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49 INT高い敵

俺とタピオカくんはリアルで、今後について話し合った。


正直、今回は運が良かった。もし有能な執事が次期侯爵を止めなかったら、口論は激化して、プランCを使うしかなかったかもしれない。


プランCって、もう察してるだろう。偉い人たちに力を見せつけて、無理やり話を通すやり方だ。塔から出た時、50人に囲まれたとはいえ平均レベルは17程度。危険なのはギルド長と兵隊の隊長くらい。全員の武器を叩き落とし、次期侯爵の首に刃を突きつけることもできた。だがプランCを使えば、たとえ許されても“アリス”は貴族たちに警戒されるだろう。


正体は誰にも知られていないし、別の仮面を付ければ別の身分にもなれる。だが冒険者カードは“アリス”のまま。なぜかこの世界ではゲーム仕様のように、謎の技術で別名義でカードを作り直すことはできない。“アリス”を捨てれば、冒険者として活動できなくなる。


幸い、今回はいい方向に展開した。明日の塔周回はアリスとして直接塔の前に転移しましょう。急に現れて、帰りも消える。捕まえたくても捕まえられない謎の存在――それも悪くない。


さて、〈覇者の塔〉の話に戻ろう。 次は31~40階のボスについてだ。


• 31階 Lv41 石像騎士ガルム

• 32階 Lv42 毒沼の魔女ヴェルナ

• 33階 Lv43 爆雷のサンダーハーピー

• 34階 Lv44 大鎌蟷螂カマリオ

• 35階 Lv45 死霊軍団長モルド

• 36階 Lv46 裏切りの氷刃の騎士セルディス

• 37階 Lv47 雷鳴巨人トールグ

• 38階 Lv48 幻影の道化師ミラージュ

• 39階 Lv49 堕天使の尖兵ルシエル

• 40階 Lv50 古代兵器アーク・キャノン


攻略サイトを見るだけで、21~30階との違いは明らかだ。あちらはゴブリンキングや傷ついたウルフのような強化版モンスター。しかしここからは人型のボスが出てくる。


31階と32階は簡単そうだ。石像騎士はアブソリュートゲロビームで倒せるだろう。


毒沼の魔女も毒対策さえすればただの魔法使い。広範囲の毒攻撃と中位闇魔法〈グラビティ〉程度なら走って回避できる。


33階はタピオカくんが欲しがっている〈SR 雷鳴の羽弓〉をドロップできるなボス、爆雷のサンダーハーピーだ。安全に倒すなら、金属製の槍を地面に挿して避雷針にするのは可能かも。


最大の問題は36階、〈裏切りの氷刃の騎士セルディス〉。メインストーリー上ではこいつはこの国の王国騎士団の副団長で、突然プレイヤーの前に立ちはだかる。塔内のセルディスに“人の意識”が残っているのかは不明だ。


前の階層の敵はINTが低く、自我はない。だが、レベル40を超えるボスはINTが跳ね上がる。魔女、騎士、道化師、堕天使……もし奴らがこちらに話しかけてきたら、どうする?


自我があるなら攻略動画は参考にならない。ボスは思考し、戦いはPVPに近くなる。レベル的には苦戦はしないだろうが、万が一何が遭ったら、途中で転送して逃げることもできる。再挑戦すればいいだけだ。


うん~~このまま二人で考えても意味はない。あとで女王様に相談しよう。



夕飯のあと、俺たちはログインして妖精の女王様に相談した。


結局は予想通りだった。恐らく〈覇者の塔〉のボスもダンジョンのモンスターと同じく“自我”は持たない。それもそうだな、もし自我があるなら、何十回も倒されたアラクネは俺たちを見るなり怯えて逃げるはずだ。


女王様の話によれば、ダンジョン内のモンスターは魂を持たない“影”にすぎないという。〈覇者の塔〉もダンジョンと同じ仕組みで作られているため、そこで出現するボスも“影”である可能性が高いと教えられた。


