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気が付けばニチアサ世界に紛れ込んだみたいです  作者: 濃厚圧縮珈琲
第一部 第一楽章 知らない世界
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買い物と一波乱



 「~♪」


 前を歩くみちるは機嫌よさげに鼻歌を歌い、葉の緑も混ざってきた桜並木をのんびりと進む。


 一方でアリサは、そんなみちるの斜め後ろの位置をキープしながら、やはり舞い散る桜の花に気を取られ、チラつく過去に心を奪われかけていた。


 「綺麗よね、ここの桜並木。小さい頃から毎年ずっと見ていたけど、今年も見れて良かった」


 「……そうですか」


 アリサは短く答えるだけで、それ以上は何も言わなかった。


 しばらく二人の間を沈黙が包む。


 風がふわりと吹き抜け、舞い上がった桜の花びらが二人の間をすり抜けていく。

 みちるはほんの少しだけ振り返ったが、アリサの視線は桜の向こう、遠い何かを見つめているようで――。


 ――そういえば、家族会議の時に一瞬だけ視えたあの記憶………アリサの過去よね。


 「……」


 みちるは何か言いかけて、結局やめた。

 その代わり、ほんの少しだけ歩くペースを落とし、アリサの横に並ぶ形で歩き出す。


 「……さ、行こ。早く行かないとお店閉まっちゃうし」


 「あ……はい」


 アリサがわずかに歩調を合わせる。


 再び二人は無言のまま、でも不思議と嫌な気はせず静かに桜並木を歩いていった。






 桜並木を抜け、しばらく歩くと人通りと車の多く行き交う道へと差し掛かり、さらに歩いた視界の先にショッピングモールが見えてきた。


 ガラス張りの大きな建物。駐車場は平日にもかかわらずそこそこの車で埋まっていて、正面入り口の前は家族連れや学生たちで賑わっていた。


 「ここがうちの街のショッピングモール。まぁ、そんなに大きいってわけじゃないけど、必要なものはだいたい揃うのよ」


 みちるが胸を張るように説明する。

 一方のアリサは、立ち止まってじっとモール全体を見上げていた。


 「……大型複合施設、入口付近は視界不良区域多し。死角多数。人の流れ──、密集率やや高め……か」


 小声で呟き、自然と体の力が少し強張っていく。


 「何ブツブツ言ってるのよ、怖くないわよ?」


 みちるが眉をひそめる。


 「……初めてなので、状況把握をしています」


 「ああそっか。アリサってこういう所、来たことないんだっけ」



 アリサは小さく頷き目を細めたまま、行き交う人々を注意深く観察していた。


 「心配しなくても大丈夫よ、警備員のおじさんもいるし同い年くらいの子もいっぱいいる。何かあったらすぐ逃げちゃえばいいのよ」


 みちるは笑いながら、アリサの手首を軽く引いた。


 「行くわよ、まずは文房具屋さん!」


 「……了解しました」


 二人は自動ドアをくぐり、モールの中へと入っていく。


 途端に、外の静けさとは打って変わって、照明のまぶしさと様々なアナウンス、人々の話し声が入り混じる空間が広がっていた。


 正面に見えるのはスーパーマーケットだろうか、売り場入り口には山積みになった野菜や果物が並び買い物客を出迎えている。


 さらに悩ましいのが店の奥から美味しそうな香りが漂ってくる事。自制心を持たねばふらふらと匂いのする方へと足が向いてしまいそう……。



 「ッ!」


 脳裏に電流が弾けるのを感じ、アリサは立ち止った。


 この世界に来てから初めて悪意感知に反応があった。気配を感じた方向を見るも人が多すぎてぱっと見た程度では誰が悪意の発信源なのか分からず、思わず目を細めてナノマシンによる索敵を行おうとする。



