もう少しマシな理由考えられないの?
本日二回目、宜しくお願いします
ドアノブが少しずつ回転し、冷え汗は私の背中で垂れている。
“ドッドッドッドッドッ”
胸あたりから危険を察知したという警報が鳴っても私が祈りに祈っていてもドアノブの回転は続き、最終的に“カタッ”ていうドアが開けられる直前までの音がした。
うう、もう、終わりですわ......
ミミ、エーナ、私の分までちゃんと生きていてね。
“パッ”
「。。。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。。。」
あ、あれ?
ドアは細目を開けたままで、部屋の外からはまだ何も見えていない。
「まあ、なんの真似ですの?
レントルス公爵家直属の暗部部員はレディーの手首を掴むという乱暴な真似をするよう命じられているのでしょうか?」
どうしたんだろう、
普段は悪役令嬢たちの中で一番賢くて冷静なエーナがそんな熱くなるなんて。
「......申し訳ございません。
ですが先程メリエード伯爵令嬢がお越しになり、具合が悪くなったのご様子なので今この部屋で就寝中です。」
「え、エモ、メリエード伯爵令嬢がですか?」
「大丈夫なのか、あいつ、ちゃんと薬飲んだのか!?」
「まあ、ベネザル男爵令嬢、話し方が少し殿方に似てきてますわ。
ですが私も心配です、先程はサロンの中でメイドも誰も来なかったのはこの事のためだったのですね。
ほんと、メリエード伯爵令嬢はご無事なのですか?」
こ、この性悪女!!
「ご令嬢達が思い合うのはレントルス公爵家のものとして喜ばしいことです。ですがメリエード伯爵令嬢はただ精神的に荒れていただけでお医者様はもう大丈夫とおっしゃっておりました。」
は?
「精神的に?どうしてですか?」
エーナ言う通りですわ、後で口裏を合わすことに重要な点ですもの。
「そ、それは、」
嘘、この美少年さんまさか理由とか考えてないの??
「大丈夫ですわ、ここは私たちしかいませんですし、もし私たちが出来ることならばなんなりと言ってください。
ですがその前に私はメリエード伯爵令嬢がこうなった理由が知りたいのです。」
や、やばいですわ、この説明に違和感があるともうこの性悪女に勘付かれた、
ど、どうしましょう、そうだ、その前に服を......
......いや、その前に私を縛っていた鎖とか、
いいや、この部屋に満ちた変な匂いを嗅がれた時点でもうアウトですわ!
「そ、それはちょっと......」
美少年さん!!
お願いですから理由とかなんでもいいからでっち上げて!!
「もし、もしそちらが理由を教えてくれないのでしたらせめて私達にメリエード伯爵令嬢が安らかに眠る姿ぐらい見てもいいでしょうか?
彼女はなんて言ったって私の未来の妹ですわ!」
う、うああ、
よく言いますわ!
本当は脳内24時間私達悪役令嬢たちをどう貶めようか考えているのに。
それに“未来の妹”?
ほほほ、誰が?誰のですか?
ほんと、性悪女さんはご冗談がお好きで!
それに...... ......ん?
いきなり背後から上質な布が私を包み、その安心感とぬくもりは私の思考を一瞬止まらせた。
「大丈夫、俺達がついてる。」
そして背後からポンと両方の肩を叩かれて、気づいたら身だしなみが整っているふたりの美少年がの背中が大きく見える。
“キュン”
さっき、一瞬翔さんが......
いいえ、気のせいでしょう。
って、この二人いつ着替えたんですか?
しかも先程着ていた服より少しだけよく見えません??
「誰だ!!僕の婚約者がまだ寝てるというのに。」
れ、レオール??
ええっと、あなたの方が一番声がでかいと思いますけど......
一方ペドルアは私をドアからの死角へと連れ、いつの間にか出した白いワンピース風の履きやいけれど脱がしやすいパジャマをくれた。
こ、この二人、まさか、
いや、その前に私、何か忘れているような......
