短編後編 夏子家のバレンタイン(微エロ注意…?)
「よーし材料は完璧!作るぞ!」
「買い物でもう疲れちゃった……」
「私からはクッキーよ~。はい、フミ、ミナ、母からの世界一の愛よ♡隠し味は、世界一の愛情♡世界一あなたたちへの愛が込められているクッキーよ♡」
「ありがとう!」
「ハートが多い…気持ち悪いよ…」
「母に向かってその態度とは…いい度胸ね。」
「そーだそーだ!お母さんに謝れー!母親には感謝しろー!」
「も~、ミナは本当に良い子ねぇ。親の顔が見てみたい。」
「自画自賛じゃん。」
ミナは、マザコンだ。……いや、血は繋がってないから、本当のマザーではないんだけど…私以上に、娘をしている。
まぁ、この母なら、マザコンになっちゃう気持ちも分かる。私だってそうだし。
「別に、感謝してないわけじゃないからね?それこそ、女手一つで不登校の私を支えていてくれたんだから、大大大感謝してるよ。ただ、それはそれとして気持ち悪いだけ。」
「フミ、あなた………」
私は、思ったことはすぐに口に出すタイプだ。学校では抑えてるとはいえ、時々心の声が出ちゃったりするし。
娘の本心に、思わず涙案件かな?
「あなた、DV男の素質あるわよ。」
「女だけど。」
全然そんなことなかった。
「よ~し、あとは私は20~30分冷ましておくだけ~。フミは?」
「私もドーナッツは出来たよ。」
「じゃー、カップケーキにトッピングしよ~。まずは、お母さんの作ろ!」
「おっけー。じゃあ、カップケーキそのまま渡してくるね。」
「トッピング無しはお母さんが可哀そうじゃん!」
カップケーキのトッピングとしてあるのは、
ホイップクリーム
チョコレート
ナッツ
食べられる、ラメのようなもの
旗
イチゴ
だ。
「私と、フミから一つずつね?ちゃんと作ってね!」
「はいはい。」
「私は~、チョコをやって、その上にホイップクリームやって、ナッツと食べれるラメを置いて、上手くイチゴを乗せて、最後にフラグを立てる!完成!!」
「いや全部じゃん。」
ただの全部乗せじゃん。にも拘わらず、めっちゃ見た目綺麗。
なんでも出来るな、本当。
「フミは?」
「…ホイップにラメやってイチゴやって完成。」
「旗は必須だよ!ちゃんと立てて!」
「はいはい…」
テンション高いミナ、割と面倒なんだよな…かわいいけど。
いつもと違って、より子供っぽい。
やっぱ、ミナってギャップの塊だ。
「おかあさ~ん!!私の特製カップケーキ!食べて!」
「はい。私からも。ミナのには劣るけど。旗も食べてね。」
「え~!本当にいいのー?ありがとうフミ、ミナ。もちろん旗まで残さず食べるよ。」
「食べないでね!?」
私たちの会話は全部丸聞こえだったはずなのに、まるで今知ったかのような反応。きっと、ミナが喜ぶような反応にしてくれたのだろう。
ミナは、お母さんからの子ども扱いは、全く怒らない。なんで私はダメなんだろう…。
「うん!!二つとも最高に美味しい!本当にありがとうねぇ。」
「えー!私の方が美味しいでしょ!」
「…フミのカップケーキには愛という名の隠しトッピングがあってね?」
「そんなの入れて無い。」
「私の方が愛情たっぷりだよ!」
「…二つとも、100点だから優劣は付けられないかなー?」
……ミナは、お母さんの前では歳相応……いや、歳以下のガキ…子供みたいになる。それこそ、本当に小学生みたいな。かわいい。
それより、お母さんは優劣つけたがらないけど、別にいいよ、ミナの方が美味しいよ。って言って。それで解決じゃん。私だって、ミナに叶わないことなんて、百も承知だよ。
「まぁいいや。次はフミに作ってあげるよ。」
「じゃあ私は私に対して作るね。」
「は?そこは私に対して作れや!」
さっきまでの小学生が嘘のような言葉。
でも、怒っても声が高いのと、かわいいせいで全く怖くない。少しは声が低ければ怖かったかもしれないけどね。
「冗談だよ。ミナ、トッピングは何が良い?」
「全部乗せで。もちろん愛情もね?」
「いやー、それは難しいですねお客様。」
「別に形は綺麗じゃなくていいよ?」
「いや、難しいのは愛情の方。」
「…は?」
「いや、嘘嘘。ちゃんと愛情たっぷりで作るから。そんなゴミを見るような目しないで?」
声は高くても、表情は作れる。目が、怖い…。マジで、軽蔑の眼差しだったもん。何言ってんだこいつ?って顔だったよ、本当に。
「はい、完成。私優しいから。フミの嫌いなナッツは使ってないよ。あとチョコも。」
「ありがとー。」
チョコは、別に嫌いなわけじゃない。単体なら、まぁ好きな方だ。好んでは食べないけど。
