もう一度だけ レオール視点
宜しくお願いします
王宮にある僕専用の書庫は国立図書館と比べると少し狭いがソファーは三人用で、狭いほど秘密を共有するのに匹敵で、だからいつしかそこは僕が息抜きできる秘密基地にもなっていた。
「はあ、」
だが今はそれどころじゃない、
「これで決まりだな、レオール。」
「。。。。。。。。。」
「レオール!」
僕は眼の前にいるご令息達の決心した顔を見て、渋々うなずいた。
「......ああ、わかった、そうしよう。」
そう、セレナが階段の上から突きされてからもう数日が経っているが、僕たちはまだ犯人を捕まるどころか特定すらしていない。
いいや、“特定すらしていない”には語弊がある。
実はたった今、その容疑者が見つかったのだ......
思い返せばセレナの意識は例の事件から数時間後に取り戻し、回復師からも後遺症がある可能性は低いと診断された事には正直僕もホッとした。
だけど意識を取り戻したセレナはまるで誰かを庇っているように自分で転んだの一点張りで捜査は難航としていた。
だが数時間前、僕たちの仲間であるガルトラ・ソートベータ辺境伯令息がセレナはエモリアに突き落とされたと言い、そしてそれと同時にセレナはミラボー伯爵令息にくれぐれも僕とエモリアの兄、エドルア・メリエードには言わないでと言っていたらしい。
「う、嘘だ......」
だって、エモリアに限って、
「見たのか?」
「ん?エドルア?」
「ネイズ様、レオール様、あの時、本当にエモリアがいるところを見たのか?」
「......そ、それは、」
確かに犯人は1年の制服リボンを着けていた、だが、それだと言って、
「ああ、そうだ。」
え?
「ミラボー伯爵令息?」
「悪い、あのとき実はメリエード伯爵令嬢の顔が見えたんだ。」
「じゃあどうして言わなかった!?」
「セレナに頼まれなんだ!!!」
「は?」
セレナが?
「だってエモリア・メリエードはエドルア様の妹で、レオール様の大切な婚約者でもあるから、だから自分のせいでこの関係を壊したくないんだって......」
な、そんな、
セレナは以前、僕に「嘘は嫌い」「正直に生きていたい」と言ったことがある。
それなのに今、彼女は僕達の為に嫌いな嘘をついている。
「どうしてなんだ、本当は辛いのに、それなのに俺とレオール様のために......」
ああ、エドルア様の言う通り、セレナは本当に天使みたいに優しい少女だ。
だが数分後、どこかのご令息が「セレナが公にしたくないのならせめてエモリアに警告しに行こう」と提案し、反論できる立場ではない僕は彼らの行動に渋々頷くしかなかった。
エモリアが僕たちのせいで倒れてから数日、僕は自分がした事に後悔しなかった事は一秒もない。
「はあ、」
だが僕直属の暗部によると最近セレナがいじめられて、そしてその現場付近にいつもエモリアの姿が確認されるという。
これは、偶然か?
そうだったらどうしていつも現場付近にいる?
信じたい、僕は愛する婚約者を信じたい、でもどうやったら彼女の無実が証明できる?
“コンコン”
誰だ?
「入れ。」
「レオール様!!」
ああ、メリエード伯爵
「何ですか、いきなり。」
「実は、」
メリエード伯爵お義父さんによるとセレナが階段から突き落とされた事が一部の貴族達に漏れて、そして今何故かその犯人がメリエード伯爵邸の人間だと噂されている。
「レオール様、エモリアは、エモリアに限ってそんな事はありません。」
ああ、そうだ、僕もそう信じたい、だが、
「だが今はどうやったらエモリアを噂から守ることだ。」
ではないと僕の婚約者はエモリアではなくなり、そしてエモリアは貴族界からは追放される。
「それなら私にお任せください。」
このメイドは確かエモリアの専属メイドのリチェルで......
......ま、まさか!
「私を不敬罪として捕まえてくださいませ。」
「そ、そんな、それでは!」
エモリアは、
「旦那様、レオール様、私はエモリアお嬢様にお仕えできてとても幸せです。ですからエモリアお嬢様のためならばこれぐらい平気ですわ。」
「だがエモリアは、」
「フフ、やはりエモリアお嬢様を大事にしてたのですね。」
「な、」
どうして、いいや、その前にこの気品、オーラそれに立ち振舞......
「ゴメン、ほんとゴメンな、リチェルカ。」
「いいえ、ですが旦那様、そしてレオール様、2つだけ約束してもらってもよろしいですか?」
「なんだ?」
「1つ、この事は私達だけの秘密で、エモリアお嬢様にもケレンドル公爵令嬢にも誰も言わないでください。」
セレナにも?どうしてなんだ?
「約束してください。」
「ああ、わかった、約束しよう、それともう一つは?」
今は時間がないからそう約束するしかない。
「それと、もう一つの約束は......」
「......様、レオール様!」
「あ、ああ、」
なんだ、セレナか、
「どうしたのです、レオール様?」
ああ、そうだ、今日は確かセレナの婚約披露パーティーで、
それでエモリアがやたらとペドルア・レントルス公爵令息とイチャイチャした挙げ句に“しょうさん”という聞いたこともない人をやたらと大切にしてるみたいで
そのせいで僕は先程男としてのスマートさを忘れ、エモリアと衝突してしまった。
まあ、確かに僕にも至らぬところがあった、それは認める。
だが婚約破棄って、僕ではない他の男を愛してるって、
ク、
「もう、レオール様ったら、具合でも悪いのですか?」
「ああ、いや、なんでも。」
眼の前にいる傾国の美少女の目には僕への心配が詰まっている、それなのにさっきまで口論になっていた婚約者は無関心にこっちを見ている。
ああ、今になってリチェルあのメイドの言葉がわかった気がする。
そう、あの時、リチェルあのメイドはこう言った:
「それと、もう一つの約束は、レオール様、これからもっとエモリアお嬢様への愛を御本人にさらけ出して、どうかお嬢様を振り向かせてください。」
そうだ、そうだったな、僕はエモリアに一度も僕の気持ちと覚悟を伝えてない、それに、10歳の時の社交デビューでさえエモリアが10歳になってなかったからセレナと一緒に踊り、セレナをコケそうにさせたことがあったことがちょっとしたトラウマになり、それ以来パーティーでは踊った事が無い。
ああ、そうだ、僕とエモリアにはまだ時間がある、だから今から彼女を振り向かせたい。
いいや、今からじゃないともう遅い気がする。
ああ、エモリア、エモリア、僕の愛しいエモリア、いつ、何処で君の心に他の男が住み着いたんだ?
知っているよ、僕は最初っから君に愛されていなかった、だからこんなに頑張った。
でも今になってわかったよ、多分僕は努力する方向が間違っていたんだ、だから僕は“しょうさん”あの男に負けた。
だがこれが僕はこの負けを認めない、絶対に君を振り向かせてみせる、だからもう一度、もう一度だけ、君を振り向かせるために頑張らせてくれ......
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