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21 返済日

土曜の朝。


俺は村娘の格好で、ガンド村にあるセリーナの家へ転移した。


家には侵入の痕跡もなく、先週のまま。まさかとは思うが、家の“非公開設定”が本当に効果を発揮しているのか?……まあ、そんな都合のいい話はないだろう。多分、あの奴隷商人もセリーナが姿を消したことで、興味を失っただけだ。


さて、軽く売り物を用意して、市場へ向かおう。


セリーナの指示で、いつもの市場の端っこに露店を開いた。売り物は、ここ数日セリーナが作った小物たち。


セリーナ:たった一週間だけなのに、懐かしいですね。


俺は小さな声で返した。


「もし商人になりたいなら、すぐに儲かるよ。ストレージと転送があれば、一瞬で稼げる。」


セリーナ:それもいいですが……目立ちます。


そこへ、ひとりの痩せた婦人が近づいてきた。


「セリーナ?……あなた、この一週間、どこに行ってたの?」

「森で食べ物を探してました。」

「そう……無事で良かったわ。この肉、いくら?」


婦人は獣肉を買いたいようだ。


「1200Gです。」

「これを頂戴。」

「ありがとうございます。」


肉を大きな葉で包んで渡したその時――ミニマップに、赤い点が近づいてくるのが見えた。


セリーナ:精霊さん!あの人が村長です!


大丈夫、分かってる。


あの太ったおじさん――村長だ。以前、あいつの家に侵入したときに姿は確認済み。今は護衛らしき冒険者の男を連れて、こちらに向かってきている。


計画通りだ。村長から声をかけてくるのを待つ。


婦人に獣肉を渡したあと、村長は“心配そうな顔”を作って俺に話しかけてきた。


「セリーナ!この一週間、どこに行ってたんだ?心配したぞ!」

「ご心配をおかけして、申し訳ありません。森で食べ物を探していて、迷子になりました。運良く冒険者に出会って、今朝戻ってきました。」

「そうか……無事で良かった。」


そして、村長は声を潜めて俺に言った。


「戻ったばかりで言いづらいが……今月の借金、返済できるかい?」


その顔は、心配ではなく――金をせびる“搾取者”の顔だった。寒気がしたが、俺は事前に考えていたセリフを、周囲にも聞こえるように少し大きめの声で口にした。


「すみません、村長。うちのお父さんの借金、残りはいくらですか?確認したいです。」

「ちょっ……!」


突然の大きな声に、村長は驚いた。


周囲の視線が一斉にこちらに集まる。村長は慌てて、にこにこ顔を作りながら、小声で答えた。


「そうだね……残りは……28万Gだよ。今月分の2万Gは、返済できるかい?」


やっぱりだ。


村長は“利子”のことを隠している。俺はさらに、周囲に聞こえるように、はっきりと答えた。


「え?7年も返済して、まだ28万Gも残ってるんですか?!」

「しーーっ!しーーーっ!借金があることが知られたら、みんなに変な目で見られるぞ!」


村長は焦っていた。


“善人の仮面”が、少しずつ剥がれ始めている。


俺はカバンの中に手を入れ、事前に用意していた28万Gの金袋を取り出した。……金ってストレージに入れられないの、ほんと面倒だよな。


「村長、こちらが28万Gです。ご確認ください。」


わざと少し大きめの声で言うと、周囲の人々が徐々にこちらへ集まってきた。よし、傍観者がいれば、セリーナが“ちゃんと返済した”という証明になる。


村長は意外そうな顔をしながら、金袋の中身を数え始めた。


「……ちゃんと、28万G……」

「では、お父さんの借金はこれで返済完了ですね。よかった~。」


俺が安堵の表情を浮かべると、村長の顔がじわじわと怒りに染まっていく。そりゃそうだ。自分の計画が、目の前で崩れたんだからな。


「……いえ、まだですよ、セリーナ。いいか、借金には“金利”というものがあるんだ。お前の父親がオレに借りたのは200万G。その2割の利子を含めて、合計240万Gを返済しなきゃならん。今までに返したのは200万G。つまり、残り40万Gがまだあるんだ。」