これを聞いて一安心だ。ボスが会話を仕掛けてくることはないだろう。


その夜、俺たちは女王様とメイドたちの家具を整えるため、再び素材集めの旅に出た。


‐走るレベル31→33

‐料理レベル20→21

‐採集レベル28→32

‐伐採レベル25→31

‐加工レベル24→30


そして翌日の攻略に必要な道具を作成し、そのままログアウトした。




翌日、日曜日の朝。


セリーナの小屋で星月ドレス姿をローブで隠し、キツネ仮面を付けた“アリス”の姿で、拠点から直接〈覇者の塔〉前の転送ポイントへ転送した。


塔の入り口周りには大勢の衛兵が取り囲み、その外側には関係のないモブたちが集まっている。まるでアイドルの登場を待つ観客のようにスペースが空けられ、その真ん中に俺は突然現れた。



おおーーーーっ!!

来たぜ!!



転移で突然現れたというのに、誰一人違和感を覚えず、群衆は俺の登場に祭り騒ぎのように盛り上がった。だが俺はそれらを無視し、塔の入り口前で手を振ってきた筋肉ハ…コホン、筋肉ギルド長に向かう。


「よぅ、お嬢さん。やっぱり朝からここに来るのか。」

「おはようございます、ギルド長。……えっと、もしかして、次期侯爵様の嫌がらせで塔は封鎖されたのでしょうか?」


ギルド長は「わははっ」と笑いながら俺の肩を叩いた。


「あのボンクラは本気でそうしたかったらしいが、昨晩は執事にこっぴどく怒られたぜ。せっかく塔から出てくる者が現れたんだ。中の情報を俺たちに伝えられなくても、いずれは分かる。その機会を邪魔する者を侯爵様が許すはずがない。ボンクラは今屋敷に閉じ込められている。お嬢さんの邪魔はしない。衛兵は周りの人たちを抑えるために来ているだけだ。」


ですよね。さすが有能な執事。どっかの“セバスチャン”とは大違いだ。


「では、ギルド長はワタシを待っていたようですが……何か御用でしょうか。」

「ああ、一応、君に現状を説明しておこうと思ってな。 それと他の冒険者が塔に入らないよう見張っているんだ。 見た目がか弱いお嬢さんでも攻略できると聞かされて、自分もできると思い込むバカどもが出てくるからな。」


ギルド長は頭で冒険者たちの位置を示す。塔の入り口付近には、すでに二つのパーティーが倒れている。まぁ、俺たちには関係ない。無視だ。


「なるほど。ではこの盛り上がりの人たちは?」

「あ~、それは……」


言いづらそうに苦笑しながらギルド長が答える。


「周りの人は賭けに来ているんだ。」

「賭け?……もしかして……」

「ええ、まぁ……お嬢さんが何階で止まるか、だな。」

「はぁ…なるほど。ではワタシは塔に入ります。」

「ああ、無理はするなよ。」

「ありがとうございます。」


ギルド長と別れ、すんなりと塔の前へ進む。入り口には昨日と同じ守衛の二人が立っていて、俺に敬礼した。


「おはようございます、アリス様!」

「おはようございます。入っても大丈夫でしょうか?」

「どうぞ!」

「ありがとうございます。」


塔はホントに封鎖されていない。俺たちは昨日と同じように、普通に塔へ入っていった。



転送陣に踏み込み、開始階層を選択。31階の攻略が始まる。短い廊下を抜け、扉を開けると、天井に偽の空が広がる闘技場エリアへと入った。



【石像騎士ガルム Lv.41】



エリアの中心に石像騎士ガルムが立っている。クリスマスゴーレムとは違い、石の馬に跨り、長槍を構えた完全な人型の騎士姿のゴーレムだ。


俺は安全第一で攻略に臨む。まずは距離を取り、攻撃モーションを確認する。


遠距離では突進とジャンプ攻撃のみ。赤い攻撃範囲の外に立てばほとんど被弾しない。突進は直線的で、予想通り、重い石の身体では突進中方向転換もできない。


接近戦では炎を纏った広範囲の焼き払いと高威力の刺突が来るため、近づくのは危険だ。基本接近戦はおすすめしない。


ゴーレムの弱点は当然魔法攻撃。タピオカくんは練習として固定ダメージの〈マナショット〉を連発。俺は〈アブソリュート・ゲロビーム〉を二度撃ち、HPバーを二つ削る。残りは僅か。


当然、最後の大技が来る。ガルムは大ジャンプし、槍をターゲット地点に突き立てて大爆発を起こす。赤い範囲が出るので回避は容易だ。


だが――俺がとどめを刺す前に、ガルムのHPは消え、身体はバラバラに崩れた。自分の爆発に耐えられず倒れたのか?


