表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/99

22 罠?!

お昼が終わり、俺は再びセレアグの世界に戻った。


目に映るのはセリーナの家。手を動かして自分の体を確認する。うん、ちゃんとセリーナの体に入っているな。


ここは……セリーナの家の裏手。目の前には二本の枝が地面に静かに刺さっている。あ、セリーナが話していた、エメラルダさんの墓だ。


セリーナ:おえりなさい、精霊さん。


「ただいま、セリーナ。大丈夫?何も起こってない?」


セリーナ:はい、何も起こってないですよ。

セリーナ:あの冒険者たちが玄関で、話を聞いているだけです。

セリーナ:ちゃんと精霊さんが用意してくれたことを、彼らに話しました。


「そっか。あのヤークの商人がまたあなたを狙うかもしれないから、しばらくはここに戻らないほうがいいですよ」


セリーナ:ええ、大丈夫です。私もすぐにお父さんのところに行きたいですし。


「分かったわ。じゃあ、バールヴィレッジに戻って、旅の準備をしようか」


セリーナ:はい……精霊さん、ありがとうございます。


「お礼はもう言ったでしょう?」


セリーナ:えへへ……借金がなくなって、私はもう自由になれたこと、

セリーナ:実は、まだ実感が湧かないんです。


「そっか。そのお礼は、あなたのお母さん――エメラルダに言ってあげて。ちゃんと幸せになったあと、いい場所を探して、彼女のお墓を作りましょうか」


セリーナ:もう話してました。


セリーナがそう言ったあと、俺も静かに墓に一礼し、家に戻った。


マイセットでアリスの格好に戻り、バールヴィレッジのスラム街にある転送ポイントへと転移する。



--------------------------------------------------------


【名前:セリーナ】

レベル:49


・武器:「月影」と「星光」

・頭:星のヘッドピース

・体:星月のドレス(上下)

・手:月光のオペラグローブ

・足:星月のシューズ(黒)

・アクセサリー1:麻痺避けの腕輪

・アクセサリー2:マジックローブ

・アタッチメント:狐の仮面

・インナー:月のガーターストッキング黒(インナー下)


(この一週間で成長したスキル)


─片手剣:レベル6 → 12

─短剣:レベル12 → 18

─格闘:レベル5 → 7

─槍:レベル5 → 10

─魔法:レベル19 → 22

─走る:レベル20 → 25

─調合:レベル9 → 18

─料理:レベル9 → 15


--------------------------------------------------------



俺たちがスラム街の転移ポイントに転移した瞬間、真っ先に聞こえたのはこれだった。


「うわっ、本当に出た!!」


周囲の人たちの動きがスローモーションのように感じられた……攻撃されている?!


目の前には、少なくとも15~20人はいる。スラム街のチンピラか?……いや、冒険者だ。もしかして運悪く、スラム街でイベント発生のタイミングにぶつかったのか?


俺はすぐにミニマップを確認する。見事に真っ赤な点に囲まれていた。


一体どういうことだ?!



--------------------------------------------------------



時間は数時間前に遡る。バールヴィレッジのスラム街の朝。


片隅に根を張る男が、ギルド最高ランク5のうち中堅ランク4の冒険者たち3パーティーを、スラム街の広場の横へ案内していた。


スラム男は、正義感の溢れそうな男にこう話していた。


「ここだ。あのキツネ仮面の女は、時々ここに急に現れるんだ」


そこは何もない空き地だった。


本当にあのキツネ仮面の女がここに現れるのだろうか?


正義感の男は金と食べ物を彼に渡し、スラム男はいつも通り、スラム街の地面と一体化するように姿を消した。


その正義感の男は、冒険者中堅パーティー〈暁の誓い〉のリーダーだった。


彼は他のメンバーとともに荷物を下ろし、武器の整備を始めていた。


他の2パーティー――乱暴そうな男ばかりの〈爆雷の爪〉と、人族と獣人の混成パーティー〈鉄牙団〉も、同じように荷物を下ろし、生活用品を広げて野宿の準備をしていた。


〈暁の誓い〉の魔法使いの少女リリィは、リーダーのアレンにこう話しかけた。


「ねぇ、アレン。街に危害を与える人って、本当にここに現れるの?張り込みは構わないけど……思った以上に環境が悪いわ」

「セバスチャン様が調べたから間違いない。でも急に現れるってことは、もしかして魔法を使ってるんじゃないか?」

「転移って言いたいの?そんな夢みたいな魔法、あるわけないでしょ。そもそも属性すら分かってないし」

「ま、まぁ、領主様の依頼だからな。断るわけにはいかないし、もし目標が現れなかったとしても、ここで一週間過ごすだけで30万Gがもらえる。この仕事が終わったら、次はまた領主様の依頼でクリスタルゴーレムに再挑戦する予定だ。うまくいけば、俺たちはあの守られた遺跡に入れる最初のパーティーになるぜ」

