愛と憎しみ リチェル視点
お久しぶりです、よろしくおねがいします!
「リチェルカ、私はあなたに失望した。」
あらそう?
ですが私の記憶が正しければあなたは私が生まれたときから私とお母様を目の敵にしてたようですが。
「ほんと、私の実の娘として恥ずかしくないのか?」
何がです?ああ、あの脳無し女がこの国のバカ王太子を誑かし、私を悪人に仕立て上げたことですか?
それとも長年かけて洗脳し続けたのにあまり効果がないから逆ギレしたのですか?
「だが最終的に君は私の実の娘だ。だから今ここで申す、今日にて君を王族から、貴族会から追放し、二度とこの国の領地を踏まないことを命じる。」
ああ、これは前世で言いますと武士の情けっと言うのですね......
......ち、アホらしい。
私は知ってるよ、あなたが今の王妃を娶る為私がまだ幼い頃私達の母上を殺したことを!
思えば私、リチェルカ・ヴィオレッタ・ソナチェが生まれた国は辛い程つまらないなかった。
まあ、こういうのも何だが私を生んでくれたお父様、即ちソナチェ王国の27代目国王は所謂婿養子で、本当の王位継承権は私の実の母と私の方にあるが、お父様とお母様の仲はとても睦まじいと言われてきた。
そう、『言われてきた』。
ほんと、あの男はどんだけクソなんだ。
当時まだ幼かった私だって感じられた、父は、あの人は何かおかしいと。
だってそうだろう、この国は一夫一妻制度なのにあの男は王宮の別邸に女を匿い、そしてこの国の由緒正しい血筋を持つ母は別邸にいる女が私より年上の男の子を生んでしまったから、王族に汚点をこれ以上付けさせたくないからと黙っていた。
だけど私の幼少期は血がつながっている兄が二人、姉が四人いたから前世読んだ本みたいに悲惨ではなかった。
「リチェルカ、お父様を絶対に信用してはいけません、だってあの人は別邸にあの平民の娘を匿い始めてから私達を何度も殺そうとしたのよ。」
「そうだリチェルカ、確かにあの男は私達が幼い頃に母上と仲睦まじかったがあの平民の娘が子供を生んでから母上と僕たちに何度もひどい目を合わせ、母上がリチェルカを生むときだって「ヴァイズお兄様!!」」
「にいちゃま、ねえちゃま?」
「ううん、なんでもないです、ほらリリス、ランダ、ヴァイズ、スウ、ベアル、リチェルカ、もうすぐ乗馬の練習の時間ですわ、参りましょう。」
「「「「「はい、ヴィクトルお兄様!」」」」」
思い返せば確かにこの事はまだ5歳の私に重すぎる話題だった。
だがあのとき年が一番離れてるヴィクトルお兄様だってまだ14歳で、そのせいなのか私は物心がついた時から実のお母様や乳母より兄妹といる時間が多かったし、そんな日々がずっと続くと思っていた。
だが、違った。
11歳の冬、私は人生で初めて王宮の廊下を走り、やっとの思いでお母様の部屋に到着した頃にはお母様は帰らぬ人になっていた。
どうなっているんだ、どうしてこうなった?
私はずっと自分に問い続けた。
だって母が亡くなる前日、私は王宮の花園で偶然母様に会い、一緒にアフタヌーンティーを堪能した。
その時お母様は元気そうに笑っていた。
私も笑って私が今何を習っているかや最近兄妹はどうなっていたのか喋っていた。
だけどあの医者はお母様が慢性的な病気に苦しまれて何週間もベッドの上で起きられなかったという。
は?なにそれ聞いてない。
それは私だけじゃなく他の兄妹みんな同じだった。
でも他の人はそう思ってなかったらしく、私達兄妹は貴族だけじゃなく平民にまで『自分の母上が奇特なのにほったらかしにした親不孝の王子と王女達』と噂された。
そして母上がなくなってからまだ一年も経っていないというのにあの男は別邸に匿っていた女を王妃と仕立て上げ、あの女の息子は晴れて第三王子となった。
だがその同時に第一王女のリリスお姉様と第二王女のランダお姉さまはそれぞれ他国にある伯爵家の60代ジジイへ妻に差し出され、第一王子のヴィクトルお兄様と第四王女のスウお姉さまは他国に留学という名義で飛ばされて、残った第二王子のヴァイズお兄様はなんとか反抗しようとしたんだが反逆罪で牢屋に打ち込まれた。
「リチェルカ、ごめん、ゴメンね、こんな弱いお姉さまで、本当にゴメンね......」
そうやって私の前で跪きながら泣いている第三王女のベアルお姉さまは自分の身の危険を感じたのか、それとも自分のお腹に好きな人との子供ができたせいなのか、他国で出会った騎士と共に駆け落ちすることを決めた。
「いいですわ、だって私が消えたらこの王宮を守る王族がなくなりますわ。」
「。。。。。。。。。。。。。」
本当はこの国とか王族なんかどうでもいい、
でも私だって知っている、私はお姉さまにとってただの足手まといだと。
だから、
「ベアルお姉さま、どうか、お幸せに。」
由緒正しい王族後を引いてる人しか開けられない王族極秘の通り道の入り口で私はお姉さまの背中が消えるまでずっとそこにいた。
それは私が12歳になったばかりの春、第一王子のヴィクトルお兄様と第四王女のスウお姉さまが『不運の事故に巻き込まれた』話を聞いた数日後の事だった。
“ピチャ!”