「え?自滅しました?」

『あれ?火耐性は100のはず、自爆ではノーダメのはずじゃ?』


セリーナ:クリスタルゴーレムと同じく、熱膨張と収縮の影響じゃないかな?

サクラリア:セリーナ、それはどういうことですか?

セリーナ:これはね、ゴーレムの温度が急激に上昇したことで内部が脆くなって……


「あ!ワタシのゲロビームは氷属性ですから、接近戦もしていないので炎を纏う技は発動していません。」

『冷えたまま爆発の熱を受けて内部から破壊されたってことか。前に話してた即死ギミックはこういう形なんだ、面白いね。』


一応、簡単にクリアできた。次の周回ではセリーナのお嬢様魔法使い装備で挑めば、ゲロビーム二発で十分だろう。


エリアの中心に転送陣が現れ、俺はその上に乗った。



32階は毒沼の魔女ヴェルナ。ここから人間系のボスが登場する。“自我”はないと予想していたので、話しかけてくることはないだろう。


攻略動画通り、闘技場エリアの中央には魔女の姿はなく、濁った沼だけが広がっていた。念のため、いつでも転移できるようにワールドマップを開いたまま中央へ近づく。



【毒沼の魔女ヴェルナ Lv.42】



一定範囲に入ると、ボス名と三本のHPバーが現れ、濁った沼の中央からぼろ布をまとった老婆が浮かび上がった。髪は藻のように湿り、肩から苔や毒草が垂れ下がっている。濁った瞳が光った瞬間、吐息とともに緑の瘴気が広がった。



「ククク……ようこそ、我が毒沼へ。愚か者ども、ここで骨まで腐り果てるがよい……」



「開幕セリフあり!いや、タピオカくん、その瘴気は大丈夫?」


横に飛んでいるタピオカくんが回復ポーションを持ち、メニューを開いて答える。


『平気そう。聖護の首飾りがちゃんと働いてる。女王様の言った通り、瘴気も防げるわ。毒も受けてない。開幕セリフはあったけど、それ以外はやっぱり何も話さないね。』

「そうですね。この塔のボスはダンジョンと同じく“人型の影”。女王様の考察は正しかったですね。」

『じゃあ、作戦通りで行きましょう。』


タピオカくんがすぐに〈マナショット〉の弾幕を張る。俺は隙を見て水玉を生成し、魔女の頭を覆った。窒息させてHPを削り切る作戦だ。


しかし、予想外の事態が起きた。


HPバー一本を削った直後、水玉の中から緑の液体が漏れ出し、水玉全体が毒々しい水に変わった。魔女はその毒水を皮膚から吸収し、削ったHPバーを一気に全回復した。


サクラリア:タピオカ様!水が毒に変わりました!

セリーナ:精霊さん!魔女さんが全回復しました!どうしましょう!


『これはこれは、普通に戦わないといけないね。毒無効なら楽だけど油断は禁物よ、精霊くん!』

「了解です。では接近戦に切り替えます。タピオカくんは遠距離弾幕を続けてください。」

『任せて!』


俺はUR短剣〈月影〉と〈星光〉を構え、魔女に接近した。


魔女は広範囲の毒攻撃、遠距離の毒弾、闇魔法〈グラビティ〉、必殺の毒爆弾を使うが、接近戦では猛毒フィールドと〈ダーククロー〉程度。毒対策さえしていれば弱い部類だ。


〈シャドウステップ〉で背後に回り、連続斬りから蹴りで距離を取る――はずだった。


だがその蹴りで魔女がぶっ飛んだ。ボスキャラは通常、怯むだけで吹き飛ばないはずなのに。


当然、このチャンスを逃すわけにはいかない。立ち上がろうとする魔女に再び背後から連続攻撃と蹴り。魔女は壁際まで吹き飛んだ。



サクラリア:遠くから見ると、精霊様は本当に容赦がありませんわね。哀れな魔女さん……

セリーナ:せ、精霊さん……こ、これは……


『精霊くんの人でなし!ひどいわ!もうやめて~!魔女さんのHPはゼロよ!(棒読み)』

「棒読みやめてください。弾幕でヘッドショットし続けてるタピオカくんに言われたくないですよ。セリーナ、見たくないなら見ない方がいいのです。悲しいけど、これ戦争なのよ。」

『戦争じゃなくて、ただの戦闘でしょ。』


セリーナ:い、いいえ!勉強になります!


