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少し不思議なミッション

「ふむふむ。なるほどなるほど…」


 マジで、まんまゲームだ。まずは自分のステータス、性格に合った職業を選択する。職業選択は、開始から10分経ったのち、その場で選択可能。選択したら、その職業に応じての服&武器が支給される。

 そして、敵を倒して経験値を獲得し、レベルを上げる。


 …これ、圧倒的にゲームガチ勢が有利でしょ。


 ………いや、でも、十六夜さんや如月さんはこの本読んだだけで最適解とか導いてそう…



 ただ、ゲームと大きく違うところは、操作する、ではなく自分が動く、というところだ。

 もちろん、ステータスによって筋力や素早さは変わるけど、元のステータスが高ければ高いほど初動は有利だ。


 私は、ゲームは結構やる方だし、運動神経も…まぁ、良い方だと思う。少なくとも、普通くらいはある。体力は無いけど。

 ただ、ゲームはエンジョイ勢だから…職業選択で手こずりそう…初期ステータスとか、人によってどの職が最適解なのかとかあるらしいし………

 まぁでも、私は成績上位を目指しているわけじゃないし。死ななそうで簡単そうな、私でも使いこなせそうな職業を探していこう。



「一時間終了まで、残り5分です。各自小屋から出る準備をしておいてください。開始から10分はお互い攻撃し合うことは出来ません。それでは、5分後にスタートして下さい。」



 死んだらその時点で終わり、観戦モードに入る。仲間…いや、クラスメイト同士でも攻撃は可能。経験値も手に入る。


 物騒な設定だなぁ。私は、むっちゃん、神無月さん、小望さん、十六夜さん、如月さん、しか信用出来ないよ…



「それでは、スタートです!」



 とりあえず……まずは小屋に籠っていようかな…。退学は嫌だけど、私は成績上位は別に狙ってない。最初はお互い攻撃は出来ないとは言っていたし、周りに人がいなくなるまで待ってから、外に出よう。そうすれば、序盤に殺されて赤が付く、ということもないだろうし。最低規定は超えることが出来るだろう。

 ……我ながら、思考回路が負け犬のソレだ。…でもいいんだ。私は実際負け犬だし。問題児にすら勝てないんだ。



 むっちゃん達と行動しないのか?って?………本に書いてあることを見る限り、これは個人行動の方が有利だ。

 チームを組むと、経験値は分ける羽目になってしまうし、回復薬もたくさん必要だ。仲間を助ける、という動作も必要になってしまうかもしれない。


 巨大な敵に立ち向かうことができないとはいえ、流石に、恐らくソロ有利なゲームだ。


 私は、皆の足手まといになりたくない。だから、チームなんて組めない。私は負け犬。みんなは花形。邪魔だけは、したくない。



 ギギギギ



「ッ!?誰!?」



 小屋で静かに本を読んでいたら、扉がゆっくりと開かれた。

 え、誰っ!怖い怖い怖い怖い!やめて!私を倒しても何も出ないよ!というかまだ10分経って無いから倒せないよ!

 やめて!開けないで────



「あ、みっちゃんいた。」


「……天使?」



 開いた扉から、ちょうど光が差し込んでいて、神々しい…まるで、私に天使が舞い降りたみたいだ…。

 いや、よく見たらむっちゃんだった。………じゃあ間違ってないか。



「私だよ!むつき!」


「あぁなんだ、天使か。」


「むつき!」



 頬っぺをプクと膨らませ、怒っているぞ!と言うことを顔で表現するむっちゃん。

 可愛すぎる…!



「むっちゃん、どうしたの?」


「探してたんだよ?みっちゃん。どこかに行っちゃったのかと思って…」


「探してた…?なんで?」


「そりゃあ、一緒に行動するためだよ、ふみふみ!」


「神無月さんもいたの!?」


「私もいるよ~つきっち。」

わたくしも、いますわよ。」

「…私もいるわ。」


「みんないたの!?」



 扉からじゃ、むっちゃんしか見えなかった……ところで、全員集合して、私になんの御用でしょうか…?



