもすごいですよ。被害は最小限になったんです」

「でも、でも」


 どんなにノエルに優しい言葉をかけてもらっても今の自分は受け取ることができなかった。

 全部自分のせいなんだ。疲れたからって休憩しながらしなければ余裕で間に合っていたはずだったんだ。苦しくっても頑張れば間に合っていたんだ。


「セシル!」


 ノエルがセシルの頬を叩いた。いきなりのことにセシルは涙が止まる。


「セシルのせいではありません。今は魔獣が目覚め餌を探し求め凶暴化する時期ですから丁度重なってしまっただけです。それよりも」


 ノエルの視線の先を追うとナースが立っていた。


「牧師様、辛いとは思いますが立ち会っていただけませんか。最期に一人なのは寂しいでしょうから。私はできるだけ早くご家族を呼んできますので」


 言わんとしていることがわかり、悲しみで心がいっぱいになる。でもこの時を逃したら自分はもっと後悔してしまうだろう。


「行きます。ノエル様も」

「はい」


 ナースがそっと扉を開ける。

 部屋の中にはベットに横たわるテディおばさんとその横に座る医者がいた。


「テディおばさんは」


 医者はゆっくり首を横に振る。

 そうですか、と返しテディおばさんに近づいた。医者はそっと部屋を離れた。


「テディおばさん。あなたを守れなくてごめんなさい」


 テディおばさんに頭を下げる。謝罪なんて意味がないとわかっているけれど言わないといられなかった。

 反応は無い。テディおばさんは小さく息をしているだけだ。


「ごめん、な、さい」


 幼い頃からテディおばさんには優しくしてもらった。会うたびにお菓子をくれて、誕生日にテディベアをもらったこともあった。そんな優しい人を自分のせいでなくしてしまうなんて。

 

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