うわ~……そのドヤ顔、マジで殴りてぇ。でも我慢、我慢。想定通りの展開だ。


ミニマップを見ると、青い点――村人たちがさらに集まってきている。


「えっ?!利子……?あと40万Gも?!」


俺の“驚き演技”に、村長は勝ち誇ったように声を張り上げた。もう周囲の目なんて気にしていない。


「そうだ!返済できないなら、オレもしたくないが――借金奴隷にするしかない!恨むなら、あんな借金を残して死んだお前の父親を恨むんだな!」

「……そんな……」


俺が“絶望したふり”を見せた瞬間、村長は「勝った」と確信したのか、手を伸ばして俺の腕を掴もうとしてきた。


だが――当然、避ける。


そのまま流れるようにカバンの中から、もう一つの金袋を取り出した。中には、きっちり40万G。


「こちらが、残りの40万Gです。これで――すべて返済完了ですよね?」

「なっ……!」



おおおおぅ!!



周囲の村人たちも、息を呑んで見守っていた。


村長は震える手で金袋の中身を数え、俺は涼しい顔で露店を片付ける。


皆の目の前で、確かに40万Gがあることを確認した村長の顔は――真っ赤になり、唇を震わせながら、こう叫んだ。


「そうっか……貴様!うちの金を盗んだな!!」

「はぁ?!」


セリーナ:せ、精霊さん!!どうしよう!


これはまずい。


セリーナが驚いているのも無理はない。この金が“自分で稼いだもの”だと証明するのは、正直かなり難しい。証明できるとしたら、エルドラーナさんくらいだろう。でも彼女は遠く離れたバールヴィレッジにいる。


この中世的な世界では、冒険者ギルドに売ったものにレシートなんて出ない。そしてこの村では――村長が一番地位の高い人間。彼の言葉は、ほぼ“絶対”だ。


……とはいえ、俺も一応社会人。こんな大事な場面で、最悪の事態を想定していないわけがない。


例えば――


村長が「返済していない」と言い張って、セリーナを無理やり捕まえる。借用書がないことを理由に、「金利は実は400万Gだ」と言い出す。あるいは、今みたいに「この金は盗んだものだ」と決めつける。


村長が「うちの金を盗んだな!」と叫んだ直後、隣にいた冒険者風の男が動いた。


おそらく、セリーナが返済できなかった場合に備えて雇われた“護衛兼捕獲要員”だろう。彼は今、セリーナの返済金――2つの金袋を“回収”するつもりで手を伸ばしてきた。


当然、そうはさせない。まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!


あの護衛は、たったのレベル14。俺との差は歴然。彼が露店の地面に置かれた金袋に手を伸ばす前に、俺はそれを横に移動させた。


当然、彼の手は空を切る。


驚いている護衛を無視して、俺はニコニコ顔で村長に言った。


「まず、この金は自分で稼いだものですよ。」

「お前!証明できるのか?」

「では村長も、ワタシが村長の家から金を盗んだことを証明できますか?」

「貴様がそんな大金を稼げるわけがない!この金は絶対盗んだに決まっている!」

「話が通じないようですね……村長。この金を受け取って、借金返済完了として借用書の魔法刻印を解除するか――それとも、あなたの悪事をここで全部バラすか。選んでください。」


俺の言葉に、村長と護衛の動きが一瞬止まった。


「な……き、貴様!やっぱり認めないんだな!やれ!この小娘を捕まえろ!」


そうか。じゃあ、全部バラすしかないな。


護衛の動きが“攻撃”と判定され、スローモーションが発動。俺は彼の足を払って、軽く横に蹴り飛ばした。護衛は地面に倒れ、苦しそうに脇腹を押さえている。


「うっ!」

「な、なにがあった?!」


村長も、周囲の村人たちも、何が起きたのか分からず、口を開けたまま固まっていた。


おっと、騒ぎで観客が逃げるのはまずい。俺は少し大きな声で、はっきりと言った。


「では――“ワタシは村長の金を盗んだ”と言った村長が、村のみんなの金を騙していたことを、ここで暴露します~~!」


その言葉に、真っ先に反応したのは村人たちだった。


『なんのことだ!?』

『なに!?』

『ホントなの!?』


村長は焦って叫ぶ。


「貴様!……か、勝手なことを言うな!皆さん!!彼女は嘘をついている!」


まだ何も言っていないのに、「嘘をついている」と決めつけるとは――


俺はカバンから、村人たちの借用書を取り出した。


「まず、この借用書を見てください!」


その瞬間、村長の顔が引きつった。“まずい”と悟ったのか、すぐにこちらへ襲いかかってきた!