「は!」
額に水滴が落ちてきて、私は悪夢から目覚める。
周りを見渡せば暗闇と湿気しかなく、私は起きようとするが膝や関節的な部分が痛くて仕方なく、座るのに時間がかかった。
「はあ、」
私以外の王子や王女が消え、別邸にいたあの女の息子は晴れて王太子になった。
そして私が国に追い出される数ヶ月前、あの脳無し女セレナ・ケレンドルは突然短期留学という名目で現れ、あのバカ女の遺伝子を確実に受け継いだ息子はちゃっかり騙された。
ハハハ、ほんと、あのバカ女と息子の言葉に耳を向けるあの男もアホだったけど、でもお蔭様で小さいが私は私自身の部隊と人脈を作り、今このリナレード王国にもスパイが数名いる。
“キーバタン”
この牢獄から誰かが来るなんて珍しいな。
ほんと、スパイと部下達はこんな乱暴かつ真正面に来ないからな。
「リチェルカ・ヴィオレッタ・ソナチェ第五王女」
な、この人は!
「まあ、どちら様でしょうか?」
でも、どうしてこの人がここに?
「申し訳ございませんでした、実は「姉さん。」」
「え?」
兄妹を失ってからずっと一緒にいた部下幼馴染の言葉を切ったのは懐かしい声といい方だった。
「な、あなたリチェルカ様になんて!」
「姉さん、俺だ。」
「......どう、して?」
どうして、だって、
「姉さん頼む、時間がないんだ、話を聞いてくれないか?!」
「無礼を知りなさい!リチェルカ様申し訳ございませんでした、この無礼者をすぐにでも追い出します。」
「いい、」
「ですが、」
「いいんだ、その、二人で話したい。」
「......かしこまりました。」
私の前世では一人の弟がいた。
その弟は生意気で、ガキ臭くて、でも私にとっては可愛い弟だった。
だがある日私はもうすぐ卒業する学校の先輩が酔っ払ってホームから落ちた瞬間を目撃し、その先輩が落ちる瞬間大きい黒い穴に落ちていくとこも目撃した。
そしてその日から私はまるで何かに巻き込まれるかのように体が吸い込まれそうで、何度も抵抗した私はこのままではダメだと自覚し、弟に親を託す電話をするもののあの生意気な弟は電話に出ず、私は仕方なく自分でも馬鹿げたと思う手紙を配達速度が異常に遅いと評判の宅急便で送った。
数日後私も交通事故に巻き込まれ、前世の最後の記憶は車にはねられる直前になにか大きな黒い穴に吸い込まれそうだったこと。
まあ、私の前世のことはさて置き、
問題は私の前世の弟の方だ、
「......姉貴頼む、もし俺がこの世界の強制力でおかしくなったら......」
私の目の前にいる彼はもうすぐ自分が自分じゃなくなるのを知っている、知っているからこそ彼は私の手を掴みながら前世と今世の最初で最後の頼みを私に託す。
「何よ、それ、」
「姉貴!」
「いい加減にしてください、今度の今度は許しません!」
兄妹を失ってからずっと一緒にいた部下幼馴染が私を守ろうとする、でも、
「いいの、ちょっと下がって頂戴、」
「ですが、」
「下がって。」
「......はい。」
湿気と暗闇しかないこの牢獄には私しか収監されておらず、私の体はその中で日に日に弱っている事を眠りから覚めるたびに実感し、そして偶に死神の足跡が聞こえるぐらい精神がやられている。
でも私は後悔なんてしてない、
「それと、勘違いしないで、前世の弟のあんたに言われなくても私はエモリアを守り通す。」
そう、例え私があの脳無し女セレナ・ケレンドルソナチェ王国にいる奴らに復讐ができなくても、私はあの時からずっと彼女を守ってみせると誓ったのだ。
「......姉貴、」
「ふ、何だその顔は、
大丈夫、私は何があってもお前の可愛くて優しい生徒会長の姉ちゃんだぞ。」
そう、それが私が今世で私の前世の弟、秋内翔と話した最初で最後の言葉、
そして数日後、私は“翔がペドルアになった”とスパイからの連絡があった......
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