嘘、
宜しくお願いします
『裏山にある例の場所』
言われなくてもすぐ分かる、
そこにはこのクソゲーのいろんな事が書かれている翔さんとの思い出が詰まったあの部屋だ。
あたりが暗く、夜行性の動物が姿を表す頃、
私は小さい灯りを持ちながらその部屋がある小さな建物の前に立っている。
「はあ、やっとここへ着いたのになんか複雑な気持ちですわね。」
ほんと、最初はエーナの無実を証明する鍵を見つけるためにここへ来ようとした、でもその時ペドルアと暗部達に見張られて、そしてやっと彼らを振ったと思ったらペドルアにプロポーズされて、そしたらあの美少年さんからピンク色のマカロンの知り合いだとカミングアウトされて......
まあ、私がやっとここに来られたのもペドルアが約束守ってくれたお蔭ですがやはり人様の建物に、しかもそこはメリエード伯爵家よりよほど格上のお方の建物になんの許可もなく入るなんて前世で言う不法侵入じゃないですか。
そして、もしバレたら......
いいや、自分が犯す罪に弁解する気はないけどやはり生き抜くためにはしょうがないことですわ。
ええ、そうよエモリア、今ここで入らないでどうするの!
「ふう、」
よし、
“キー”
「ケホッケホ!」
久しぶりに入るこの部屋は案の定ホコリまみれていて変な匂いがするが部屋の中の書類は、あの某ニュース番組でも顔負けなボードはあのときのまま置いてある。
でもこの部屋の中は私しかおらず、多分美少年さんはまだ来てないので私はエーナに関する資料を探しに行った。
「あ、あった、」
ええっと、
『全年齢版
エーナ・セナルデン侯爵令嬢、ゲーム中は“セイントーラス学院”在学、現騎士団長の息子エベルトン・ツイッカーター伯爵令息の婚約者。
ゲーム内ではエベルトン・ツイッカーター伯爵令息、幼馴染のネイズ・ミラボー伯爵令息と学園一の女ったらしのゼレバウス・ケーヴァル侯爵令息ルートの悪役令嬢。
エーナ・セナルデンはゲーム内では一番の負けず嫌いで、小さい頃から想いを寄せていたゼレバウス・ケーヴァル侯爵令息に振り向いてもらうため勉強や行事に励むが彼女の親は何故か彼女の家より格下のエベルトン・ツイッカーター伯爵令息との婚約を進める。』
......ん?ゼレバウスって誰?それに何かの違和感、
まあ、もうちょっと読み進もう。
『エベルトンルートでは自分の婚約者が他の女に取られるのが彼女のプライドを傷つけるため二人の仲を邪魔しようとし、最終的に事実を知ったエベルトンとケレンドル公爵は怒り、セナルデン侯爵家を強制的に破産させ、お家と領地を返上させ、エーナをとあるスラム街に放り出された。』
うあ、怖いわ。
『ネイズルートでネイズはゲームが始まる頃エーナのことが好きで、エーナに婚約者がいることもゼレバウス・ケーヴァル侯爵令息が好きなことも知ってるため何もしなかったがゲーム進行と同時に彼はセレナの可愛さに惹かれてく。ゲームの終盤に入るとエーナは強盗に会い体が自由に動かせないため家から追い出され、ネイズは主人公と結婚する決意をする。』
......は?あの、このルートではエーナは何もしてないのですよね、それに体が自由に動かせないからって家から追い出されるって、ええっ、
それにネイズも何ナノ、エーナが強盗にあって体が自由に動けなくなった挙げ句に家に追い出されたから主人公と結婚しようとしたの?
はあ!?どんだけクソゲーなの!!
おおっと、自分らしくなく取り乱してしまいましたわ。
ほんと、次!
『ゼレバウスルートではエーナが小さい頃から想いを寄せている人がある日突然主人公だけ目に入らなくなったため嫉妬心が燃え上がり二人の仲を邪魔しようとする。』
ああ、このルートではちゃんと悪役になるのね。
『だが二人の仲を邪魔しようとする時自分の母親と血がつながってないと知らされる。』
ん?
『そのことを知り、自分の子供の頃を振り返ったあと改心すると決めるが現実はそうさせず、周りは彼女が実は隠し子だと知った途端離れていった』
ネイズ、ネイズはどこ!?
今こそあなたの番でしょう、それとも何?あなたの愛は血筋で決めるものなの?!
『そしてエーナは学園と社交界から姿を消し、何処の馬の骨ともわからない庶民の男と結婚し、幸せに暮らすのでした。』
良かった、幸せになれたのね!
って、えええ!!
ゼレバウスは?ネイズは!?