そしてレオールが外へ行っている間ペドルアは私をベッドに導き私少しだけ濡れてる布団の中で普通に寝かせようとした。
まあ、寝かせようとしたけど最初っから疲れていた私は布団の中に潜り込んだ瞬間で睡魔に襲われ、もう一度目を覚ましたらそこにはミミとエーナが心配そうにこっちを見ていた。
「。。。。。。。。。」
あ、布団が乾いてる、いや、ほかの部屋に移ったのかな?
その前に、
ど、どうしましょう、私、まだあの二人と口裏合わせていない。
「馬鹿!!もう、そんな抱え込まないでくださいよ、心配したんですからね!」
いつも冷静なエーナは泣き叫び、隣にいるミミも少し涙目になっている。
「あ、う、」
「聞いたよ、あんた本当はリチェルというメイドと小さい頃から仲が良くてそのメイドが不敬罪で連れられてからレオールと何回も喧嘩したらしいって、」
いや、確かにリチェルは私の大事な人ですけど、兄様とその件で仲が悪くなったけど、でもレオールと喧嘩って......
「ったくあんたって、そんなに悲しいならどうして私に、私達に言わない?じゃないとレントルス公爵家でメイドがハーブティーを溺れただけで泣き叫ぶ失態などなかったのに......」
は?
「泣き叫ぶ?」
私が?
「は!?嘘だろ覚えてないのかよ、ったくあの安物王子が言ってたよ、ずうっと“リチェル、リチェル”と叫んでたらしいぞ。」
はあああああ!!!
おおっと、レディーにふさわしくない事をしてしまいました。
ですがあの二人組はもう少しマシな理由ぐらい考えられないの?
「そうですよエモリア嬢、あの時は本当にどうしようかと戸惑っていたのですから、」
ペドルア、人が話してる途中にいきなり部屋に入り込まないで、
しかも“最初っからここにいたよ~会話の中に混ざっていたよ~”ってみたいな顔やめて欲しい。
「そうだな、だが前回僕も王家の人間として少し大人げ無かった。じゃあそうしよう、今回は少しだけ誤解があったことで報告する。」
いやあなたも......
......ん?
「れ、レオール様?!」
ああ、いたんだ性悪女。
「悪いなセレナ、エモリアがもうこうなった以上僕たちにも責任はある。」
「エモリア......ねえ、」
いや、やめて、私は何もしてないし何もわからないからそんな親の敵を見てるみたいな顔本当にやめて。
「セレナ?」
「いいえ、そうですわね、メリエード伯爵令嬢がもうこうなった以上私もそう願いたいですわ。」
ええっと、それって、
「そうだな、今から城に戻ってあのメイドを釈放する手続きをしないとな。」
え、そんな、
そんな簡単に事が進んでいいの?
「ですね、あと今日はもう遅いしメリエード伯爵令嬢はここにお泊りしてください。」
ん?
んんんんんんんんん?
そしてことはトントン拍子で進み、気がついたら悪役令嬢たちも性悪女もレオールも帰っていった。
“チクタクチクタク”
時計の針の音だけがこの部屋に響き、私は天井を見ている。
今日はいろんなことがありすぎて少し眠れないわ。
ほんと、ミミとエーナには悪いことをしてしまいました、それに今日のエーナは少しだけ......
『だって4人の悪役令嬢の中で一人は消息不明、二人は転生者、それじゃあもう一人は普通のオレンジ色のマカロンだと思えるか!?』
うう、
ミミのその言葉が頭の中で響き、以前から封じられていた違和感や疑問が爆発しそうで怖くなった。
もう、このままではダメですわ、
何か、何かエーナが無実だってことを表す証拠を......
......そうですわ、そこならなにか見つけられそうですわ!!
あ、でも、どうやったら......?
誤字、脱字及び気になる点などありましたらお気軽に感想欄や活動報告のコメント欄に書いてくれたら嬉しいです。(待っています~~)