「はいはい、分かったわ。でも例のキツネ仮面の女性って、一体誰なの?この街の冒険者ギルドでは、ここの3パーティーが一応最高戦力よ。彼女を捕まえるために、3パーティーを一週間ここに張り付けにするの?」

「俺にも分からない。ただ、あのキツネ仮面はギルドの教官を倒せるほどの実力者だし、先日は領主様の宝物を盗んだらしい」

「ま、まぁ……対人戦になるなら、痺れのスクロールをいつでも使えるようにしておくわ」

「ありがとう」


広場の反対側でこのやり取りを見ていたスラム男。最初は「ここで美女をタダで見られるなんてラッキー」と思っていたが……まさかこんな展開になるとは思ってもみなかった。


午後2時頃。彼女が現れた。いつものキツネ仮面の女だ。


スラム男は、彼女が突然現れるのを何回か目撃していたため、驚きはなかった。先日、領主の使いと名乗る者が彼女を探していると知り、この情報をその者に売ったのだった。


現に、キツネ仮面はたった一人で、この街でほぼ最強とされる3パーティーと対峙していた。


「うわっ、本当に出た!!」


〈鉄牙団〉のウルフの獣人が、素早いスピードでキツネ仮面を捕まえようとする。


もう終わりかと思ったその瞬間――その獣人は、逆にこちら側へ吹き飛ばされた。


(な、なんだ?)


スラム男は好奇心からその獣人を見てみると、その獣人も何が起きたのか分からないという顔をしていた。


はっとして、すぐに立ち上がる。まさか……蹴られたのか?あの仮面の女の子に?この獣人の身長は、あの女の子のほぼ倍あるのに!


そのあと彼が見た光景は……完全に一方的だった。


獣人は再び彼女に向かって跳びかかり、他の前衛たちも止めることなく、合計5人が一斉に仮面の女に攻撃を仕掛けた。


その場面はあまりにも速すぎて、スラム男の目では何が起きているのか分からなかった。


キツネ仮面に斬りかかった者が一人。もう一人は、またしても吹き飛ばされた。飛ばされた前衛たちがどんな方法で反撃されたのか――スラム男には分からない。


それなのに、キツネ仮面はほとんどその場から動いていなかった。


一体どういうことなんだ……?


3パーティーの前衛たちは、何度倒されたのかも分からないほどだった。


彼らは一段落ついたところで息を切らしながらヒーラーのもとへ向かい、回復を受けていた。

そしてその時――仮面の女は、冒険者たちに向かって奇妙な質問を投げかけていた。



--------------------------------------------------------



俺達がガンド村からバールヴィレッジのスラム街に転移のあと、突然襲われた。


幸い、襲ってきた冒険者たちのレベルは平均20くらい。装備も見た感じではNやR程度で、ステータス差のおかげで襲撃時の攻撃はすべて遅く見える。


武器を出すと絶対にややこしくなる。まずは、なぜ襲ってきたのかを聞きたい。


襲ってきた前衛は合計5人。タンクたちは後衛の弓使い、魔法使い、ヒーラーを守っている。


俺は動かず、前衛の攻撃をひたすらパリィし続けた。え?パリィで大丈夫なのかって?


攻略サイトの解説では、パリィは最高の防御手段。ゲーム内では達人技とされていて、攻撃を受ける瞬間、「パリィ閃光」と呼ばれる部位にヒットすると、ボスにはダメージ無効と怯みを発生させ、それ以外の敵には攻撃をそのまま跳ね返して吹き飛ばす技だ。


すべての攻撃のパリィタイミングが異なるため、攻略サイトでは“やり込みの達人技”と呼ばれていた。ただ、この世界ではステータスの影響で彼らの攻撃が遅く見える。だから、パリィ閃光の発生時間も長く見えるわけだ。


これはあくまで防御。ここはガンド村とは違い、傍観者はいない……いや、いたとしても俺の味方ではない。


あの村長の護衛……いや、あの見張り役とは違って、彼らを蹴るのはまずい。足を払って転倒させるのが一番いいが、いつ矢や魔法が飛んでくるか分からない。攻めてくる5人を相手にするなら、最も動きが少ないパリィが最適だ。


