七夕の決戦!六重奏の不協和音 Aパート
キーンコーンカーンコーン――
チャイムが鳴り響き、午前最後の授業の終わりを告げる。
「よっしゃー!! お昼だぁー!!」
教室のあちこちから歓声が上がり、張り詰めていた空気が一気に弛緩する。
机をくっつける音、椅子を引く音、購買へ駆けて行く音。
さっきまでの静かな授業風景が嘘みたいに、教室は一瞬で賑やかになっていった。
「ふぅ~……お腹すいたぁ~」
ぐーっと背伸びをしながら、あかりは小さく息を吐く。
「今日はなんか、いつもより時間が長く感じた気がするぅ……」
「それ、七夕の事ばっかり考えてたからじゃないの?」
呆れ交じりの声が耳に届く。
「あは、やっぱりバレてる?」
振り向けば、みちるが小さくため息をつきながらこちらを見ていた。
「顔に出てたわよ。早く夜にならないかな~って」
「えへへ……だって楽しみなんだもん!」
鞄の中からお弁当を取り出しながら、あかりは満面の笑みを浮かべる。
「……まぁ、それもそうね」
みちるもどこか柔らかい表情で頷いた。
そこへ――
「はいはい、お二人さん。盛り上がってるところ悪いけど、机くっつけるよー?」
「あ、あおいちゃん!」
教室へやってきたあおいが手際よく机を動かし始め、アリサも手伝って手早く四人分の席を作る。
最近あかり達四人組は中庭には行かず、空調の効いた涼しい教室で昼食を取るようになっていた。
外は晴れても蒸し暑く、虫も飛び交う中で食事を取る勇気は彼女達には無かったのだ。
「はいっ! じゃあ今日も楽しくいただきまーすっ!」
元気よく手を合わせると、みんなもそれに続いた。
にぎやかなお昼休み。
いつもと変わらない、楽しい時間。
それはすべて、夜のひと時への助走になっていた。
* * *
キーンコーンカーンコーン――
今度は、放課後を告げるチャイムが鳴り響く。
教室のあちこちで椅子が引かれ、帰り支度を始める生徒達のざわめきが広がっていく中――
「うぐぐぐぐ……」
机に突っ伏したまま、低いうめき声を上げるあかりの姿があった。
「……あかり、うるさいです」
「だ、だってぇ~……」
アリサからピシャリと苦言を投げかけられ、あかりは顔だけ横にずらして、ぐったりとしたまま言い訳を始める。
「思ったより……思ったより点数伸びてなかったんだもん……!」
彼女の突っ伏す机の上には、返却されたテスト用紙。
赤ペンで書かれた点数が、じわじわと精神にダメージを与えてくる。
「……平均は超えています。問題はないかと」
アリサが淡々とした口調で言うが、あかりは首を横に振る。
「でもでも! 今回はもっといけると思ってたのにぃ……! というかアリサちゃん全科目満点でしょっ!? ずるいーっ!!」
「はいはい、反省会は後にして」
ぱん、と軽く手を叩く音にあかりが顔を上げると、既に下校準備を整えたみちるが席まで迎えに来ていた。
「ほら、今日のメインイベント。忘れてないでしょ?」
「あ……」
その一言で、あかりの動きがぴたりと止まり、すぐにガバッと勢いよく顔を上げた。
「……そうだよ、七夕!」
「そう。だから早く帰って準備しましょ」
「うんっ!!」
さっきまでの落ち込みが嘘みたいに、あかりの表情がぱっと明るくなる。
「短冊書いて、星見て、それでそれで~!」
「テンション上がりすぎて転ばないようにね?」
「もー! そんなドジじゃないよぉ!」
頬を膨らませながらも、どこか楽しそうに笑うあかりを見て、みちるとアリサは小さく微笑む。
あかりが百面相を見せている間にも、アリサも手早く鞄の整理を終え、立ち上がった。
「……準備完了。下校しましょう」
「うんっ! ……って、ちょっと待って! すぐ準備するからっ!」
あかりは慌てて机の上に散らばっている解答用紙と筆記用具、HRで配られたプリントを鞄へねじ込み、席を立った。