 「アリサー!迷子になるわよ!こっちこっち!」


 いつの間にか遠くに離れてしまっていた自分を呼ぶみちるへ手を挙げて応え、悪意反応は気になるもののみちるを追ってその場を後にした。




 通い慣れているのか、迷いなく迷路のようなモールの中を歩くみちるを見失いなわないよう、足早に彼女の隣をキープする。


 「文房具屋さんはこっちよ、ほらアリサ、ついてきて!」


 「……了解です」

 

 アリサはさっき感じた悪意感知がまだ頭に引っかかっていたが、みちるを心配させぬよう何事もなかったように淡々と歩を進める。目は絶えず動かし周囲を警戒しつつも、歩幅を乱さない。


 やがて、黄色い看板が目立つ文房具店に到着した。


 「到着!さあ、いろいろ見ようっと~♪」


 みちるは早速、カゴを手に持つと店内を歩き出した。ノート、ペン、ファイル、付箋……どれもカラフルで、見ているだけで楽しくなってくる。


 「新学期だから、新しいノートと……あ、マーカーも欲しい!」



 アリサはきょろきょろと店内を見回し、ふと足を止めた。


 「……この店舗は物品の種類は多いが、同じ機能なのに何故価値に差を付ける必要が?」


 「え?……そうね、それだけ品質が良くて長持ちするからかな。あとは可愛いから!」


 みちるは笑いながら、目の前の陳列棚からキラキラとデザインされたシャープペンを手に取る。


 「これ可愛いな~!アリサはどんなのが好き?」


 「……どんなのですか。……用途に応じてコストを抑え無駄な機能の少ない物を選ぶのが最適かと」


 「はぁ……ほんとにあんた、おしゃれとは無縁の世界に生きているのね」


 みちるは呆れ顔でため息をついたが、それでも微笑んでいる。


 「ほら、せっかくだし、アリサも何か一つくらい買えば? 新しい生活だし!」


 アリサは一瞬黙り、目の前に並ぶ商品棚をじっと見つめた。

 色とりどりのノートやペン、何種類もある消しゴム……どれも彼女にとっては未知のものばかりだ。



 ……新しい生活、か。もし自分がこれらを買うならやはり低コストで品質の良い物に限る。

 薄くナノマシンを展開させ、並んだ商品の材質から品質、不良の有無を検品しより良い物を選ぶ。



 そうしてアリサが選んでいると、突如かかってきた祖母からの電話に対応していたみちるが、素っ頓狂な大声を出した。


 「はぁぁぁぁっ!?どうやって……!……ええ、おばあ様の事だからそう言うと思っていました……。はい、二人分購入します……」



 電話を切りぶつぶつと何かつぶやいているみちるを、首をかしげてアリサが見つめる。

 大きなため息をついて、心を落ち着けたのか咳払いをしながらみちるが口を開いた。


 「……こほん、アリサ、あんたも春休み明けから同じ学校に通うみたいよ……良かったわね」


 「……?」


 一体どうやったのか、マダムはこの短期間の間でアリサの転入手続きを終えていた。つまりは始業式の日から咲良アリサは中学二年生として快晴学園へと通う事となる。



 「……ありがとうございます、感謝します」


 「帰ったらおばあ様にお礼言わないとね……あと事情聴取も」


 みちるは苦笑しながらも、新しいペンケースをカゴに入れ、あちこち回りながら必要なものを揃えていく。


 途中からアリサが買い物かごを持ち、後ろから静かについて歩くだけだったが、次々とかごに積まれていく文具の量に冷汗を流し、学校へ通うという事の大変さを実感する事となった。





