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28 次の目標

タピオカくんとの通話を終え、俺の心はだいぶ落ち着いていた。


夕方6時。夕飯には少し早いが、ログアウトしたばかりだし、今日は早めに食べてしまおう。もし深夜にお腹が空いたら、軽くカップ麺でも食べればいい。


そうして俺は夕飯を食べながら、今後のことについて必要な情報を攻略サイトで調べた。


夜7時、俺は再びセレアグの世界にログインする。


ログインして最初に感じたのは「お腹いっぱい」と「泡々」という感覚。よく見れば、俺は浴槽の中で体を洗っていた……ちょ、待て!セリーナ、まだ風呂に入ってるのか?!


セリーナ:あ、精霊さん。おかえりなさい。


「た、ただいま……」


冷静になれ。彼女は相棒だ。冷静に、天井を見て冷静に……。


「セリーナ、あれから三時間が経ちましたが、何かありましたか?」


セリーナ:いえいえ、何もありません。ただ村の人たちに連れられて、広場の宴に参加しただけです。


「宴……ですか?」


セリーナ:はい。村長の地下倉庫には食べ物や酒がたくさん貯め込まれていて、

セリーナ:みんなで小さな宴を始めたんです。

セリーナ:私、精霊さんが用意してくださった夕飯を食べる前に連れて行かれてしまって……

セリーナ:だから、ごめんなさい。せっかくのカルボナーラ、食べられなかったんです。


「まだ残っているなら回収できると思う、だから気になさらないでください。」


セリーナ:ありがとうございます、精霊さん。


……この世界は完全にゲームのようでアニメ調だが、さすがにこのままセリーナの代わりに体を洗うのは、俺のピュアなTD心には刺激が強すぎる。一旦離れよう。


「では、セリーナ。ワタシは少し離れます。お風呂はゆっくり楽しんでください。」


セリーナ:え?私、精霊さんともっと話したい!


「大丈夫です、ワタシはまた戻ります。ただ、セリーナが気持ちよくお風呂に入っているのを見て、ワタシも少し入りたくなってしまいました……そうですね、30分ほどで戻ります。その間はどうぞお風呂を堪能してください。」


セリーナ:そ、そうですか……


「お風呂は気持ちですから、その時間を奪いたくありません。」


セリーナ:う、うん。


「では、またあとで。」


俺はそのままログアウトした。言った通り、俺も風呂に入る。最近はセレアグの世界に早く入りたくてシャワーばかりだったが、今日は久しぶりに長風呂にする。


すっきりした俺は、約束通り30分後に再びログインした。


セリーナ:おかえりなさい、精霊さん。


「戻りました、セリーナ。」


セリーナはベッドに座り、魔法で温かい風を出して髪を乾かしている途中だった。俺が彼女の身体に戻ると、その魔法はすぐに止まった……待て、そんな魔法あったか?


「えっと、セリーナ。さきほど温かい風を感じましたが、あれは何の魔法ですか?」


セリーナ:あ~髪を乾かす魔法です。

セリーナ:先週精霊さんが教えてくださった、威力最弱の風魔法に火魔法の熱を混ぜた技なんです。


俺はすぐにメニューを開き、使える魔法のリストを確認した。そこには見たことのない魔法がいくつかあった。


名前は全く読めない――多分この世界の文字だ。セリーナが自分でカスタマイズしたのか?魔法カスタマイズのページを確認したが、案の定ロックされたままだった。


「セリーナ、この魔法、ワタシには使えないようです。新しい魔法を作られたのですか?すごいですね。」


セリーナ:え?精霊さんはこの魔法、使えないんですか?


「はい。この魔法はあなた方の世界の文字で記されているので、ワタシには理解できません。ですが、自分で魔法を創れるのはすごいことです。ワタシは威力をある程度調整するくらいしかできませんから。」


セリーナ:いいえ、大したことないです。

セリーナ:ただ、温かい風を吹かせれば髪が早く乾くんじゃないかって考えただけで、自然に使えただけなんです。


「それでも十分に才能です。使える魔法が増えるのは良いことですから、自信を持ってください。」


セリーナ:うん、ありがとう、精霊さん。


俺は先ほどセリーナが話していた冷めたカルボナーラを冷蔵庫に入れ、威力最弱の風魔法で髪を乾かしながら、本題に入った。


「セリーナ、今後のことについて話したいのですが、いいですか?」


セリーナ:はい、もちろんです。


「まず、セリーナは以前決めた通り、伯爵領へ行き、お父さんに会う予定ですね。ただし、あなたは伯爵令嬢になるつもりはない。ですから、お父さんに会うときも、先に“アリス”として彼に会う……そのお気持ちは、今も変わりませんか?」


