プロローグ
突然の紹介になるが、俺の名前は五行六腑。今をときめく、27歳会社員だ。まだまだ、現役で、街に繰り出しては、路上営業をバリバリやる営業マンってやつさ。
営業で活気があって充実してそうに見えるって?そんなわけ無い。毎月の営業成績は下から数えた方が早いほど。だから、こうやって笑顔を貼り付けて、お客さんを捕まえようと必死に追いかけている。まあ、要するに切羽詰まってるて、訳だ。
話は変わるが、俺には辛い過去がある。まあ、いまも辛いが。
小さい頃から、心臓が弱かった。中学生になった時、思い切って、心臓が弱いのに関わらず、スポーツをやれば、ゲキツヨ心臓になれると信じて、家族を振り切ってサッカー部に入部した。
だが、結果はどうだったか、レギュラーに、入れず万年ベンチ入り。芝を踏むのは練習と、事前試合のお気持ち表明だけ。それに、レギュラー陣をあっためる役割だけだった。まあ、それもこれも、おれの心臓が悪い。
走ると、胸が痛くなる。走るのもままならない。
あれよ、あれよと時はすぎ、結局、サッカー部も自分には向いておらず、高校生は帰宅部でゲーム三昧。大学はFラン卒、それから今の営業職に就いた。
サッカー部で培った盛り上げ力を評価された俺はある意味、適材だとは思うが、これしか持ち合わせていなかった。取り柄かと言われたらそうとも言えない。本来なら、チヤホヤされたい側だし、その場凌ぎでやっていただけだからだ。そんな営業職に就いてからも未だに心臓は弱いままだった。
この前も、お客さんを必死に説得する筈が、俺の心臓が弱いばかりか、ディフェンスをあっさり抜かれて、追いかけようと走るが、息切れして、そのまま街の彼方へとお客さんを逃してしまった。
何で俺ばっかり、こんな目に。本当なら今頃、サッカー選手でお金持ちになってて、マクラレーンにポルシェ、隣に超絶美人で尻と胸が最高の最愛の妻がいる人生な筈なのに、くぅー。
はあ、今日も、嫌々ながら営業し終わり、職場へ帰ってきたら、営業部長が俺を睨みつけていた。
すると、口が開かれる。
「はあ、今月のノルマ全然じゃないか、もっと客取れよ、お前。いっつも、おせぇんだから、今月くらい巻いてこぅな、まあ、二日でとれるかしんねえけど。そうなったら、お前が契約な?」
俺は目をギョッとする。
「いや、でも部長、ノルマは最低限で取れた筈ですが?」
「なに言ってんだよ、馬鹿か。先月の最低と今月は違えんだよ。動くんだよ、今月は!これだから、まったく、とりあえず明日までにある程度の契約してこい、今からモッカイ、外回りだ!」
「えっ、わっ、分かりました!行って参ります!」
俺は二つ返事をして、その場を後にした。こういう所も俺のいけないところだとは思っている。いつか、ぜったいに辞めてやる、何回か思ったことはあるが、今の生活から抜け出せず、給料もそこそこ貰えるから、理不尽なことを言われても、何だかんだやっていた。
そして街へ
お客さんの契約を交わしてる途中、
黒い猫が、ポケットに入れてた、俺の紐付きカードケースの社員証を口に咥えて、走って行く。街の喧騒を駆け巡り、通路の塀をひょいひょいと伝っていく。黒猫を必死に追いかけると工事現場のような場所へと、つく。黒猫はその中へと入って行った。
クソ、、こんな所まで入りやがって。だけど、社員証無くしたら部長になんて言われるか。
仕方ない入るか。
黒猫は建設途中の鉄骨をいとも簡単に登っていく。
「おいおい、どんだけ上がるんだよ、待てよ猫ぉ。」
追いかける俺に対して、黒猫はこちらを一瞥し、また鉄骨の階段を上がった。
小走りで息切れしながら登る。ようやく最上階、もう行き場がない猫を追い詰めた。
「よーし、よしいい子だ。さあ、捕まえた!」
ガコんっ
え?
捕まえようと、した瞬間、建設途中の鉄骨は俺の足場ごと崩れて、猫も俺と同じく宙に浮いていた。
ここは、最上階、落ちればただでは済まない。必死で猫を抱き寄せて、俺は地面に激突した。
瞬間、辺りは暗くなり全てが無にきした。
何処からか、光が差し込んできた。グラデーションのように辺りは輝いていく。
此処は……何処だ?
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