パリィを続けて、たぶん数分。


前衛たちは息切れを始め、ヒーラーたちはすぐに回復を施している。魔法は撃ってこない。なら、先に話し合いを試みるべきだ。


「皆様は強盗には見えませんが、なぜ襲ってきたのか、ご説明いただけませんか?」


凛としたトーンで問いかけるも、皆が変な目でこちらを見ている……え?分からない?言葉は通じているはずだが。


定番のネコ耳女獣人の弓使いが、別の男の弓使いとタイミングを合わせてこちらに矢を放ってきた。矢に見えたパリィの光を捉え、それを叩くと、放たれた矢はすべて弾き飛ばされた。


正義感のあるリーダーの男が、痛々しい表情で腹を押さえながら立ち上がり、剣を持ち直して女魔法使いの前に立った。


「くっ!リリィ!痺れのスクロールは!!」

「5枚、すでに使い切ったよ!あたしもずっと〈パラライシス〉を使ってるけど、全然効かないし、能力低下の魔法も通らない!こいつ、どんだけ魔抵抗が高いのよ!」

「なに?!」


え?!あ~よかった。


この前、セリーナが解毒魔法を習得したから「毒避けの腕輪」はもう必要ないと言われた。確かに解毒魔法があれば、毒よりも他の状態異常を防ぐ腕輪を付けた方がいい。


石化は、発動者のレベルマイナス3以下の相手にしか効かない仕様だから、この世界ではたぶん無視していい。


呪いは回復不能になるが、ダメージ自体はない。睡眠はすぐに自分に攻撃すれば解除できる。炎上も毒と同じく固定ダメージだから、回復魔法でなんとかなる。一番危険なのは、体が動かなくなる麻痺だ。だから先日、完凸の麻痺避けの腕輪を作っておいた。


セリーナ:……まさか、こんなに早く麻痺避けの腕輪が効く場面に遭うなんて。

セリーナ:精霊さん、ケガとかしてませんか?


(大丈夫だ、問題ない……ありがとう、セリーナ)


俺は頭を少しだけ頷かせた。


ゲームでは、襲ってきたPKには逃げるか戦うかの二択しかない。いつもの俺なら、逃げる一択だ。


でも、この世界では逃げるのは良くない。また追い詰められるだけだ。今も、スラム街の転送ポイントは特定されてしまったし……。


いや、待て。転送ポイントの付近って、安全地帯じゃなかったのか?


……もしかしてゲーム内では街全体が戦闘不能エリアだけど、街中の転送ポイントは例外で、安全地帯に設定されていない?


確かに森の転送ポイントを使ったときは、チャット欄に「安全地帯に入りました」って表示が出た。この転送ポイントは出なかった……ま、まぁ……今後はできるだけ街中の転送ポイントは使わないようにしよう。


って、話を戻そう。


PKに出会ったときの選択肢は、応戦か逃走。でも、何も知らずにここにいる全員を倒したら、セリーナが衛兵に捕まるかもしれない。


……結局、話し合い一択か。


「もう一度伺います。皆様は強盗には見えませんが……なぜ襲ってきたのか、ご説明いただけますか?お答えいただけないようでしたら、ここにいる全員を賊と判断し、剣を抜きますよ」


隙を見せない知性的なトーンで告げると、それを聞いて驚いたのは軽装備で隻眼の男だった。


「なっ!?格闘家じゃないだと!?こんなにパリィされたのに!?」


ずっと素手でパリィしてたから、勝手に格闘家だと思い込んだのか?おいおい、こっちは魔法使いのローブに、中は華やかなドレスだぞ……格闘家はないわ。まあ、俺も武器を出すつもりはないが。


でも、このまま返事がないなら、普通にこの場を離れてギルドに通報するしかないか……。


ここで、どうやらお遊びはここまでのようだな。


なぜか、また周囲の動きが遅く見えた。


そんな中、ただ一人、普通のスピードで……いや!ボス並みの速度で、冒険者たちの上から、レイピアを構えた白髪の老執事が俺に向かって飛びかかってきた。


狙いは……俺の左肩?


周りはスローモーションの中なのに、動きが遅くない。こいつ、他の連中とは格が違う。


思わず「セバスチャン」と呼びたくなるような老紳士に警戒しつつ、名前とレベルを確認すると――



セバスチャン LV39

二つ名:神速の剣影



ガチのセバスチャンだった。しかも二つ名持ち!


クエストやメインストーリーの助っ人NPCか?いや、これはもうボスクラスだろ。そんなセバスチャンが、通常のスピードでこちらに鋭い突きを放ってくる。


いきなりボス戦かよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