─────────────────────────────────





 「ふぅ~、よし、買い物終わり!」


 みちるがカゴをカウンターに置いてレジを済ませると、アリサがさっと袋を受け取って持つ。


 「……荷物は私が」


 「ありがと、助かるわ~♪」


 みちるは上機嫌で振り向くと、腕を組んで辺りを見渡した。


 「さてと……アリサ、お疲れでしょ。休憩していきましょ?」


 「……別に問題はありませんが」


 「休憩は必要なの。ほら、あそこ!」


 視線の先に、モールの一角にあるガラス張りのおしゃれなカフェが見えた。木目調のテーブルと観葉植物が置かれた店内は、女性客が多く賑わっている。


 「ちょっと混んでるけど……まあいいか。行こ!」


 店員に案内され、二人は角のソファ席に座った。


 「私、ストロベリーパフェにしよっと!」


 メニューを見てすぐに笑顔で決めるみちる。


 「アリサは?」


 「……私は」


 夢に見たデザートを食べるチャンス。そう少し考え込むが、メニューの写真と値段をしばし見つめ、お金を持たぬアリサにはみちるに負担をかけるわけにもいかず、最終的に下した結論は………。


 「……アイスコーヒーで」


 「やっぱり、そういうの頼むと思ったわ~」


 みちるはクスクス笑って、店員さんを呼ぶ。


 注文の品が届くと、みちるは目の前のパフェを見て早速目を輝かせる。


 「わぁ~っ、美味しそう~♪」


 一方アリサは、無言でアイスコーヒーのストローを手に取り、そっと一口。


 「……ふむ」


 ほんの少しだけ目を細める。


 苦みと共に、キリリとした強い酸味、深いコクが舌の上に広がっていく。ホットコーヒーとはまた違う味わいにアリサはしばし口の中の感覚を分析していた。


 「なーに?また脳内で食レポしてる?」


 みちるがにまにまと笑う。


 「……はい、しかしマスターの淹れるコーヒーに比べると味と香りが著しく劣」


 「はいそこまで!……おじい様のコーヒーを褒めてくれるのは嬉しいけど、それ以上はダメよ」


 澄ました顔でパフェをすくってぱくりと食べるみちる。


 甘酸っぱいイチゴの酸味とバニラアイスの芳醇な甘い香り、柔らかく泡立てた生クリームが口に広がり、思わず幸せそうに笑顔を浮かべる。


 「……でさ」


 みちるはスプーンを持ったままアリサを見た。


 「学校、ホントに行くんだね。なんか不思議な感じ」


 「……私も、正直、実感はありません」


 アリサは淡々と答える。


 「……でも、柚木あかりがいる場所です。私にとっても、必要なことなのでしょう」


 「柚木あかり……?嘘、知り合いなの?」


 「はい、昨日桜並木で図書館まで案内してもらい……私を友達と、言ってくれました」


 みちるは何となく複雑な気持ちになりパフェへとスプーンをざっくり貫くように突き刺した。


 「……ふーん。へぇ~……」


 「……??」


 急に不機嫌そうな顔になったみちるに、また何かしてしまったかと首をかしげるアリサだった。






 その後、急にヤケ食いでもするかのようなスピードで不機嫌にパフェを食べ進めるみちるに対し、パフェの減る量に合わせて少しずつアイスコーヒーを飲むアリサ。


 カランッと空になったパフェグラスにスプーンを置くと同時にアリサもコーヒーを飲み干し、みちるへと丁重にお礼とお辞儀をする。


 「さ、行きましょ!帰ったらお店手伝わないと」


 ツンとどこか棘のある言い方で先に席を立ったみちるを両手いっぱいの荷物を素早く回収し持ち上げ追いかける。


先に席を立ったのは、アリサを待たせないように先に会計をする為だと追いついた時に悟り、背を向けている彼女へ心の中で礼を言った。



 窓の外に見える日の光も傾き、夕方の赤い温かな日差しがモールを照らしている。彼女の言う通り早く帰らないと夕方のピークに間に合わない。


 モールの出口へと向けて二人で歩いていると、再び悪意感知がアリサの脳裏に電流を走らせる。


 今度はかなり近い……!


