ありがとう、それと、ごめんなさい
宜しくお願いします
個室、それは貴族の用語で示すとレデイーが足を休む場所或はパーテイー最中で男女が足を運び18禁をするところを示す。
だけど毎回パーティーが行われるたびに個室はほぼ満室になり、多くの貴族がこのせいで犬猿の仲になってしまったらしい。
そのせいでこの国は数年前に貴族順制度という権力や財力が大きいほうが個室を得られる法律ができた。
......うん、まあ、しょうがないですよ、だってこの世界自体がただのクソゲーですもの。
ちなみに侯爵家以上のご家庭には毎回1部屋確保されてるとか。
でもペドルアさんはどういう意味で私を個室に招待してるの?
そもそもペドルアさんは私があの安物王子の婚約者だってわかってるよね、私達が一緒にいるところを世間様に、いいえ、他の貴族様にバレた時点でもう貴族界から追放されるんですよ!!
“ドクンドクン”
ほら、最近だんだん弱くなっている私の心臓でさえ警報を鳴らしています、でも、流石に相手はペドルアさんだし。いいえ、これは一人のレデイーとしてよく振る舞わなければ。
いや、でも、
「おいこら!!エモリア・メリエード!!!聞いてんのか、どこにいる??!はよ応答せんかい!!!」
“キーーーーン”
う、うあ、耳が、耳が!!!
「エモリアお願い、返事して、無事でいて!!」
「エモリア、返事、して、僕、不安......」
「誰だ、どこにいる!?メリエード伯爵令嬢どうかご安心を、僕があなたを守りますから!」
“キュン”
あれ?“キュン”??何が??
ああ、いやいや、多分もう総合的にいい歳だから少女漫画みたいなシチュにキュンとするんだ。
うん、そうそう、多分いい年してアイドルの追っかけをし始めるみたいに私の心も年のせいで弱っているんだ、
だから、
「いいえ、大丈夫ですわ、では、私はここで失礼いたします、今日はありがとうございました、お茶会楽しみにしてますわ。
ごきげんよう~」
私は失礼が無いよう彼にお辞儀し、どこか人気がない場所へと向かおうとする。
まあ、そうですね、さきにイアリング越しで騒いでるあの人達に説明しないと、
と、次の瞬間私の右腕に“ギュッ”捕まえられた感覚がして、気がついたら私眼の前にはたくましい胸があり、そして私の右側の首筋には“トン”とペドルアさんの頭が乗っかっている。
“カチャ!”
あれ?なんか音しませんでした?まあ、気の所為でしょう。
でも、その前にこれって、もしかして......
“ペロッ”
「きゃ!」
でもペドルアさんは私に考える時間などくれず、同時に首筋に舐められたときの濡れた感触が私の脳を刺激し、体全体をゾクゾクさせる。
“フー”
「いやっ!」
次はなんですの、もうどうして耳に息をかけるのです?
“ドクンドクン”
ですからもううるさい、静かにして!!
「フフ、ねえ、エモリア伯爵令嬢、あ、呼んじゃった、」
あ、呼んじゃったではありませんよ、恋する乙女ですか?
っていうかもう
「離してください、苦しい......」
「ヤダ、もう離さない、どこにも行かせない、」
あれ?
「ねえ、エモリア伯爵令嬢はレオール第三王子と一緒にいて幸せなの?」
「え、それは......」
それは、幸せって言いますと嘘になりますけど......