それにこの説明書なんかその庶民の男に偏見をお持ちのようね!
まあその前に私があのどこの馬の骨ともわからない男の人間性を確かめさせてもらいますが、
『だが数年後社交界にてエーナが生んだ子供の髪色はゼレバウスと同じターコイズブルーであると。』
は?ああ......
..................で、主人公の方はどうなったの?
『そしてある日、エーナと庶民の男は子供とともに行方不明いなる。でもおかしな事に数日後、すなわち主人公とゼレバウスが結婚する前日に三人が最後に目撃されたという服がボロボロになり現れる。社交界からの噂によるとその服が見つけられた頃とほぼ同時にケレンドル公爵家直属の騎士が大怪我を負い近くの川で倒れていたと.......』
.......昼ドラじゃん。
エーナ、エベルトンのルートでしか悪役らしいことしてないじゃん。
え、なにこれ、このクソゲーよく売れたな、よく第二、三部も続けたな。
「っていうかこの書類に欲しい物書かれてないじゃん。」
どうしよう、翔さんはペドルア役だったから私以外の悪役令嬢に関する書類がものすごく少ない。
この書類以外にないかな、エーナに関する資料.......
.......あれ?
『紫色のマカロンについて』
紫色のマカロン、それってピンク色のマカロンを唆し戦争を巻き起こしたあと世界の主導権を握ったマカロンだよね。
私はその書類をめくろうとした時
“パラッ”
とある写真がひらひらと床へ落ちた。
「え、これは......」
最終的に、美少年さんは来なかった。
でも今の私はそのことはどうでもいいと思う。
朝が訪れる象徴となる光が地面を照らし、部屋の窓から少しだけ差し込む。
私は部屋のベッドに座り、膝においてある『紫色のマカロンについて』と書いているカバーページをマジマジと見ている。
“コンコン”
「。。。。。。。。。」
「どうぞ、」
なんでしょう、まだ朝食の時間になっていませんのに、
「まあ、メリエード伯爵令嬢お早い時間に起きてらっしゃるのね。ちょうどペドルア坊ちゃまがサロンに来るよう命じていますわ、まだご令嬢のあなたにはお早いお時間かもしれませんがさっさとお支度してはどうかと。」
このメイドさんは新入りでしょうか?言葉上私に対するトゲがまだ抜いてない。
「ええ、わかりましたわ、では支度しますからお外で待機できます?」
「ですが、」
「よろしくお願いしますわ。」
私は今あなた達にかまってる余裕などありませんわ。
「......かしこまりました。」
メイドさんに連れられて来たサロンには何故か安物王子もいる。
「まあレオール様もいらしてたのですか、レントルス公爵令息、ごきげんよう」
「ごきげんよう、」
「ごきげんよう、さあ、早くソファーにおいで」
何、朝っぱから、
「ええ、お言葉に甘えて」
“コンコン”
「失礼します」
その聞き覚えがある鈴の音とともに安心するハーブティーの香りがする。
そして私がドアの方向へ向く同時にこの数ヶ月間ずっと会いたかった姿がうちのメイド服を着て私がお気に入りだったティーセットを使って私が一番好きなハーブティーをティーワゴンで持っていくる。
「......リチェル......」
ずっと、ずっと会いたかった。
そっか、あの安物王子が約束を守ってくれたんだ、リチェルを開放してくれたんだ......
「エモリア様、ずっと、ずっと会いたかったですわ......」
私もそうだった、
でも、今は何故だろう、目の前にいるリチェルが私が知るリチェルとなんか違うような、
それに、その書類に書かれてることも気になるし......
「エモリア様?」
「ううん、私も会いたかった。ただ急に現れたから少し驚きましたわ。
レオール様、ありがとうございました。」
「いい、エモリアの為ならこれぐらい平気さ。」
胡散臭い。
「コッホン」
あ、ペドルアが拗ねてる、フフ。
「そんなことよりエモリア、昨日の夜よく眠れたか?」
「レオール様?どうしてこのことを聞くのです?」
「レントルス公爵令息、」
「ええ、まあ、あまり大したことはないんだが昨日の深夜、裏山に火事が起こったらしい。」
「え、」
「なんか裏山に小さな建物が噴火してね、その中で僕の家の暗部さん部員の一人が何故かその火事に巻き込まれて、
ああ、エモリアは覚えてるか、その女の子の子みたいな顔をしているボボ・べデリアという人だ。」
え、
え、でも、どうして?
え?
「どうしたんだ、エモリア具合でも悪いか?」
あの場所が、あの思い出が詰まった場所が、
その前にあの美少年さんがやられた?
どうして、だって昨日の夜そこで私になにか言うはずだったのに......
............嘘、
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