* * *
いつも通り下駄箱前であおいと落ち合ったあかり達は、足早に学校を後にして帰路を急いでいた。
理由は言わずもがな、夜の約束の為に済ませられる事は済ませておかなくてはならないからだ。
予報通り晴れた空には太陽がまだ高い位置にいて、歩く四人の少女達の肌を焼いていく。
更に日差しで温められたアスファルトからじわりじわりと立ち昇る熱気に、夏の到来を嫌でも感じ取らされていた。
「うわぁ……あっつい……」
あかりは手で日差しを遮りながら顔をしかめた。
「夜は涼しくなるのかなぁ?」
「天気予報では、日が落ちれば少しは落ち着くって言ってたよ」
あおいが眩しそうに目を細めながら淡々と答える。
「そっかぁ……それならよかった!」
ほっとしたように息をつくあかり。
「せっかく星見に行くのに、汗だくはやだもんね!」
「——その前にやる事やらないとだけどね」
あおいがくすっと笑う。
「テスト見せなきゃだ」
「うっ……現実……!」
あかりがわざとらしく、よよよ……とみちるへとしな垂れかかる。
「ちょ、あかり重い!」
「みちるちゃんは全部高得点でしょぉー……? アリサちゃんも全部満点だしぃ……。 はっ……! あおいちゃんっ!!」
「ざんねーん。全部90越え~」
ダブルピースしながらにひっと笑うあおいに、あかりはいよいよ全体重をみちるに預けんばかりに抱き着いた。
「うあぁぁ……みちるちゃーん……!!」
「きゃっ……!」
バランスを崩しかけるみちるをアリサがしっかりと受け止め、コクリと頷く。
みちるは嬉しそうにふわっと笑みを浮かべるが、すぐにジト目になりあかりを引き離す。
「も、もうっ! あかりだって全部80越えてるんでしょ? ならまだいいじゃない」
「……美術、74点だったの。それに体育も自信あったのに89点でぇ……」
一瞬の沈黙。
どうする? とばかりに視線を向けてきたあおいに、みちるは小さくため息をつきながらもあかりの頭を撫でた。
「だ、大丈夫よ。……きっと」
「主要教科が無事であれば、問題ありません」
アリサの援護射撃もあり、へんにゃりとなっていたあかりのサイドテールがピンッと元に戻る。
「だよねだよねっ!! 多分ママにも怒られない……といいなぁ~」
その後もあかりを励ましつつ、話題を変えて他愛もない話をしていると、あっという間にあおいのマンション近くまで戻ってきていた。
「じゃあ、また夜に! またね!」
「うんっ! また後でねーっ!!」
「あかり~。怒られて遅れないようにね」
「大丈夫だよぉっ!?」
手を振り合いながら、あかりとみちる、アリサは帰路へ歩を進めた。
それぞれの時間を過ごし、再び集まるその時を思いながら。
次に会うのは――
星が見える時間だ。
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どこか別の異次元に存在する、闇に包まれた洋館。
その中にある、蝋燭のシャンデリアの光に照らされたコンサートホール。
蝋燭の灯りにぼんやりと照らされた舞台の上には、精巧な彫刻の施された門——転移門がどっしりと鎮座しており、その門の正面には一人の男が立っていた。
その男の名は――フォルティシモ男爵。
「ヌハハハハハッ!!! いよいよ出撃の時ィッ!! 酒も抜けた! 策も練った! なればもう勝利のファンファーレは鳴り響いているゥッ!!!」
準備運動をするように、上半身をぐるんぐるんと回しながら大声で気合いを入れる彼は、兎角うるさい。
この場にクレシド卿とミーザリアがいれば、すかさず苦言が飛んできたことだろう。
しかし、クレシド卿は珍しく体調を崩して自室に籠もり、ミーザリアは休暇を取っており不在であった。