ただ、チョコ味、となると、あんまり好きじゃない。あの微妙な苦みが嫌だ。
だから、チョコケーキは好きじゃない。それと同様、カップケーキに付くチョコも、そんなに好きじゃない。
それを完全に把握してるミナ、流石だ。
「私は、お望み通り全トッピング。そして、愛情を乗せたと分かるように。旗はハートの旗にしたよ。」
「…ありがとう。写真…あ、スマホフミの部屋だ…ちょっと取ってくる!」
そういうと、手を洗ってダッシュで二階へ上がるミナ。
え、そこまでしてこれ写真撮りたい?ミナがお母さんに作った奴の方が、圧倒的に綺麗で、美しいよ?…まぁいいか。食べよ。
「…美味しい…カップケーキ自体が甘いから、甘々……一つで十分かな…。」
私は、女のくせに甘いものを多くは食べれない。大好きなんだけど、大好きではあるんだけど……なぜか、多くは食えない。
「ん!このカップケーキ美味いね!思ったより味が付いてる!」
ダッシュで戻ってきて、写真を撮って、今は私の隣でカップケーキを食べている。
忙しいやつだな…
「……そろそろ2.30分経ったかな…ちょっと見てくる。」
ドーナッツはミナのキャンディーと共にお母さんに渡すって決められてるし、暇だな………部屋に戻るか。
§
「フミ~、入るよ~」
「……どうぞって言う前に入るなら、それ言う必要なくない?」
ミナは、このように、言いながら入ってくるときと、普通に何も言わず入ってくるときがある。どっちも最悪だ。
私の部屋なんだから、せめてノックくらいはして欲しいんだけど…
「私のキャンディー作り終わったよ~。」
「おっけー。じゃあ今行く。」
「あ、ちょっと待って?はいこれ。」
「……何これ?」
ミナの手には、四角の中くらいの箱。これは……チョコ?丸い、あの…トリュフチョコだ。トリュフに似てるからつけられたアレ。
「事前に買っておいたトリュフチョコ。一緒に食べよ?」
「私へのバレンタインチョコ?」
「半分は正解。もう半分は、私へのバレンタインチョコでもあるから。」
自分で、自分へのバレンタインチョコを買うって……非モテ男でもやらないよ…?流石に。虚しいだけだし。
「お母さんに渡すの、後回しでいいの?」
「お母さんは今昼寝中だから、これ食べてからでいいよ。」
「…分かった。ありがたく貰うよ。」
トリュフチョコは、計6個。恐らく、三個三個で分けるということだろう。
「あ、待って?《《お姉ちゃん》》」
「……また、何を企んでるの?」
怪しいと思ったんだよね。急に、こんなトリュフチョコなんて。
事前に用意してたってことは、前々から何か作戦を立てていたということだ。
「お姉ちゃん、どれ食べたい?」
「……じゃあ、これ。シンプルイズベスト。」
「私もそれちょうど食べたかったんだよね~。じゃあ、半分こしよう。お姉ちゃん、それ、口に入れて、溶けないうちに私に口移しして?」
「………無理だけど。」
…だから、口に入れてもすぐに溶けることのない、かつ、受け渡ししやすい丸型のトリュフチョコにしたのか……関係あるかは知らないけど。
「えー、わたしもたべたかったのにー。」
これは、明らかに嘘だ。隠そうともしてない。勝ちを確信している…?何故だ……
「いいよ、ミナに譲る。」
「これは半分はお姉ちゃんへのバレンタインチョコでもあるんだから、遠慮しないで?」
「いやいや、大丈夫だって。」
「お姉ちゃん、私からのバレンタインチョコ、受け取ってくれないんだ……」
……そういうことか。
お姉ちゃんとして、受け取らないわけにはいかない。ただ、きっと、このまま一つずつ譲っていっても、「あ、それ、ミナも食べたかったんだー。」という詠唱が始まるに違いない。それを六回繰り返したら、私の詰みだ。
「……じゃあ、私はこっちの食べるから。」
「あ、それ、ちょうど私も食べたかったやつだー。」
「………」
「私の口内はピッカピカ。虫歯もないし、超綺麗!」
「!だから、最近よくウガイのやつしてたのか!!」
「せいか~い。少なくとも、今の私はお姉ちゃんレベルで綺麗。」
……少なくとも、一週間前からは考えていた作戦、ということか…何てこと考えてるんだこのド変態ボケナスは…気持ち悪すぎるだろ…
「せめて、せめてチョコは……零しそうじゃん…」
作戦通りにいかないこともある、ということをミナに身をもってしらせてやろう。
零しそう、これは、ミナのテクニックでも、私がクソ下手だったら零す可能性はある。ある限りは、勝てる!可能性をゼロにするのは、厳しい。というか、無理だろう。そのチョコが、冷凍とか、完全に固まってる、とかでもない限りな!
