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第22話 風呂場で深まる女の友情

 何もない簡素な恭平の部屋には3人が集まっていた。

 男性1人、女性2人という組み合わせで何も起こらないはずもなく。


「で、なんでお前らここにいるの?」


 ベッドの上に座っているエクレールと、隅で申し訳なさそうに立ちつくす瑠璃に向かって言葉をかける。


「ここは仮にも男性――俺の部屋だぞ。別の部屋の方がいいだろ」


 恭平は立ったまま頭を掻くとそう言った。


「どういう意味ですか? もしかして、ラピス姫様を襲うつもりなのですね。いやらしいです。最低です」

「そんなことはしない!」

「なら、何も問題はありませんね」


 エクレールの言葉にぐうの音も出ずに、恭平は黙らされてしまう。

 そんな状態でちらりとベッドの下へ視線を向けた。


「なるほど、センシティブな物があるのですね。そんなものはとっくの昔に知っているので、隠す必要などないのでは?」


 恭平は肩をびくっとさせると、動きが止まってしまう。


「え! そういうのがあるの?」


 何故か瑠璃が一番反応していた。

 恭平は1つ咳をして、場をごまかす。


「とにかく、そんなところに立っているより、ベッドに腰かけたらどうだ?」

「そうです。ラピス姫様も座って下さい」


 エクレールは自分の隣を叩いて座ることを促す。

 だが、瑠璃はすぐに座ろうとせず、エクレールを見た。


「エクレールさん、私のことは瑠璃と呼んでくれませんか? ここでは樋山 瑠璃を名乗ってますし」

「いえ、ラピス姫様にそのようなことは……」


 珍しく困ったような様子で手を前にだして、断るように手を振る。

 それでもじっと見つめる瑠璃に折れたのかエクレールは少し肩を落とした。


「わかりました、瑠璃様」

「瑠璃です。エクレールさん」

「……それでは、私のこともさん付けではなく、エクレールとお呼びください。瑠璃」


 2人はお互いに微笑み合う。そして、瑠璃がベッドの上に腰を下ろすと、今度はエクレールが立ち上がった。


「瑠璃、お風呂に入りましょう」

「ええ……?」


 唐突なエクレールの提案に、瑠璃は少し困惑するが、すぐに承諾して立ち上がった。


「恭平は覗かないようにしてください」

「わかってるよ、しないしない」

「はぁ、そんな度胸もないのですか。恭平程度では仕方ないですね」

「俺がどう答えても駄目じゃねーか!」


 そんなやり取りを見て緊張がほぐれたのか、瑠璃が口に手を当てながら笑っていた。

 風呂の準備をしてバタバタする2人を見ながらぼーっとしていると、準備が終わったのか部屋から出ていった。

 静かになった部屋で恭平は肩をほぐしてからベッドに横たわった。




 瑠璃とエクレールはこぞって脱衣所へやって来ていた。

 その脱衣所は狭く、洗濯機が置かれていることで、余計にスペースがなくなっている。2人は肌が触れ合いそうになりながら、服を脱いでいく。


「2人だと少し狭いですね」


 窮屈そうにエクレールがそう言う。彼女は細身とはいえ身長が高く広いスペースを要求されてしまう。それに対して、小柄な瑠璃は狭いスペースでいい。

 2人は脱衣所内でぎゅうぎゅうになっているが、体の大きなエクレールと、小柄な瑠璃というアンバランスがちょうどいい具合に収まっていた。

 洗濯籠が1つしかないため脱いだ衣装を1つ1つ丁寧に置いていく。


「こうして他の人とお風呂に入るのはあまり経験がないから、ちょっとテンションが上がるわね」


 上着を脱ぎ終わり、瑠璃はブラジャーとショーツだけになった。そして、ブラジャーのホックを外そうとしていると、エクレールが真剣な面持ちで瑠璃に振り返る。


「ラピス姫様……」

「だから、私のことは瑠璃って……」


 エクレールが改まった言い方に、瑠璃もそれを理解した。


「女王に即位することをやめていただけませんか」

「そんなこと今言う必要は――」


 瑠璃はすぐに察した。2人っきりでしか話せない内容だと。

 瑠璃はホックを外すのを止めて、背筋を伸ばした。


「女王に即位すれば、ラピス姫様と恭平は確実に不幸になります」

「どうしてそんなことが言えるの?」

「恭平のことを勝手に言うことはできませんが、間違いありません」


 エクレールが1度折れたことを蒸し返すのに、瑠璃はいい顔をすることができなかった。


「もし、私が女王になるのを止めたら?」

「最低でもラピス姫様は幸せになれます」

「どうしてそう言えるの?」

「ラピス姫様は、恭平のことが好きだからです」


 図星を突かれたのか、瑠璃は1歩後ずさる。

 そんな様子にもエクレールは変わらず神妙な様子だった。


「ど、どうしてそんなことを?」

「私は恭平ほど鈍くはありません。傍から見たらバレバレです」


 瑠璃は顔を真っ赤になった顔を手で覆った。

 恥ずかしさで今にも死にそうな様子だったが、なんとか持ち直してエクレールに臨む。


「それが、どうしたの?」

「……結婚したら、きっと幸せになれるでしょう」

「~~~~~」


 死にそうになるのを堪えて瑠璃はエクレールの顔を見る。


「私だけって言うのは、恭平は違うってこと?」

「いえ、恭平も好いてると思います」

「――でも、それが女王になるのと、どういう関係があるの? 別にお、お互いが好き合ってるなら、問題……ない……」


 瑠璃の言葉はだんだん弱くなり、最後は聞き取れないほどに小さくなっていた。


「それは、彼が魔剣ライトニングの持ち主だから……剣聖ライトニングだからです」


 エクレールはそのままの様子で平坦に言った。

 それに瑠璃は眉を顰める。


「それは、魔剣の精霊だからわかるってこと?」


 エクレールは首肯した。

 そして、瑠璃は少し息を吸う。


「でも、私は女王にもなるし、2人で幸せにもなる」

「そうですか……」


 自信満々といった様子の瑠璃を見て、エクレールは微笑んだ。


「瑠璃がそう言うのならもう止めません」

「う、うん。このことは恭平には黙っておいてくれない?」

「大丈夫です。私は口が堅いことで評判です」


 エクレールのおどけた様子に、つられて瑠璃も笑みをこぼした。


「それではお風呂に入りましょう。お互いに前を洗いっこしましょう」


 エクレールはまだ身につけていた下着を放り投げると、浴室へと入っていった。


「え? 背中は洗い合っても、前を洗い合う必要はないんじゃない?」


 瑠璃もその後を追って下着を脱ぎ捨てた。

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