「みっちゃんは、もしかしてソロが良い?」


「え、いや、そういうわけじゃ…」



 一人行動する気満々ではあったけど。



「じゃあ決定だね!みんなで一緒にパーティーを組もう!」


「…でも、問題がありますわ。このゲーム、ソロ…もしくは少人数が有利ですわよね。」


「そうね。長期間ならまだしも、たった数時間という短い制限時間。明らかに、パーティー組む方が不利ね。」


「え、そうなの!?」


「あなた、この一時間何してたのよ…」


「寝てた」


「私も寝てたー!」


「緊張感ないわね……」



 ね、寝てた!?いやまぁ、確かにあの小屋にはベッドは置いてあったけども、それでも、寝るかなぁ、普通……いや、神無月さんと小望さんは良い意味でも悪い意味でも普通じゃ無かったか…



「睦月さんは、どう思います?」


「私も…少人数が有利だと思った。」



 やっぱり、そうだよね。時間少ないし、裏切りの可能性もあるし、経験値も一人当たりのもらえる量は少なくなるし。



「でも、私たちが一人行動するのは、もったいないと思ったの。あと、素直に寂しいし、心配だし。だから…二人のパーティーを、三つ作るのは、どうかな…?」


「二人…良いですわね。流石睦月さん。良案ですわ。」


「寂しいとか心配とかは思わないけれど、二人組は理にかなっているわね。私も賛成よ。」


「なんか難しくてよくわかんないけど、あたしもさんせーい!」


「右に同じく~」


「わ、私も賛成!良いと思う!」



 もう、本当に、流石むっちゃん。私は、六人か一人か、しか頭になかったよ……二人なら、経験値も1/2になるだけ。不意打ち対策や、数で押せたり、助け合える分メリットの方が大きいと思う。多分!



「二人組、どうやって決めるー?」


「無難にぐっちょっぱー!でいいんじゃない?」


「私は、それで良いですわ。」

「私も賛成よ。」

「角も立たなそうだし、私も賛成。」


「わ、私も賛成です。」


「よしじゃあ決まり~!」



 あわよくば、むっちゃんと同じチームになりたい……いやでも、むっちゃんに迷惑かけたら死んじゃう……いや、それは誰でも同じか……………

 あれ、二人組って、もしかして六人チームより私にとってはヤバいことない?邪魔になりたくない私にとって、一番ダメだったの、二人組じゃない?………

 何も考えずに「良いと思う!」って言っちゃったよ……



「それじゃあ行くよ~ぐっちょっぱーでわっかれっましょ!」



 §



「よっしゃー!私はアサシン!スピード特化型だぜ!!」



 ぐーちょきぱーの結果は、こうだ。


 私と神無月さん

 小望さんと十六夜さん

 むっちゃんと、如月さん


 そして、各々解散し、今に至る。


 因みに、神無月さんは自分でも言っていた通りアサシンに。アサシンとは、簡単に言うと、足が速い代わりに攻撃力と防御力が低い。ただ、スピードが乗るから攻撃力はなんだかんだ高い。


 スピードが速くても、普通に考えて敵の攻撃とか避けれないし、制御できないし、意味ないじゃん?と思ったのだが、この仮想空間では、スピード速いというより、自分以外が遅くなる、という感じらしい。

 だから、走った時に神無月さんが超早く感じるのは、神無月さんが高速で動いてるからではなく、神無月さん以外が遅くなってるから。

 例えば、マシンガンとかで銃を乱射されても、神無月さん視点ではゆっくりだから、避けれる。みたいな感じらしい。…いやまぁ、どの程度遅くなるのかは分からないから、銃弾が避けれるとは限らないけど。あくまで、例えだ。



 まぁ、グダグダと言いはしたが、結局、超スピード、ということだ。



「この服動きやす~い!」


「すごいかわいい!似合ってるよ!」


「そお~?ありがと!」



 アサシン姿の神無月さん、めっちゃ可愛い。動きの邪魔にならないような服。肌の露出が結構あるが、その分動きやすそうな恰好。全身黒で、ところどころに、恐らく短剣を置く用のポッケ?のようなものがある。