セリーナ:はい、私は貴族になるつもりはありません。

セリーナ:精霊さんから聞いた話では、貴族の世界には自由がない。

セリーナ:私は自由が欲しいのです。お父さんに会えたら、良い場所を探して、お母さんのお墓を作りたい。

セリーナ:それが今、私のやりたいことです。


……セリーナの気持ちは複雑だろう。彼女の父の借金は事実だ。では、その借りた金は今どこにある?言わずとも察せられる。さらに、元村長は「父エドガーは家族を捨てた」と語っていた。村長が捕まったときに投げやりに口走った言葉で、それでも彼女の心に刺さっているはずだ。信じたくはないが、もしかして……と考えてしまう。


「わかりました。では予定通り、お父さんに会いに行きましょう。ただ、その前に少し寄りたい場所があります。よろしいですか?」


セリーナ:はい、大丈夫です。どこですか?


「〈翠夢の森〉で“無垢晶”を探したいのです。」


セリーナ:うん……聞いたことのない森ですね。


「ナイジェリアの森から東へ向かった場所で、転送ポイントを二~三つ越えた距離です。」


セリーナ:これは……近いかもしれませんね、は、ははぁ。


「そこで“無垢晶”を探し、すべての異常状態を防げるな首飾りを作りたいのです。」


セリーナ:あ!


「お父さんに会う旅は、今日のように波乱万丈ではないと思いますが……念のためです。今日、麻痺で三秒間動けず、転移もできないのです。ワタシとしては、あなたの安全を最優先にしたいのです。」


セリーナ:いいえ、私も賛成です。旅をするなら安全が一番です。私は大丈夫。

セリーナ:お父さんとは七年も会っていませんし、あと一年や二年待っても構いません。

セリーナ:外の世界をたくさん見て、色々なことを学んで……

セリーナ:貴族の世界に入らないままでも、

セリーナ:お父さんとまた一緒に暮らす方法が見つかるかもしれません。


「わかりました。ではまずは〈翠夢の森〉へ向かいましょう。」


セリーナ:お~!!


「そうそう、セリーナの専用装備も完成しましたので、あとでお渡ししますね。」





夜の9時頃、チャット欄は急に反応がなくなった。セリーナは旅のことを楽しそうに語り続けていたが、知らないうちに眠ってしまったのだろう。


こんな感じで、次の目的地は〈翠夢の森〉に決定した。


その翠夢の森へ向かうのは俺。前と同じように走って、転送ポイントを一つずつ解放しながら進む。


レベルは以前より上がっているので、走る速度も速くなった。それに俺は疲れないから、前よりさらに楽に進めるはずだ。


そして、日曜日の深夜一時。俺は翠夢の森の近くの転送ポイントに移動し、森へ向かって走って、転送ポイントを一つずつ解放していった。最初のポイントを解放したあと、セリーナの家へ戻った。


「ふう、この調子なら明日の昼頃には目的地に到着できそうだな。あとはモンスターのリポップの問題……ダンジョンではないから、どうなるかは分からない。」


攻略サイトによれば、“無垢晶”は超レア素材ではない。ただし必要数は五十個……少し時間がかかりそうだ。


「そういえば、タピオカくんがフレンド申請を送ったと言っていたけど、やっぱり届いていないなぁ……ふぁ~あ。さすがに眠い。そろそろ休もう。」


俺は照明用の天使の環を外し、セリーナのために作ったおすすめの魔法使いセットをテーブルに置いた。そして村人の服に着替え、ベッドに横になってログアウトした。



--------------------------------------------------------



その晩、俺は奇妙な夢を見た。


「ここは……儀礼艦か。」


そこは昔遊んでいたシミュレーションゲーム『宇宙の天使』の世界だった。主人公は艦長で、六人のヒロインたちがマシンと合体し、彼女たちに指示を出して宇宙で敵と戦う――そんな戦略シミュレーションゲームだ。