故に、絶好調にうるさい彼を止める人間は誰もいないのだ。
「さァ!! いざ行かんッ!! 覚悟せい娘っ子共ォ!! 今このワシが行くぞォォォッ!!」
男爵はミュートジェムの入った木箱を抱え、転移門の前へと進み出る。
腕にかかる木箱の重さが期待の重さだと、いつもよりも男爵を奮い立たせる。
「優美に、輝かしく華麗にッ!! 我が爆音のコーラスを響かせてやるわいッ!!」
観客もツッコミを入れる人間は誰もいない。だが今の彼の耳には、大喝采が聞こえていた。
ブレッシング・ノーツの少女達が倒れ伏し、長い長い雪辱戦の幕が下りる。
飛び交う指笛に割れんばかりのスタンディングオベーション。
勝利の甘美なる響きに身を震わせ、恍惚とした表情で天井を見上げる。
「クク……クククク、クカカッ!!! やるぞやるぞォッ!!! やってやるぞォいッ!!!」
張り上げる声は虚勢か鼓舞か。ホール内にくわんくわんと反響し、最後は己の耳へ飛び込んでくる。
心を決めて、さぁ一歩を踏み出そうとした――その時だった。
「……やっぱり先にトイレ行っておくかの」
出撃を控えていた為に酒ではなく紅茶をがぶ飲みしていたせいか、急に尿意を催した男爵はその場にミュートジェムの入った箱を置き、足早にホールを出ていった。
——無人になり、打って変わり静寂に包まれたコンサートホール。
灯りの届かぬ舞台の影に、いつの間にか――ナニカがいた。
蝋燭の僅かな灯りが作る影を縫うように、ナニカは足音もなく転移門の前へと進み出た。
ソレは、じっと転移門を見つめるかのように静止し、そのすぐ傍に無造作に置かれたままの木箱へにじり寄った。
蓋の閉められた木製の箱には鍵はかかっていない。ナニカはそっと蓋を開けると、静かに静かに箱の中へ身を滑り込ませ、内側から蓋を閉じた。
——それから間もなく、喧しい音を立ててコンサートホールの扉を押し開けながら男爵が戻ってきた。
そのまま上機嫌そうに口笛を吹きながら木箱をしっかりと抱え、転移門を起動した。
「さァさァさァ!! 一丁やってやろうじゃあないかッ!!!」
ぽっかりと開いた次元の穴へ、男爵は意気揚々と飛び込んでいく。
小脇に抱えるミュートジェム。そして――ナニカを連れて。
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昼間の熱気がゆっくりと引いていき、街に柔らかな夕闇が降り始める頃。
あかりはソラシーを頭に乗せ、小走りで商店街へと続く道を駆けていた。
「ピィ、あかりあかり。そんなに急がなくても大丈夫ソラ~!」
地を蹴る度に揺れるあかりの頭上をキープしようと、ぱたぱたと羽音を立てながらバランスを取るソラシー。
カーブでずるりと落ちそうになっても、踏ん張る為にあかりの髪の毛がくしゃくしゃになっても、意地でも飛ぼうとしないのはご愛嬌である。
「だってだって! みんなもう来てるかもしれないしっ!」
笑顔のまま駆けるあかりの足取りは軽い。
昼間の落ち込みなんて、もうどこにも残っていなかった。
(……テストは、なんとかなったし!)
ふと、夕方の出来事を思い出す。
帰宅してすぐ、恐る恐る差し出したテスト用紙。
それを見た菜月の眉が――ほんの少しだけ、への字を描いた。
「……あかり?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
あの一瞬の緊張は、今思い出しても背筋が伸びる。
だが――菜月は困ったように笑みを浮かべながらも、あかりの頭を優しく撫でた。
「……ちゃんと頑張ってるの、ママも見ていたから。良く頑張ったね。でも次はもっと頑張るのよ?」
「……っ!! うんっ!!」
結果として、大きく怒られることはなかった。
(頑張ってて良かったぁ……!)