 念の為みちるに嫌な予感がすると伝えようとした矢先だった。



 「キャー!!!」



 女性の金切り声が上がり、人々の騒めきと荒々しく走る足音がこちらへ近付いている。


 ガタイの良い男が右手に刃物、左手にカバンを手に人混みを刃物で威嚇し道を開けさせながらまっすぐこちらへ突っ込んでくる。悪意感知はその男からビリビリと感じていた。



 「邪魔だ!どけぇ!!!!」


 「ぁ……え!?」


 みちるも最初の金切り声を聞いて立ち止まり、振り返ってしまった故に正面から迫る男の気迫に圧されて足が竦みその場から動けなくなってしまった。


 男との距離が5mに迫った時、みちるには周囲の音が消えたように感じ、さらに時の流れすらゆっくりに感じた。


 そして振りかざされる刃物に自身の過去、目前に突き出された蜘蛛を思い出してしまい、強い拒絶の感情が胸の奥から溢れ出そうになり、あの時と同じように身体が熱くなった。


 こんな人の多いところであの時のような魔法を使ってしまったら私は……!


 ドクンッと鼓動が強く脈打つ、あと3m……。覚悟を決めないと隣のアリサまで……!


 両手を男へと突き出すように動かそうとした、その時にみちるの視界に綺麗な銀髪が躍った。



 「ふっ……!」



 次の瞬間、早送りでもしたかの勢いで男が床に叩きつけられていた。


 固いはずの床の塩ビタイルにひび割れすら入り、叩きつけられた男は「がはっ!?」と息を肺から絞り出されたような悲鳴を漏らし、気を失っていた。


 周囲の喧騒が嘘のように静まり返り、モールの案内アナウンスとBGMだけが響く異様な空気が張り巡らされた。


 「かっ確保ー!!」


 呆気に取られていた警備員達が我に帰り、倒れた男を取り囲み押さえつける。その光景を見て時が動き出したかのように一気に群衆が色めき立った。


 「…………あ、あぁ」


 みちるは全身から力が抜け、その場へペタンと座り込んでしまう。彼女は二重の意味でも助かっていたのだ。極度の緊張からの解放で涙すら滲んでくる。


 「……お嬢様、お怪我はありませんか?」


 相変わらず、何の感情も移さない無表情の顔。こんな事をして(手柄を挙げて)おいても眉一つ動かさないんだから……。


 「ぅ、うん……ありがと……う……」


 きゅっと手を引かれ立ち上がらされる、その温かな手の温もりに遅れて恐怖がやってきてみちるの視界を涙で滲ませ、ぽろぽろと涙を零れさせる。


 「あれ……?あれぇ…………?」


 止めようと思えどまるで言う事を聞かない、次第に声も震え呼吸すらもままならず、嗚咽が漏れだしてしまう。


 そんな私を見てアリサはオロオロと困ったように周囲を見渡して、何を思ったのか優しく抱きしめてくれた。


 もう我慢も限界だ……。


 みちるは周囲をはばからず、アリサを抱き返して号泣し、彼女の服の肩を涙で染めた。


 

 アリサはそんなみちるを慰めるように時々ポンポンと優しく背を叩き、ひったくりにあった被害者の女性が礼を言いに来てもみちるを抱いたまま、言葉少なく「……当然の事をしたまで」とだけ告げた。


 まもなく到着した警察への聞き取りもずっとみちるがくっついたまま受け、ようやく解放されたのが保護者であるマスターが慌てて飛んできてからだった。






─────────────────────────────────





 ショッピングモールからの帰り道、マスターは何度もアリサへお礼を言い続けていた。


 本当は泣きじゃくるみちるを負ぶって帰ろうとしていたが、彼女がアリサの腕を離そうとせず、代わりにアリサが涼し気に持っていた大量の荷物を両手に抱え、その重さに目を白黒させていた。


 「本当に、二人が無事で良かったよ……警察から電話が来た時は私が倒れてしまいそうだったからね」


 そう言うマスターの目は真剣で、どれほど彼が心配していたかを感情に疎いアリサでさえ感じ取れた。


 「……マスターとマダムからお嬢様の事、頼まれましたから。それに、アレ程度なら口ほどにもありません」

 そう言って、自分の背中に背負った泣き疲れて眠るみちるを一瞥した。



挿絵(By みてみん)


