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御堂二三男58歳男独身春の訪れ

とりあえず、会議は終わり。

私は客室に案内された。

風呂に入りたいところだが、この世界に風呂はなく。

暖かいお湯を洗面器に入れ、メイドが客室に運んできてくれた。

18歳でマーガレットという名前だった。

もちろんマーガレットもメイドっぽい服にブルマ姿だった。


「勇者様、お身体をお拭きします」

とマーガレットは言った。


「……身体を拭くのは自分でするよ」

と私は断わった。


「……それでは私が叱られます」

とマーガレットは言った。


「そうなの?」

と私は尋ねた。


「私は勇者様のお世話をするのが仕事です。お身体をお拭きしたり、お召し物を着せたり。それができないのなら、私をお払い箱です」

とマーガレットはうつむいた。


そうか……。

何気ない気遣いや、優しさが、この子の仕事を奪ってしまうのか?

自分の考えの至らなさが、少し嫌になった。


「そうか、そうか。じゃあ……、お願いしようかな。

どうすれば良い?」

と私は尋ねた。


「そのまま、お立ちになっていてください。

私が全て致しますので」

とマーガレットは微笑んだ。


「じゃあ、任せるから。

座ってとか、遠慮せずに、立ってとか指示は出してね」

と私も微笑み返した。


「はい」

とマーガレットはうつむき、口角を上げた。


マーガレットは、手早く私の服を脱がせていく。

恥ずかしい。

私は今まで女性と付き合ったこともなく、

ましてや、服を脱がされたことなどもない。

ただ、マーガレットは仕事でしているだけなのに、

緊張で身体がこわばる。


「勇者様、緊張されておられるのですか」

とマーガレットは尋ねた。


「ははは。

そうなんだよ。女性に服を脱がされた事がなくてね。

恥ずかしいやら、緊張するやらで」

と私は笑った。


「私も男性の服を脱がせるのは、初めてで緊張しております」

とマーガレットはうつむいたまま言った。

その手は微かに震えていた。


そうか……、

この子も緊張しているのか。

なにか話をしないと。


「メイドはいつからやってるの?」

と私は尋ねた。


「13歳の頃からです」

とマーガレットは言った。


「じゃあ。もう5年になるんだね」

と私はマーガレットの目を見た。


「そうですね」

とマーガレットは言った。


私は考えた。

ここで普通なら、

家族はとか……、

なんでこの仕事をしてるのとか……、

そういう事を聞く。


しかし、それは悪手だ。


メイドと言えば、

基本的には、

孤児だったり、

親に売られてとか、

弟が病気でとか、

そういうケースが多い。


そんな事を聞き出しても、

なにの利益にもならない。


だったら、

答えは一つ。


「マーガレットは気の使い方が上手だね」

と私は言った。


「えっ……」

とマーガレットの動きが一瞬止まった。


「……どうかした?」

と私は尋ねた。


「……いえ、そんな事を褒められたのは初めてで、戸惑いました」

とマーガレットは、恥ずかしそうにうつむいた。


「嫌じゃなかった?」

と私は尋ねた。


「いえ。とても嬉しいです」

とマーガレットはぎこちない笑顔を見せた。


そうか……。

マーガレットは、

というか、

この世界で、

メイドというのは、

あまり褒められる仕事ではないのだろう。


私は、胸がつまり、言葉が続けられなくなった。


そうこうしているうちに、

淡々とマーガレットは作業を進めた。

身体はキレイに拭かれ、さっぱりとした。


私は眠りにつく。

状況を整理するのには、寝るのが一番。


……

翌朝、マーガレットが起こしにくる。

賢者ムスメサンが呼んでいるというのだ。


私は朝食を食べ、ムスメサンに会いに行く。


さて、今日はなにが起こるのだろうか……



……

王宮内


御堂二三男が、朝食をたべ、ムスメサンに会いに行こうとしていた時、

パンをくわえて王宮の庭を走る一人の女性がいた。


彼女の名は、トミーコ。中級貴族の令嬢にして38歳未婚。

パン食いマラソンの国内記録保持者であった。


事件は御堂二三男が、道を間違え、王宮の庭にでた瞬間に起こった。


(ばーん)


御堂二三男とトミーコはぶつかり、お互いにふっとんだ。


……

王宮内をムスメサンに会いに行こうと歩いていると、

突然なにかにぶつかり、身体がふっとんだ。


「いてててて」

と私は辺りを見渡す。


そこには、血のついた女性がいた。


私はあわてて駆け寄り、

「だいじょうぶですか」

と声をかけた。


「あぁすみません。ぶつかってしまった」

と女性は腰をさすっている。


「血がついています」

と私は指を指す。


「血……、これはジャムです」

と女性は服を伸ばしジャムを見せる。


ほのかに、トマトのような匂いがする。

トマトのジャム??


「お怪我はありませんか。人を呼びます。あぁでも。私昨日ここに来たばかりで」

と私は言った。


「もしかして、あなたが勇者様?」

と女性は言った。


「そうです。申し遅れました。私、御堂二三男と申します」

と私は深々と頭を下げる。


「ご丁寧にありがとうございます。私はトミーコです」

と女性は言った。


「トミーコさんは、お急ぎなのでは?」

と私は尋ねた。


「いえいえ。今はパン食いマラソンの練習をしていたのです」

とトミーコは言った。


「パン食いマラソンというのは?」

と私は言った。


「パン食いマラソンは、女性に人気の運動で、パンをくわえて、走ると幸運になると伝えられています。私は13歳からこの運動を始めて、今年で25年目。

これでも、パン食いマラソンの国内記録保持者なんですよ」

とトミーコは笑った。


「それはすごい。そんな方とお近づきになれるとは、光栄です」

と私は言った。


「いえいえ。勇者様も、昨日さっそく大活躍なされたとかで、父が興奮して2時間ほど語っておりました」

とトミーコは恥ずかしそうに言った。


「あぁあの場に、トミーコさんのお父上もおられたのですか」

と私はうなづいた。


「はい。おりました。せっかくですから、お茶でも致しませんか?」

とトミーコは微笑んだ。


「実は、今賢者ムスメサンに呼ばれておりまして、それで迷っているところなのですよ。

お茶をしたいのはやまやまなのですが」

と私は頭をかいた。


「それなら、私が案内しましょう」

とトミーコは胸を叩いた。


私は考えた。

この申し出は、彼女にとって不利なものではないか。

だいじょうぶそうだ。


「それはぜひ」

と私は言った。


それから、トミーコさんに案内され、ようやく賢者ムスメサンのところへたどり着いた。


「おじさま。勇者様をお連れしたわ」

とトミーコは言った。


「トミーコが連れてきてくれたのか。それは助かった」

と賢者ムスメサンはトミーコの肩を叩く。


「お二人はお知り合いで?」

と私は尋ねた。


「賢者ムスメサンは、従弟なの」

とトミーコは笑った。


「勇者殿、トミーコも同席してもよろしいかな」

と賢者ムスメサンは言った。


トミーコと目があう。

「私は問題ありません」

と私はうなづいた。


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