心の中で何度目か分からない安堵の息を吐く。
「ピ、ブレッシング・リンクで確認すれば済むソラぁ」
「うっ……そ、それはその通りだけど……!」
「あかりはすぐ忘れるソラ」
「わ、忘れてないよぉ!」
軽く言い合いながらも、あかりは楽しそうに笑った。
駆け抜けていく視線の先に、賑やかな光が見えてきた。
住宅街から、お店が並ぶ商店街に入ったのだ。
並ぶ電灯の間には提灯が下げられ、七夕飾りが至る所に吊るされている。
店先には大小様々な大きさの笹が立てられ、色とりどりの短冊が風に揺れていた。
「わぁ……!」
思わず足を止める。
さらさらと揺れる笹の音。
行き交う人々の楽しげな声。
ほんのりと漂う、出店からの美味しそうな匂い。
「七夕だぁ……!」
あかりは目を輝かせ、弾む心を隠さずにあたりを眺めた。
いつもの商店街のはずなのに、知らない場所に来たような、特別感。
早速お祭りの非日常感に飲み込まれていたのだ。
「すごいソラ……きらきらしてるソラ……」
ソラシーも目を輝かせながら、初めて見る七夕に胸を躍らせていた。
華やかで笑顔が溢れる幸せな場所。
その光景に引き寄せられるように、あかりは一歩踏み出した。
その時だった。
「あかりー! こっちこっち!」
聞き慣れた声が、人混みの向こうから届く。
「……あっ!」
顔を上げると、大きな笹の前に立つ三人の姿が目に入った。
「みちるちゃん! あおいちゃん! アリサちゃん!」
あかりは手をブンブンと振りながら、小走りで駆け寄っていく。
「ごめんごめん! ちょっとだけバタバタしちゃってて!」
「あかりってば、何着ていくかずっと迷ってて、この時間になったソラ」
「そ、ソラシー!!」
慌てて抗議するあかりに、みちるとあおいがくすっと笑う。
「まぁでも、気合い入ってるのは分かるわね」
「うんうん。いつもより可愛い感じする」
「え、ほんと!?」
あかりはくるっとその場で一回転してみせた。
白地に小さな花柄が散りばめられた、軽やかなワンピース。
袖は少しふんわりとしていて、動くたびにひらひらと揺れる。
足元はシンプルなサンダルで、夏らしい涼しげな装いだ。
「えへへ……夏っぽくコーデしてみたんだ~!」
頬をかきながら照れるあかり。
「いいじゃない。あかりらしくて可愛いわよ」
そんなみちるは、落ち着いた色合いのブラウスに、膝丈のフレアスカート。
全体的にシンプルながらも品のあるコーデで、大人っぽい色味がよく似合っている。
「みちるちゃんは綺麗だよねっ!」
「え……! そ、そう?」
「うん! なんか大人っぽい感じ!」
「……ありがと」
ほんの少しだけ頬を染めながら、みちるは視線を逸らした。
「へへ、みちる可愛いねぇ~」
「あ、あおいっ!!」
あおいからの追撃に、みちるはいよいよ顔を赤くして腕を組み、そっぽを向いてしまう。
「私はこんな感じだけどねー」
あおいは軽くポーズをとる。
ゆったりしたロゴ入りのTシャツに、デニムのショートパンツ。
動きやすさ重視のラフな格好ながら、どこかこなれた雰囲気がある。
「さっすがあおいちゃん! 似合ってる~!」
「でしょ? 楽なのが一番だよ~」
最後に視線が向くのは、アリサの服装。
彼女は相変わらず飾り気のない白のシャツに黒のスカートという、装飾の少ない極シンプルな組み合わせであったが、彼女の容姿と姿勢の良さも相まって、どこか引き締まった印象を与えていた。
「……機能性を重視。無駄はいらない」
「いやいや、それでもちゃんと似合ってるって。羨ましいな~アリサは」
「そうよ。むしろアリサらしいわ」
「うんうんっ! 何かこう……かっこいい感じ!」
皆から口々に褒められ、アリサは僅かに視線を彷徨わせた後、小さく微笑んだ。
「……そう、ですか」
短くそれだけ返す。それでも彼女が悪い気はしていないのだと、皆が理解していた。
「……そうだ、ほら! 見てみなよ」
あおいが顎で指し示した先には、ひときわ大きな笹が立っていた。
枝いっぱいに結ばれた短冊が、風に揺れてさらさらと音を立てている。
「わぁ……すごい……!」
改めて見上げるその光景に、あかりは目を輝かせた。
「ね、すごいでしょ。今年は特に短冊も多いみたい」
「ほんと、笹も重そうに見えるわ」
みちるも無数に下げられている短冊を見渡しながら頷く。
そして――
「……では」
アリサが一歩前へ出た。
「まずは、短冊を書きましょう」
その言葉に、あかりはハッとしたように顔を上げる。
「そうだよねっ! お願い事書かなきゃ!」
「ほら、紙とペンも笹の下のテーブルにちゃんとあるよ」
あおいが短冊とペンを差し出し、それぞれが一枚ずつ受け取り、ペンの蓋を開ける。
色とりどりの短冊。