 そういうコスプレみたいで、本当にかわいい。



「ふみふみも!ものすごく動きづらそうだけど、和風な感じでかわいいよ!」


「えっ!?あ、ありがとう…」



 そういえば、私も服変化してるんだった!私の服装は…ザ・和だ。ものすごく長いスカートみたいで、動きづらい……


 私がアーチャーを選んだ理由は、至ってシンプル。前線に行きたくない、攻撃を喰らいたくないからだ。

 この仮想空間では、適当に矢を弓の近くに持っていくと装着されて、そのまま後ろに引くだけで真っすぐ矢が飛ぶ。本来なら力もめちゃくちゃ必要なのだろうが、ここでは指二本でも引けるくらいには軽い。


 そして何より、一番惹かれたのは、自動追尾付き!私が狙撃手ではなくアーチャーにしたのは、これが理由だ。狙撃手は、ダメージ量が半端じゃない代わりに、自動追尾という便利なものは付いていない。もちろん本場の狙撃と同じという訳ではないが、少なくとも狙う必要があるらしい。私は、絶対に外す自信しかないので、無理だ。



 アサシンの超スピードのように、アーチャーにも初期配布スキルはある。それは、

「スコープを覗いているかのように、超遠くまで見える」

 という能力だ。弓を構えた時に、自分の意思で出来る。普通に遠く見たいときとかにも便利だ。これのおかげで、射程が長い。つまり、後ろでちまちま撃ってるだけで味方に貢献できる、というわけだ!この世界の矢は、風の抵抗なんて無いかの如く真っすぐ飛ぶので、どの距離でもダメージは均一だ。もちろん、限度はあるけど。



「どうするー?どこ行くー?ダンジョン行くー?」


「ダンジョンは…まだ早いんじゃない?」


「そだよね~。まずはこの魔の森?とやらで雑魚狩りだよね!この職業での戦い方とか研究しなきゃだし!」


「いや、その、まずは武器を買わないと…」


「武器?」



 ……あ、そうだった。神無月さん、寝てたから何も知らないんだ。

 無能夏子と、寝てた神無月さん。……このパーティー大丈夫?



「うん。戦うと言っても、初期配布された武器だけじゃ厳しいでしょ?神無月さんの場合、短剣一本だけだし…。」


「…たしかに!よし!じゃあ早速武器屋に行こー!」


「……めっちゃ走りづらい…。」



 ロングスカートみたいな感じだから、足を前に出す度に邪魔。歩くときはなんとか少し邪魔程度だけど、走るとなると本当に面倒くさい。



「そ、れ、な、ら。私にマカセテ!」


「え?」



 そういうと、神無月さんは私の近くに来て、少ししゃがみ、膝当たりに手を添える。



「よっっと。」


「え、ちょ、えっ!?」



 そしてそのまま、私をひょいっと持ち上げてしまった。仮想空間ではすべてのステータスが微強化されているから、軽いものを持つかのように抱っこされる。

 これは…いわゆる、お姫様抱っこだ。

 いや、流石に恥ずかしいです…



「ちょっと暴れないでふみふみ!」


「いや、流石に恥ずかしいです!」


「ダイジョブダイジョブ。この世界なら、こんなことも楽チンだぜ!重くないよ!」


「いや確かに、重さも気になりますけど、何よりこの格好の恥ずかしさが―――」


「うるせー!主導権はこっちにあるんだ!行くぞー!!」


「噓でしょ!?え、本当にこのまま!?ちょ、待ッ」



 私の言葉なんて気にせず、ものすごいスピードで走る神無月さん。……ダメだ。猪突猛進すぎて、私の言葉なんて脳まで届いていない…。やりたいことをやる、神無月さんらしいけど……



「は、速い……」



 お姫様抱っこ中の私も周りがスローで見えるのかと思ったら、そんなことはなかった。


 ……このスピード、現実だったら息吸えなくてしにそう…あと、重力とかで頭も死にそう。



 1分くらいしか経っていないのに、神無月さんの超スピードのおかげで、もう街の門が見えてきた……あ、そういえば、門番さんに渡さなくてはいけないものが……



「そこのお前ら、止まれ!!」

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