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アジュラ・ギディア・ルヴェニクス

短編にしようと思ったけどわかりにくいからともう一人分の視点で書いたら長くなりすぎたので長編にしてみました。

「アジュラ!!」


リノ様が、私の名前を呼びながら走ってくる。

心臓がバクバクと音を立てる。

耐え切れずに体は崩れ落ちる。

息が乱れて、めまいがする。


「アジュラ、今、今治すから。しっかりして!!」


必死に治癒魔法をかけようとする。

そんな、あなただから聖女に選ばれたのでしょう。

卑屈だったあの頃。

どうして、私が聖女じゃないのって何度も思った。

聖女であれば、私は大切にされたのに。

違う世界とはいえ同じ異世界人。

なにが違うのかなんてわからなかった日々。

あの人に諭されて、愛されて、愛して、あなたを普通の目で見られるようになって、ようやく気付いた。


「どうして、どうして治らないの……っ!!?」

「リノ様、私に魔法は効きません。そういう体質なのです。」


そう言えば、リノ様は今にも泣きだしそうな顔をした。


「ねぇ、リノ様。私ね、幸せでした。」

「……アジュラ?」


いぶかしげなリノ様の声を無視して私は続ける。


「この世界は、理不尽で、私に意地悪で、運命は、私を殺そうとし続ける。」

「え……?だって、異世界人は、守られるんじゃ……。」

「いいえ。守られません。

呼ばれてもいないのに流れ着いたものは異分子として排除の対象になる。

守られるのは、望まれて呼ばれたたった数人の方だけ。」


その言葉に、リノ様は顔をゆがめる。

聖女に、そんな汚い、裏の話をするわけがない。

聖女とは清らかな世界で清らかに生きるべきだと思われているのだから。


でも、私はそうは思わない。

聖女とは、苦痛をしり、世界の裏を知ったうえで全てを包み込む存在だと思うから。


私は、異分子だから、排除される。

だから、排除されないあなたが、何も知らないあなたが妬ましかった。

でも、そんな私を変えてくれた人がいるの。


「それでもね、私は幸せだったんです。

ディズに愛されて、ディズを愛して生きた日々は、私の大切な愛しい日々。

大事な宝物なんです。

あの人は、すべてを知って、それでも私を守ってくれた。

私が死ぬまで止まらない、運命に、ともに抗ってくれた。

それだけで、私は幸せなんです。

幸せになれたんです。」


心から、幸せだと笑って言えるようになったの。


「アジュラ、過去形で言わないで……まるで、まるであなたがっ!!!」

「リノ様、私は死にますわ。もって、数日でしょう。

呪いは、魔法とは似て異なるもの。だから、呪いは私にも効くんです。

でもね、あなたをかばってすべてを受けたこと。

私は、後悔していません。

あなたを庇えたこと、庇って逝けること。それがとてもうれしい。

ディズと生きたくないとは言わない。

でも、あなたを庇って死ぬことを、私は後悔しない。

やっと、あなたの役に立てた。」

「アジュラは、いつも、いつも私の相談に乗ってくれたじゃない!!

あいつだって悲しむわ。

あの、執着心皆無の男が、初めて執着したのはあなたなのよ!?

お願い、お願いだから生きて。死なないで……。」


涙を流すリノ様は、とても美しい。


ねぇ、私は本当に幸せですわ。

ディズの幼馴染にそう言ってもらえるのですから。

あの人、無表情で、でも行動は甘くて、それがひどく心地よくて。

本当に、嬉しいのです。

初めて執着されたのでしょう?

あの人が、甘い言葉をささやくのは、過去も現在も、私だけなのでしょう?

未来はわからない。

でも、それでも、嬉しいのです。


「ねぇ、リノ様。

私、手紙を書きますわ。ディズに。

だから、渡してくださいな。合流するときに。

そして、どうか渡す時に、お伝えくださいませ。

私が、最後に『あなたを愛してる。今まで幸せでした、ありがとう』と言っていたと。」

「いやっいやあああぁぁ!!!!どうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!」


リノ様。

私は、あなたがこんなにも悲しんでくれることが、ひどくうれしい。

取り乱してくれる、その事実にほの暗い心が少しだけ顔を出す。


(悲しんで、忘れないで、あなたを庇って死ぬ私を)


心がぽつりとこぼす言葉は、私の本心。




あれから、三日、経ちました。

たった三日で、私の病状は一気に悪化しました。


「アジュラ、ねぇ逝かないで。

あなたが死んでしまったらディズは壊れてしまうわ。

私だって、ディズに殺されるかも。

ねぇ、私に生きて欲しいなら死なないで。」

「…リノ様、無理ですわ。私は、もう、持ちませんの。」

「私に死ねというの?」

「平気です。ディズは、リノ様を殺すことなどなさりませんわ。」

「でも……。」

「大丈夫…けほっ。」

「アジュラっ!?」

「けほっげほっけほっ。」



あぁ、瞼が重い。


ねぇ、ディズ。

私、最後まで「腹黒」というものでしたわ。

あなたも、私を覚えていてくれるでしょうか。

永久に、忘れないでいてくれるでしょうか。

心に刻んでください。

かってにあなたを置いて逝くこと、怒っていいです。

憎んでいいです。

でも、どうか、忘れないでほしいんです。


「けほっけほっ。」


咳が止まらない。

あぁ、まだ生きていたかったな。ディズの隣で。

身代わりになったこと、後悔はしない。

でも、生きたかったと後悔する。


愛してます。

あなたを、心から。

きっと、転生しても、あなたを忘れない――――――

いつかこの二人が出会った時からを書きたいな~と思います。

気長にお待ちくださるとうれしいです。

誤字・脱字の指摘も大歓迎!!

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