そこに込めるのは――それぞれが胸に抱く願い。
「……よーしっ!」
あかりはぎゅっとペンを握り、サラサラと短冊へ考えて来た願い事を記入していく。
「あかりあかり! ソラシーのお願い事も書くソラ!! ハルモニアランドを取り戻せますようにっソラ!!」
「うんうん! もちろん任せておいて!」
ソラシーのお願い事も、しっかりと掠れないように書き記していく。
短冊の紙ギリギリまで濃く大きい文字で書かれたお願い事を見て、ソラシーは満足気に羽毛を膨らませていた。
「はい完成っ! ソラシーこれでいい?」
「ソラ! ありがとうソラ~!!」
小躍りするようにテーブルの上でぴょんぴょんと跳ねるソラシーだったが、ふと既に書き終えている全員の短冊を咥えると、パッと空へ飛び立った。
そのまま大笹の一番上の枝へ止まると、器用に嘴で短冊をぶら下げていく。
「ソラシ―すごーいっ!」
「ピッピ~! お星様に見えやすいようにしたソラぁ~!!」
下から見上げるあかり達には、短冊のお願い事に皆が何を書いたのか読む事は叶わない。
それでも――風に揺れるその一枚一枚の願い事が無事に叶いますようにと、自然と手を合わせていた。
吹き抜ける初夏の爽やかな風に揺られ、さらさらと鳴る笹の音が、まるで祝福するかのように響いていた。
* * *
「……じゃあ、そろそろ澄天神社に移動しようか」
あおいの言葉に、はっと我に返ったあかりは「そうしよ~っ!」と元気に答え、商店街を通り抜けて神社への道を歩き始める。
キラキラした商店街の人工の光に溢れる道を歩きながら、あかり達は短冊に書いた内容について話の花を咲かせていた。
「ねぇねぇ! みちるちゃんは何書いたの?」
あかりが身を乗り出すようにして尋ねる。
「え……?」
一瞬だけ言葉に詰まり、みちるは少し視線を逸らした。
「……別に、大したことじゃないわよ」
「えー! 気になる!」
「……ちゃんと勉強したことが身に付きますように、って書いただけ」
「えっ、すごい真面目!」
「普通でしょ」
さらりと言うみちるだが、その頬はほんの少しだけ赤い。
「でもでも、それってすごく大事なことだよね!」
あかりはにこっと笑った。
「……まぁ、そうね」
少しだけ柔らかくなった声で、みちるが頷く。
「じゃああおいちゃんは?」
「私はねー……」
あおいは少しだけ考えるように空を見上げてから、軽く笑った。
「新しい星を見つけられますようにって、毎年お願いしてるんだ」
「おおーっ!」
あかりが目を輝かせる。
「なんかあおいちゃんっぽい!」
「でしょー? 見つかるまで毎年これ書こうって思ってるんだ」
「うん! すごくいいと思う!」
あおいは少しだけ照れくさそうに笑った。
「……あかりは、どうしたのですか?」
アリサが問いかけると、皆の視線があかりへと向く。
すると、あかりは待ってましたと言わんばかりに胸を張り、腰に手を当てて視線を上へ向けた。
「ふっふ~ん。私はね~……!」
あかりが願い事を告げようとした――まさにその時だった。
「――ッ!?」
ビクンッとアリサが目を見開き、素早く商店街の方へと振り向いた。
「アリサ……?」
彼女の異様な反応にいち早く気付いたみちるは、彼女の振り向いた先へ視線を向けるが、特に何かが起きたようには見えない。
小首を傾げ、何事か問おうとした時。
「ピッ!? ピピィーッ!! ディスコードソラッ!!! 近いソラぁ!!」
「「ええっ!?」」
ソラシーが大騒ぎし、同時にあかり達のブレッシング・リンクが警告音を発する。
「まったくもぉー! こんな日にまでディスコードが!」
各々がパクトを取り出し、空へと掲げる。
「いくよっ! みんな!」
「「うんっ!!」」
あかり・あおい・みちるの三人が温かな光に包まれ、数秒後には光り輝く希望の戦士、メロリィへと変身を遂げていた。
「せーのっ!」
「「輝き奏でる祝福の調べ! ブレッシング・ノーツ!!」」
「急ぐソラっ! 現場へ急行ソラーッ!」
「うんっ! いこう、みんな!」
「……皆、ご武運を」
跳躍し、民家の屋根の上を伝って最短距離で駆けていくエンジェル達を一人見送ったアリサは、頬を伝う一筋の汗を静かに払った。
「……これが、一の波ですか? マダム……」
彼女が感知したのは、ディスコード――男爵の事ではない。
その男爵に紛れ、次元を渡ってきた良からぬモノにだった。
「……これは、みちる達の手には余るな」
久しく感じなかった危険感知の頭痛に、アリサは目を閉じて眉間を軽く揉む。
——そして、息を整えてゆっくりと目を開いた。
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