「これはっ!……やっぱり!この金はオレの家から盗んだな!!」


村長の動きは“攻撃”と判定され、スローモーションが発動。俺は彼の足を払って転倒させる。


「うけぇ!」


倒れた村長が再び襲ってくるなら、もう一度足を払うだけだ。


俺は借用書を高く掲げ、周囲の村人たちに見せた。


「ここに、あと7枚の借用書があります。名前は伏せますが、すべてこの村の人たちのものです。」


その言葉に、外野の村人たちの中で明らかに動揺する者が現れた。当事者がここにいるのは運がいい。


俺は声を張り上げ、その方向へ向けて話を続けた。


「この7枚の借用書――借り手の名前はすべて違うのに、貸し手と借り手の拇印が全部同じなんです。

おかしいと思いませんか?しかも、中央の“魔法刻印”はまったく魔力を感じない。ただの絵です。これは、バールヴィレッジのギルド長にも確認済みです!」


そのとき、野次馬の中から当事者らしき男女が前に出ようとした。だが、村長と護衛の冒険者はすでに立ち上がり、借用書を奪い返そうと動いた。


当然、攻撃と見なされ――俺は再び彼らの足を払って倒した。二人が地面に倒れたあと、俺は周囲の村人たちに呼びかけた。


「皆さん!村長は皆を騙していました!証拠を隠される前に、彼を押さえてください!」


……しかし、誰も動かなかった。まあ、当然だ。村長はこの村の権力者。俺が野次馬だったとしても、きっと動けなかっただろう。


仕方ない。


俺は倒れた村長の背中を踏みつけた。


「うけぇ!おのれ!足をどけ!早く助けろ!護衛!」


護衛の冒険者が立ち上がり、村長を助けようと動いた。俺は鋭い目で彼を睨みつけた。


「動くな。動いたら、村長がどうなっても知らないよ。」


少し力を込めて、村長を踏みつける。……もちろん、こんな村娘の威嚇なんて無視される。


護衛は剣を抜いた。その瞬間、村人たちから驚きの声が上がった。


仕方ない。


斬りかかってくる前に、俺は護衛の手を叩き、剣が落ちる前に奪い取った。その剣を、彼の胸元へ突きつける。


武器を一瞬で奪われた護衛は、何が起きたのか分からず、自分の胸元に突きつけられた剣に驚き、苦い顔で両手を上げた。


俺はその剣を、村長の顔のすぐそば――地面に突き刺した。悲鳴を上げる村長を無視して、俺は話を続ける。


「もしかして、村長に騙された方ですか?」


邪魔者の動きを封じた俺は、当事者と思われる二人をこちらに呼んだ。


二人は恐る恐る近づいてきた。俺は借用書の問題点を見せながら、並べて比較してみせた。


拇印は――まったく同じだった。


借用書は普通、他人に見せるものじゃない。こうして並べて見ない限り、偽造はほぼ絶対にバレない。偽物だと知った二人は、すぐに村長に詰め寄った。


女性の方は冷静だったが、男性の方は怒りを露わにした。


「トビアス!!これは一体どういうことだ!俺の嫁がお前に借金して失踪したって言ったよな!?でもこの借用書は偽物だ!俺を騙したな!俺の嫁は俺を裏切っていなかったじゃないか!!」


この村の人たちには、真実を知る権利がある。ここまで来たら、もう一歩踏み込もう。


「もしかして――村長はあなたの妻を自宅の地下室に囚えて、ヤークという商人に奴隷として売ったんじゃないですか?」

「ヤーク?!俺の嫁がヤークに売られた?!」

「可能性はあります。村長の家の地下室には、証拠が残っているかもしれません。」


俺の足元の村長が、ビクッと震えた。……どうやら、図星らしい。


村長は彼の妻を地下室で監禁し、エロ同人みたいのことをして、飽きたら奴隷として売り飛ばした。夫には「借金して逃げた」と嘘をついて――やっぱり、クズだな。


それを聞いて、今度は女性の方が村長に詰め寄る。


「トビアス!うちの旦那が森で狩りをして亡くなったって言ったけど――亡くなる前にあなたに金を貸したって話も、嘘だったのね!?もしかして……うちの旦那を殺したの、あなたなの!?」