 すっかり日も落ちてしまい、街灯に照らされた桜並木をマスターと二人歩く。まもなく喫茶店が見えてきて、その玄関の前には、心配そうにこちらを見つめるマダムの姿があった。


 「おかえりなさい……!」


 駆け寄ってきたマダムは、まずマスターの両手いっぱいの荷物を見てびっくりし、それからアリサの背中で眠っているみちるを見て、目を見開いた。


 「みちるちゃん……!」


 マスターが荷物を玄関先に下ろしながら、安心させるように言う。


 「大丈夫だよ、ケガひとつない。ただ……少し怖い思いをして、疲れて眠ってしまったんだ」


 「……そう……本当に、無事で……」


 マダムは胸に手を当て、ほっと大きく息をついた。その目には、うっすらと涙が光っていた。


 そして、アリサの方へと視線を向ける。


 「アリサちゃん……本当にありがとう。あなたがいてくれたから、うちの子は無事で帰ってこられたのよ」


 「……私は、当然のことをしたまでです」


 アリサは静かに頭を下げた。


 マダムは感極まったようにアリサをしばらく見つめ、優しく微笑むと、その手でそっとアリサの肩を撫でた。


 「……ありがとうね。本当に……ありがとう」


 その温かな手のひらの感触に、アリサは一瞬だけ目を細めた。


 「さあ、まずは中に入りましょう。みちるを休ませないと……」


 「……はい、お部屋までお連れします」


 アリサは背中のみちるをそっと抱き直し、マスターとマダムに続いて玄関の中へと入っていった。

 

 家の中の温かい灯りが、三人を優しく包み込んでいく。






 玄関を抜けると、先にマスターが荷物を抱えてリビングへ向かい、マダムはすぐにアリサの背中を気遣うように見上げた。


 「アリサちゃん、重いでしょう?私が代わりに……」


 「……いえ、大丈夫です。お任せください」


 アリサはそっと首を横に振り、そのまま階段の方へと視線を向ける。


 「ええ……お願いね」

 

 マダムはその後ろ姿を、少し涙ぐみながら見送った。


 アリサはゆっくりと、しかし確実な足取りで階段を上がっていく。

 背中で眠るみちるは、深い呼吸を繰り返しながら、時折ぎゅっとアリサの服をつかむようにしていた。


 ……本当に、今日は大変な一日でしたね。


 そんなことを考えながら、ドアにかけられた<みちる>のネームプレートを確認し、そっとドアノブを回す。


 部屋の中はカーテンも閉まっている上に、外の日も沈み切って薄暗く、廊下から差し込む光だけが室内をぼんやりと照らしていた。


 アリサは慎重に歩みを進め、みちるのベッドのすぐそばでそっと膝をつく。


 「……お嬢様?」


 声をかけても返事はない。完全に夢の中だ。


 アリサはゆっくりと両腕からみちるの体を解き、ベッドの上へ優しく寝かせた。

 その瞬間、みちるが小さく呻いて、アリサの腕をぎゅっと握った。


 「うぅ……アリサ……」

 

かすかな寝言だった。


 アリサはその顔をじっと見つめ、しばらく動かなかった。

 そして、静かに囁く。

 

 「……大丈夫です。もう、何も恐れることはありません」


 握られた手をそっと外し、布団をかける。

 眠るみちるの表情が、ほんの少しだけ安らかになった気がした。


 アリサは立ち上がり、ドアの方へ向かう。その手がドアノブにかかる直前にもう一度だけ振り返り、みちるの顔を眺めて深く息をつく。



 そして音をたてないように部屋の外へ出ると静かにドアを閉め、部屋は再び静寂と暗闇に包まれた。






以上、お出かけ回でした。


アリサの身体能力に関しては、素の状態でも出力は変わらず出すことが可能。しかしパワードスーツを着用していないと認識阻害性能や防御力が著しく低下します。


それでは次回もお楽しみに~!

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