そして俺は今、その旗艦・儀礼艦の一室にいる。艦は内部から襲撃を受けたらしく、壁には銃痕が走り、銃や金属片、敵兵の死骸が無重力の中で雑然と漂っていた。


気づけば、俺――いや、ワタシは星月ドレス姿のセリーナの姿で、部屋の中央に無重力で浮かんでいた。


「そうだわ!艦長を助けなくては!」


ワタシは艦内を移動し、少し開いた扉を見つけた。襲撃で歪んだ扉、その隙間から入るしかない。幸い、通り抜けられそうだった。


扉の向こうは廊下。廊下の端に艦長の影を見つけ、ワタシはすぐに呼びかけた。


「艦長!!」


しかし艦長は聞こえていないようで、銃を手に無重力の艦内を別のエリアへ移動していく。


「ちょっと待ってください!」


追い続けてブリッジに到着すると、自動ドアが開き――画面は切り替わり、ワタシは再び最初の部屋に戻っていた。


艦長を助けようと同じ道を辿るが、また最初の部屋に戻る。何度繰り返しても同じだった。


やがてワタシは艦長とは逆方向へ進み、とある部屋に入った。すると場面は突然、日本の公園へと変わり、目の前には無人の車が停まっていた。


ワタシの意識は告げていた――この車の中には伝説の絵師がいる。その人にラーメンを奢れば、きっとワタシを助けてくれる、と。


しかし窓越しに覗いても、中には誰もいない。


「奢ると言っても、ここには誰もいませんよ。」


そう呟いた瞬間、車内から渋い男の声が響いた。


「そこのお嬢さん、ラーメンを奢ってくれないか?」

「ええ、いいですよ。約束しましたから。」


気づけばワタシは車の扉を開け、姿の見えない男と並んで車内でラーメンを食べていた……。


そして、また儀礼艦の最初の部屋に戻る。




――目を薄く開けると、そこは俺の部屋だった。周囲は暗く、まだ夜中。隣に置いたスマホで時間を確認する。


午前四時。


(……変な夢だ。)


俺は再び眠りについた。



--------------------------------------------------------



翌日、日曜日。


俺は平日の時間に目を覚ました。


なぜだろう、昨夜の奇妙な夢をなんとなく覚えている。何度もループしたからかもしれない。だが今は忘れよう。


「よし、うまくいけば午前中には翠夢の森に到着できる。早速ログインだ!」


朝8時、俺は再びセレアグの世界に入った。


セリーナ:あ、おはようございます、精霊さん。


「おはよう、セリーナ。」


セリーナは新しく作ったトートバッグに必需品を詰めていた。大部分は俺のストレージに入っているが、俺がいない時に必要なもの――護身用の短剣、回復ポーション、金貨などは普通にカバンに入れている。


セリーナ:精霊さん、こんなかわいい服を作ってくださってありがとうございます。

セリーナ:でも、さすがにこんなお嬢様みたいなスカートは、私には似合わないですよ。

セリーナ:もっと普通の魔法使いの服はないですか?


「そんなことはありません。セリーナはとてもかわいいですよ。」


俺はメニューを開き、装備画面でセリーナの全身像を確認した。鏡はないが、UIなら見られる。


「うん、やっぱりセリーナはかわいい!ワタシの選択は間違っていない!」


セリーナ:精霊さん!褒めすぎです!恥ずかしい……


セリーナの装束は、夜の夢を編んだような優雅な衣。白いブラウスは柔らかな光沢を帯び、肩にはふんわりとしたパフスリーブ。黒のコルセットには紫の刺繍が走る。幾重にも重なったスカートの裾には銀糸が縫い込まれ、月光のように輝いていた。元々のUR黒のストッキングと高めの新しいヒールが、彼女の足取りに気品を添える。


そして、彼女の横には、セリーナの身長ほどもある〈絶対零度のロッド〉が置かれていた。


そのロット、表面は常に薄氷に覆われており、使用者以外の人が触れると、息を凍らせるほどの冷気を放つ。杖の先端には、砕けた星の欠片を思わせる青白い結晶が輝き、多分魔力のようなものは集中させている、すごくかっこいい。


***********************


体装備(上下):

SR ノクターン・ブルーム


装備効果:

‐魔法ダメージ+15%

‐受けたバフ時間延長+10%


セット効果:

‐一回だけすべての攻撃を防げるのパリアを生成する

(再使用時間:12秒)


***********************


足装備:

SR ミスティック・パンプス


装備効果:

‐受けるダメージ5%減少

‐魔法の発動時、硬直時間20%減少


***********************


SR 絶対零度のロッド


武器効果:

‐アブソリュートゼロビーム使用可能

‐凍結発生率 +10%

‐氷属性魔法ダメージ +10%


***********************


俺はこのスカートと靴のセット効果を見て、すぐに決めた。どんな攻撃も一度だけ防げる「パリア」。ゲームではあまり使わないが、この世界では大きな意味を持つ。


奇襲攻撃を防げる――それだけで旅の安全度は格段に上がるのだ。


セリーナは一人で旅をする。だからこそ、特に夜に何かあった時、少なくとも最初の一撃は防げるようにしておきたい。決して、決~して俺がセリーナにお嬢様系のスカートを着せたいわけじゃないんだからな。


俺は思わず装備ページのセリーナの全身像をくるくる回していた。


「やっぱり……かわいいよね。」


セリーナ:もう、いいでしょう。褒めすぎです。恥ずかしい……

セリーナ:で、でも、このスカート、どう見ても魔法使いの装備には見えませんよ。


「セリーナ、このスカートはね、魔法攻撃の効果を一割増やすんです。それに受けた補助魔法の効果時間も延びます。」


セリーナ:え?!そ、そんなに?!


「さらに、このスカートと靴を身につけると、12秒ごとに一度だけ、どんな攻撃でも防げる効果がある。これで奇襲攻撃の心配はいらないんです。」


セリーナ:す、すごい……。このスカート、売ったら一体いくらになるんでしょう。


「売らないでください。」


セリーナ:う、売りません。精霊さんは相変わらず過保護ですね。


「いいえ、女の子の一人旅ですよ。それくらいは普通です。セリーナは自分の容姿を過小評価しすぎです。」


俺は間違っていない。セリーナはかわいい。この時代のゲーム制作はAIが絡んでいて、昔のモブ顔はもう存在しない。プレイ動画で見たセリーナのキャラは、メインキャラ並みに整った顔立ちだった。おそらく彼女の悲しい結末に合わせて、美しく作られていたのだろう。確かに、あのサブクエストのラストシーンで亡くなるのが美少女でなければ、印象は残らない。


ただ、今のセリーナはまだ少し痩せている。このまま十分な食事を摂れば、きっとヒロイン級の美少女になるだろう。


セリーナ:もう、褒めても何も出ませんよ。恥ずかしいから、外ではローブで隠してください。


「え?以前のマジックローブもアップグレードして、かわいいケープになってますよ。魔力を上げるだけじゃなく、属性防御もローブより高いんです。」


セリーナ:ローブで隠して……いいですね。


「はい……。」


セリーナ:精霊さんの気持ちは嬉しいですが、こんな高級な服には慣れていません。

セリーナ:そのケープもかわいいです。

セリーナ:でも、せめて私がこういう服に慣れるまでは、前と同じようにローブで隠してください。


そっか、それもそうだ。俺は他のゲームでこういう装備に慣れているから、つい自分の価値観を押しつけてしまった。逆に考えれば、普段は地味な会社員の俺が、急にアニメキャラのコスプレ衣装を着るようなものだ。いくら「かっこいい」とされても、正直抵抗がある。


「ごめんなさい、セリーナ。ローブで隠しますね。」


セリーナ:いえいえ、こちらこそ、わざわざ作っていただいて、申し訳ありません。


「はい、この話は終わり。本題に戻りましょうか。」


セリーナ:あ、はい!えっと、今日は引き続き翠夢の森に行くんですよね。


「はい。昨日は転送ポイントを一つ解放しましたので、今から走れば昼には到着できるはずです。」


セリーナ:は、早いですね。


「今回は森ではなく草原を走りますから、障害物はそれほど多くありません。一直線で行けますよ。」


セリーナ:なるほど。


「セリーナが準備できたら、いつでも出発できます。」


セリーナ:はい、私はいつでも行けます。


「では、転移しますね。」



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【名前:セリーナ】

レベル 51


• 武器:SR 絶対零度のロッド 

• 頭:UR 星のヘッドピース  

• 体:SR ノクターン・ブルーム 

• 手:UR 月光のオペラグローブ

• 足:SR ミスティック・パンプス

• アクセサリー1  麻痺避けの腕輪

• アクセサリー2  マジックローブ

• アタッチメント:なし

• インナー:月のガーターストッキング 黒


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