『強いですね、セリーナ。リアルでこんなハメ技を見ても引かないのは偉いわ。』


俺は魔女にハメ技を繰り返す。連続攻撃、蹴り、壁にぶつけ、跳ね返したところを再び連続攻撃。ボスには起き上がりの無敵時間がない。使わない方がおかしい。安全第一だ。


あっという間にHPバーを二本削った。


最後の三本目のHPバーに入った瞬間、魔女に異変が――。



「フフフ……この皺だらけの皮が、私の本当の姿だと思ったか?」



『来た!第二形態!精霊くん、離れて!』


俺はすぐに後ろへ跳び、距離を取った。


変身のセリフと共に、老いた肉体が毒の炎に包まれる。皺は消え、艶やかな肌が現れ、ぼろ布のローブは裂けて妖艶なドレスへと変わる。濁った瞳は鋭い光を放った。



「見よ――これこそが私の真なる姿! 永遠の美を纏いし者よ!」



腐敗の象徴だった老婆は、妖艶な熟女へと姿を変え、塔の空気そのものを支配するかのように微笑んだ。


「念のため距離は取りましたけれど……ハメ技を使ったままで、変身は起きるのでしょうか?」

『試すのはもう少しレベルが上がってからね。初見は様子を見るべきよ。』


魔女は壁際に立ち、大技〈毒爆弾〉のモーションへ。だがタピオカくんは止まらず、弾幕でヘッドショットを連発。固定ダメージでも撃ち続ければ十分な火力になる。


俺は――。


〈シャドウステップ〉


背後に回り、連続攻撃。そして試しに蹴り飛ばす。この世界のこういう人型ボスは体重も人間らしい。熟女魔女は大技をキャンセルされ、エリア中央へぶっ飛んだ。


「えっと……いただきまーーす。」


そのままハメ技に突入。連続攻撃と蹴りの繰り返しで、最後のHPバーは瞬く間に削られ、魔女は光の粒子となって消えた。


「ふう……無敵時間がないと、ハメ技がこんなにすんなり決まるのですね。これなら周回も楽になりますわ。」

『フルコンボだドン!やったね、精霊くん!』


セリーナ:すごい……ボスは全く攻撃できないまま倒されました!

サクラリア:お疲れさまです、精霊様!本当にすごいです!


「この魔女も固定のセリフしか話していません。やはり塔のボスには自我がなく、想定外の行動はないのでしょうね。」

『そうね。でも起き上がり無敵時間がないのは、逆にこちらも危ない時があるわ。敵はあなたみたいにハメ技を仕掛けてくるとは思わないでしょうけど、油断は禁物よ。』

「確かに……では、次はタピオカくんが一番楽しみにしているサンダーハーピーです。ご準備はよろしいでしょうか?」

『準備完了!物欲センサーに引っかからないように、無心で行こう!』


サクラリア:タピオカ様、その“ぶつよくせんさー”とは何ですか?


『それはね、この塔を運営する存在の嫌がらせ!欲しいものを心で願うと、塔の主人が読み取ってわざと出さないのよ!』


サクラリア:えー!酷いです!

セリーナ:なるほど!だから〈蜘蛛女王の魔宝石〉はなかなか出なかったんですね!


タピオカくんは“正しい”知識を笑いネタにして二人に教え、俺達は和気あいあいと転送陣へ入った。


ボスに自我がないのは本当に助かる。もし「許して」「助けて」と言われたら、周回は難しくなるだろう。固定セリフしかないからこそ、塔の人型ボスは戦いやすいのだ。

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