ほぅ……聞き覚えのある話だ。


「奥様。うちの借金の原因も、まったく同じです。父が森で狩りをして亡くなり、亡くなる前に村長に金を借りたと……」


この展開を見て、村人たちは徐々に俺の味方になっていった。俺は足を退き、男の当事者がすぐに村長を捕まえて問い詰める。


「貴様!俺の嫁を誘拐して、奴隷商に売ったな!それだけじゃない!俺の金も騙したな!言え!俺の嫁はどこだ!」

「嘘は言ってない!嘘を言ってるのはこの子だ!お前の妻は間違いなくオレに金を借りた!!」

「借用書が偽物だと証明された!」

「魔法刻印は本物だ!小娘の言うことなんか信じるな!」

「じゃあ、トビアス!この借用書を破ってみろ!もし魔法刻印が本物なら、借り手の俺は契約違反者として、手甲に奴隷印が現れるはずだ!さあ、破ってみろ!!」


男の当事者は、自分の借用書を手に、村長に迫った。村長は冷や汗を流し、何もできずに固まっていた。


その間に、この話は村中に広まり、他の借用書の持ち主たちも市場に集まってきた。


そして――男の当事者は怒りに任せて、自ら借用書を破った。……だが、手甲には何の変化もなかった。奴隷印は現れず、何も起きなかった。


当事者の七人が村長を責め立てる中、まずはセリーナの借金を片付けるべきだ。だから、男の当事者が村長を殴ろうとした瞬間、俺は声をかけた。


「トビアス!テメェ!俺の嫁をどこに売った!話せ!」

「待ってください!」


拳を振り上げた男は、俺の声に反応して手を止めた。そして、俺を睨むように見つめる。


「なんだ!」

「今、村長を殴るより――村長に騙された金と、賠償金をしっかり要求する方が先です。あなたはその後、奥さんを探して買い戻すにも金が必要でしょう。殴るのは……そのあとでいい。」


男は少し冷静さを取り戻し、拳を下ろした。よし、まずはセリーナの借金処理だ。


「では村長。流れ的に、うちの借用書も偽物ですよね?」

「貴様!貴様の借用書は本物だ!テメェの父親がオレに金を借りたあと、お前母子を捨てて逃げたんだよ!はははっ!」

「そうですか。では、ワタシはすでに借金をすべて返済しましたので――魔法刻印を解除してください。」

「オレは金を受け取ってねぇし!貴様のせいで、何もかも終わりだ!オレは絶対に解除しない!」


……おのれ。何かいい方法は――


その時、村人の一人が声を上げた。


「その金を村長の手に触れさせなさい。借金が本当に全部返済されていたら、魔法刻印は光るはずよ!」


ダニィ!?


「ありがとうございます!」


村人たちはすぐに俺に協力してくれた。


数人がかりで村長を押さえつける。理はこっちにある。誰も文句は言わない。俺は金袋2つを村長の手に乗せようとしたが、村長は受け取りたくないのか、拳を握りしめて抵抗していた。


仕方ない。


俺はその手を無理やり開いた。


ステータス差もあり、簡単に拳をこじ開けて、金袋を乗せる。その瞬間――セリーナの借用書の魔法刻印が光った。同時に、チャット欄にメッセージが表示された。



<条件達成しました、指輪を魔法刻印に触れて、契約を解除してください。>



……よし、これで決まりだ。指輪……


よく見ると、村長の指には成金趣味丸出しの赤い宝石がついた金ピカの指輪がある。俺はすぐにその手を掴み、指輪を借用書の刻印に触れさせた。


村長は抵抗したが、俺のステータスの前では無力。指輪が刻印に触れた瞬間、魔法刻印が消え、セリーナの借用書の文字も全部消えた。


セリーナ:やっと……やっと借金から解放されて、自由になれた。

セリーナ:精霊さん、ありがとう!本当にありがとうございます!


