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異世界指令「転生して歴史を改変せよ」  作者: 小津敬一郎
第一章 魔女騎士ジェニーを殺害せよ
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中央都市の不穏な噂

 繁華街を歩く。あちこちで商人たちの威勢の良い掛け声。

 雑踏は品質と値段を求めて歩いては立ち止まり、歩いては立ち止まり。

 広場では数人の絵描きがシノギを削っている。吟遊詩人の姿も確認できた。


 ついに。ついにやってきた。中央都市であり王都でもある、ベインフォード。

 流通の要という訳ではない。地形上、防衛の為の都市だ。

 とりあえずは、情報収集だ。

 情報収集の基本は、酒場と相場が決まっている。


 とある酒場の前。未成年(十五歳未満)は飲酒禁止!と張り紙が。

 そうか、この国では十五歳から成年扱いなのか。

 どちらにしても俺には無理な話だが。


「ごめんください。」


 と前置きをして店に入る。

 店にいる全員の視線が注がれる。


「ミルクを一杯、お願いします。」


 銀貨を一枚差し出す。


「随分礼儀正しい坊やじゃないか!気に入ったぜ。」


 周りの大人たちはガッハッハと笑う。


「新顔だな。さて、何日持つかな?旅人さん。」


 ジェニーを殺すまではこの街からは出ない。

 もっとも、その目的を声を大にして言えば袋叩きにあうだろう。

 差し出されたジョッキ一杯のミルクを一気に飲み干す。


 そして、何曲か。歌いますか。


「いいねいいね、酒場と言えば歌だ。そこのステージを使ってもいいぞ。」


 一段盛り上がった部分へ促される。

 よし、やるか。

 ジュ○ィマリの某剣客アニメとタイアップしたあの曲。


 ……


 …………


 ………………。


 よし、こんな感じだ。いいぞ。

 いつも通りの賞賛の嵐。


「すげえな、今まで聴いたことがない歌だ。」

「坊やのオリジナルかい?」


 え、あ、はい。一応。この世界ではオリジナルです。


 一番奥の巨大な男が手招きしている。

 それに応じ、その卓についた。


「俺は騎士だ。」


 小さな声で男はそうささやく。


「未成年がここに来た……という事は、情報が目当てだろ?」


 そうです。話が早くて助かります。


「まず一つ目……」


 一つ目の情報は、最近頻発している、猟奇殺人事件。

 騎士団と自警団が捜索にあたってるが、まだ犯人の尻尾すら掴めていない、との事。


 二つ目の情報は、女王騎士ジェニーが命を狙われている、との事。

 もちろん警護は万全で、ジェニー自身も戦闘能力を有しているので……

 それほど危険視はされていないが、先の猟奇殺人事件の話とあわせると。


「どうだい?何か感じないかい?」


 俺は黙って頷く。


 三つ目の情報は、またもやジェニーの話だ。

 騎士団の人員を半分使い、「悪魔狩り」に出かけたそうだ。


 まて……悪魔狩り?


「ジェニー様の趣味でな、深淵の地は知ってるか?」


 はい、知っています。


 一時的に首都の治安が悪くなり、ほとぼりが冷めるまで悪魔狩りを嗜むそうだ。

 これまでに何匹もの悪魔を屠っては遊んでいるそう。


「一月前に発ったから、いつも通り悪魔の皮を持って帰ってくるんじゃないか?」


 見世物にもなるし、高い金額で取引されているとのこと。


 そうか、一月前に発ったか……もしかすると、俺は出遅れたのか?

 それとも、次のチャンスがあるのだろうか。


「四つ目は……お前の話だ。」


 芸術関係に通じる貴族がこの都市には何人もいるそう。

 その中からパトロンになってくれる奴を探せ、と騎士は言う。


「お前の歌なら、多分可能だ。失礼が無ければな。」


 という訳で。

 俺は今、とある貴族の屋敷の前にいる訳で。

 パトロンになってくれそうな貴族に気に入られなきゃいけない訳で。

 いくつかの候補から一番金を持っている貴族の屋敷の前に、いる訳で……


「さて、どうしたもんかね。」


 門は固く閉ざされている訳で。

 どんなに大声で歌っても屋敷には届かない訳で。

 むしろ隣近所の住人からグーパンが飛んでくるのは避けたい訳で。


 ああ、心臓がバクバクする。

 正式な芸術家のジャッジは、受けていない。

 なのでその道に通じる貴族の目に留まるかは判らない。


 門の横にあるレンガの柱にへたり込む。

 誰かが来るのを待つか。


 しばらくすると、メイド服姿の女性がやってきた。


「私のご主人様に、用ですか?」


 いかにも。

 彼女はここの屋敷に、住み込みで働いているのだそう。

 俺の姿とこのリュートを見て、多分「そういった」用があるのだと思われたみたいだ。


「まあ、ダメ元でも。その気概は買いますよ?」


 最近はまともな吟遊詩人がいなくて、と彼女。

 でも住み込みで働くつもりがあるなら、口利きしてあげますよと。


 いえ、気持ちだけ受け取っておきます。


 門の逆サイドの横側に、人が出入りする用の小さな扉が。

 ……このでかい門、何に使うんだ?


「馬車用ですよ。常識です。」


 メイドは口を尖らせる。

 ああ、そういうことか。自動車は無くても馬車があったか。


 門から見た感じ、それほど広く感じなかったのだが……

 どうやら門から屋敷までは相当距離があったらしく、とてつもなくでかい屋敷。


 内装も……とんでもなかった。俺の語彙力じゃ無理だ。

 しかし、赤いカーペットとシャンデリアに高そうな絵画、動物の剥製。

 基本は抑えてある。


「ご主人様は夜に帰られます。それまで応接室にどうぞ。」


 応接室も……凄いな。絵画がズラリ。

 この世界の事はよくわからない新参者だが。

 胸を打つ繊細な線画に、心が震えるような大胆な色使いに、圧倒される。


「では、わたくしは仕事に戻ります。」


 ああ、ありがとう。


 どうやら……とんでもないところに足を踏み入れてしまったようだ。

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