そして、その可能性はさっき触った時に冷たくなかった。その時点で、ない。
「下にティッシュ敷いたり、色々方法はあるけど……」
「零してる時点で、アウトだよ。流石に見た目的にも、衛生的にも、色々と……」
これなら…勝てる!
「口移し自体が嫌なわけではない、と。」
「うん……」
口移しが嫌なのではなく、あくまで零してしまう可能性があることが嫌。
この場合、その可能性をゼロにしない限り、私の勝ちだ!!
私はお姉ちゃんだぞ!!いつまでも簡単に勝てるような相手だと思うなよ!!
「ふっふっふ……受け攻めいくつか予想していたが…そりゃ悪手だろ、お姉ちゃん。」
「なに!?」
「あ~!ちょうど、運よく私が作ったキャンディーがあるねー?いやー、本当に偶然だナー。」
「!?昨日の夜、キャンディーに決めたんじゃ……だから、それが作戦のはずは……昨日の夜思いついたのか…?」
「昨日の夜決めたかのように思い込ませたんだよ!これでチェックメイトだ!!」
キャ、キャンディーを零すかも……いや、これはあまりにも苦し紛れすぎる。そんな醜い真似をするなら…自ら負けを認めた方がマシだ。
「……私の負けだ。分かった。キャンディーの口移しなら良いよ。」
「あ~あ。最後に、「口移しをすること自体が嫌なわけじゃない」に対して同意しなければよかったのにねぇ…。まぁ、それはそれでもまだまだ攻め方はあったんだけどね。」
「因みに、なんで口移しがしたいの?」
「うーん……なんとなく?興味本位、的な?」
「………半分本当、半分嘘だね。」
「え、なんで分かったの?」
「お姉ちゃんとしての勘、だよ。」
§
「じゃあ、早速やろー。」
「本当にやるの…」
あれから、お母さんにドーナッツとキャンディーを渡し、みんなで一緒にトリュフチョコを食べて、今に至る。
「立ってやるの?」
「うーん…ベッドに座ってやろ。」
「…またなんか企んでるでしょ。」
「もちろん!じゃあ行くよ~!」
ミナが自分の口にキャンディーを含み、そのまま私にキスをする。そして、いつものように舌が来て、その舌と共に、スムーズに、キャンディーが来る。
それを、舌で自分の方へ寄せる。
「……思ったよりも簡単だね。」
「なんかつまらなーい。」
いつもよりも超甘いキス、って感じだ。むしろ、気持ちよさは半減している気がする。
「じゃあ、次はお姉ちゃんがやってー。」
言われた通りキャンディーを口に含み、そのままキスをする……がキャンディーをほっぺの方にやってしまったから、ちょっと難しい。
「ちょ、いったん待ッ」
キャンディーの位置を舌の上へ動かすために、いったんキスを中断したら、離れた瞬間にまたミナがキスをしてきた。
そのまま倒され、ミナが上から覆いかぶさるような形になる。
またか。なんでいつも私は下なんだ。
そのまま、ミナは取りずらい位置にあるキャンディーを必死に取ろうと、さらに深いキスをする。
キャンディーのせいで唾液を多く分泌するから、ものすごく激しいキスをしているように感じる。……いや、実際してるか。私、息結構ギリギリだし。
「ぷはっ……お姉ちゃん、はぁ、と、取りずらいんだけど…。」
「はぁ、はぁ……いや、だから、私が舌の上にキャンディーを持ってこようとしたんだよ、そしたら、ミナが強引にキスしたんじゃん。」
「よしワンモアプリーズ!」
私の言うことは何も聞かず、また強引に上からキスをしてくる。
今回のキスは、探すような動作はなく、真っ直ぐ一直線にキャンディーへ来た。そのままキャンディーを取る……のかと思ったら、そのままキャンディーを舌で舐めている。
キャンディーに負けているように感じて、なんとなくムカついたので、ミナの舌を強引に私の舌と絡ませる。いつも、ミナがしているように。
すると、ミナも、キャンディーではなく、私の舌と絡ませてくる。
…なんとなく、キャンディーに勝った気分だ。キャンディー<<<私の舌!
「んっはぁ、はぁ、……お姉ちゃん、積極的すぎ…」
「キャンディーよりも私の舌の方が良かったでしょ。」
「なにそれ…めっちゃムラムラしてきた…」
「…襲わないでね?」
「黙れノンデリボケナス。マジで本当に空気読めないよね。けーわいってやつだよ!KY!」
ミナがめっちゃ怒っているが、私には、別のことが気になって仕方がない。
ムラムラ…なんか、とてつもなく大事なことを忘れているような……
「そういえば!《《なんでもひとつ》》……あ、ヤベッ」
「んー?……なんでもひと…あっ」
「「忘れてた…………」」
「…………お姉ちゃん♡」
「……流石にダメだよ?ミナ。ミナ?返事して!お願いだから!ミナーーーーーーー!!!!!」
こうして、波乱のバレンタインは、幕を閉じた。
この先、文月は、どうなったのか。ミナは、何をしたのか。
その答えは、誰も、知る由もない――――