さすがに、こんな大勢の人の前でセリーナに返事をするのは気が引けたので、俺は静かに、軽くうなずいた。


流れで、その指輪を他の6枚の借用書にも触れさせてみたが、まったく反応なし。つまり、セリーナの借金だけが“本物”だった。


「では、村長。うちの借金だけは本物だったようですが――うちの父が亡くなったと騙されていた分、この金は慰謝料として返してもらいます。」


俺は先ほど渡した金袋2つ――約70万Gを、カバンに戻した。


「貴様ーーーー!!オレの金を!!」



そんな時だった。



「火事だ!!」



声のする方を見ると、村長の家が燃えている。


「なっ!」


そっか、あのサブクエストもこんな展開がある。プレイヤーが村に戻った時、村長の家が燃やされていた。証拠隠滅か!!


「もしかして…」


あの護衛の冒険者が、知らないうちにいなくなっていた!!


「ちぃ!村長を逃がさないようにお願い!ワタシは消火に向かいます!」


約100メートル先にある村長の家へ全速で駆けつけ、今使える水の魔法〈ウォーターボール〉と〈スプラッシュ〉を交互に使って鎮火する。


途中、知らない魔法使いのお姉さんも駆けつけて、一緒に魔法で消火した。手が空いている村人たちも井戸から水を汲んで到着した頃には、村長の家の火はすでに鎮火していた。


幸い発見が早かった。火の勢いは激しかったが、魔法による消火が間に合ったことで、二階にはほとんど火が届かなかった。


セリーナ:精霊さん!ミニマップ!赤い点が市場に向かってるよ!


「なに?!」


どうやら、あのサブクエスト通りの展開だな。放火犯の次の狙いは村長の命か?しかし今、市場には人が多い。もしかすると、目撃者を全員殺すつもりかもしれない。俺はすぐに市場へ駆け出した!


市場に戻ると、そこには他の冒険者が4名いた。こいつらが犯人か?でもリーダーらしき人物は、村人と普通に話している。


よく見ると、冒険者の中に大きな盾を持った一人が村長の護衛を地面に押さえつけている。村長は紐で縛られ、床に座らされ、村長に騙された被害者たちに囲まれていた。


明らかに、その冒険者4人は放火犯ではない。さっきの魔法使いも彼らの仲間だろう。偶然この村に来た冒険者か?


セリーナの借金はすでに片付いたし、その後はもう俺の出番ではない。一応、この村の住人として、この事件を見届けた。



その後、ガンド村のすべての人が市場に集まってきた。


冒険者たちはエルドラーナさんから派遣された調査員らしく、その後の流れは彼らが主導した。


村長と放火を行った護衛は縛られ、村長の家へ連れていかれた。家は半分焼けていたが、寝室の金庫は無事だった。そこには、貧乏な村の村長とは思えないほどの数百万Gの現金が入っていた。


村人たちの混乱を収めるため、村の外から来た冒険者のリーダーが金を預かり、被害に遭った人々に、それぞれの損失に応じて公平に分配した。


もちろんセリーナの分はない。一応うちの借金は本物で、今日返済予定だった金を回収できただけで、もう十分だ。


その金は村長の家から盗んだと言う人もいたが、俺は笑顔で拳で村長の家の壁に大きな穴を開けたあと、その人たちも黙ってくれた。ちゃんと話を聞いてくれる、いい人たちだった。


そして、村長の地下室も発見された。あれは酷い……子どもには見せられない部屋だった。残念ながら、中には誰もいなかった。


例の嫁を売られた男が、縛られた村長を問い詰め、嫁がいつもガンド村に来ていた商人ヤークに売られたことを白状させた。


さらに、ヤークの目的地も知っていたようで、男はすぐに金を持って村を出る準備をした。同じように騙された者として、彼が嫁を見つけ、買い戻せることを祈る。


詐欺師の村長……もう村長ではない。トビアスと放火を行った護衛は、領主様に報告後に奴隷印を付け、犯罪奴隷として売られることになるだろう。領主様にこの件を報告する必要があるため、しばらくは例の地下室に閉じ込めておく。今、ガンド村の村長は宿屋のおばあさんが代理で務めている。


俺はその結末を見届けたあと、静かにセリーナの家へ戻り、料理を作って、セリーナと別々に昼食をとった。

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