「ね、でも僕と一緒なら違うよ、だって僕だったら「どこが違うのです??」」
そう、どの殿方も同じ、例えそれはあの安物王子でも、翔さんでも、私が変に意識した途端に他の女に媚びにいく。
「エモリア伯爵令嬢?」
「離してください、それから話しましょう。」
正直私自身もこんなに冷たく話せるなんて思っていなかった、そして私を抱くその温もりが消えた途端に何故か虚しさと寂しさに襲われ、体が一瞬“ブルッ”となる程寒く感じる。
“ツーン”
うう、痛い、どうしてでしょう、胸がまたナイフに刺されたように痛い。
「もう、離しましたよ、」
「ええ、ありがとうございます......」
「......その、僕に教えていただけませんか、エモリア伯爵令嬢は今本心でレオール第三王子と結ばれたいのですか?」
「......いいえ、ハッキリ申し上げますと私とレオール様の間はもう冷めきっておりますわ。」
「なら、なぜ??」
「あなたと同じですから。」
「え?」
そうでしょう、あなたの家の一族がもう婚約している性悪女と結ばれたて欲しくないから、だからあなたは偶々側にいた私を選ぼうとする。
「フフ、わかっていますわ、私達は今日一人大切な人を失いました、ですからいいのです、今日のことはただの血の迷い、お互い忘れましょう。」
「答えになっておりません、あなたは、エモリア伯爵令嬢はどうしてまだレオール第三王子と婚約を結ばれてるのですか??」
「......別れたくても別れなかったのです。」
「どういう意味ですか?」
どうしてでしょうね、私は何故あまり知り合っていないペドルアさんにこんなこと話すのでしょう?まあ、多分、翔さんと顔が、いいえ、この人は翔さんで翔さんはこの人ですからかな?
なんか、彼なら全部話せるような......
「あなた様も知っている通り、もしどこかのご令嬢が王族の誰かと婚約を結ばれて、その王族のほうから婚約破棄された場合、そのご令嬢には貴族界から欠陥品というレッテルを貼られ、二度と婚約ができなくなると。」
「ええ、ですがもし両方が平和に別れ、或いはご令嬢から婚約破棄する場合全てがなかったことみたいに王族とご令嬢両方に新しい婚約が結ばれますが......まさか!」
「もう、いいです、もう、これが私の運命なのです、ですから今はこのまま私の宿命を嫌でも飲み込むしかないのです。」
でも私はただの運命に囚われたくない、だからいつかこの運命自体を覆して見せます、
「だが、」
「レントルス公爵令息、もう、いいのです。」
「あの、僕にできることはありませんでしょうか?」
「あ、う」
「僕にできたら、なんでもやります。」
「そうですの、では、一つだけ、」
「はい、なんなりと申し上げください!」
ほんと、やめてほしい、あなたが本当は私が好きなんだと勘違いするじゃない、
「では伝言を頼みたいのですが、」
「はい、誰にでしょう?」
でも、此時、いいえ、この瞬間だけあなたを翔さんだと思わせて。
「......伝言の内容はこちらになります:
何度も助けてくれてありがとうございます、
実は私、あなたに会うまで本当にこの世から去っていこうと思っていたんだ。
でもあなたは私にこの世の真実を、この世をどう生きるかを教えてくれた。何度も、何度も、私みたいな何も知らくてバカな私に怒鳴りながら私に知られないように優しく、丁寧に。
リチェルの時だって、私は家族に捨てられるんだと思っていたときだって、私のそばに居てくれたのは誰でもなく、あなただった。
ほんと、もしあなたがこの世に居なければと思うと、体が恐怖で震える程、私はあなたに救われていた。」
いつの間にか私の目の中から何粒の熱い雫が溢れて、目が合ったペドルアさんは突然なことに戸惑っている。
でも、今の私は自分自身を止めることはできなかった。
「ごめんなさい、あなたは私に大切な事を、思い出をいっぱいくれた、それなのに、私はあなたに何もしてあげられなかった、
もし、もしあのとき国王陛下と王妃に婚約破棄する事を阻止された時に直接、あの安物王子と話し合っていたら、私がもっと令嬢らしく、もっと強く振る舞っていれば、もっと行動力があっていれば、もっと、もっと......
いつしか私はあなたを頼り、独立できない程に頼りまくって、駄目になっていたかもしれない。」
「エモリア嬢......」
でも、大丈夫、私は少しずつ独立していきます、ですから、せめて言わせてください、
「ごめんなさい、翔さん、ごめんなさい、約束、守れなかった、それなのに、私は......」
私は、あなたの事が......
あれ、今私、なんて?
「しょう、さん?」
「は!」
嘘、何やってるんですの、私、
彼はペドルアさんよ、私が大ッキライなあの性悪女を愛してるのよ。
それなのに、
「ごめんなさい、伝言はこれまでです、ありがとうございました。」
「え、エモリア嬢!!」
私は後ろから叫ばれた声をあえて無視し、逃げるかのように去っていく。
でも私は知らなかった、その時ペドルアさんと木の陰に隠れていた男の人がどんな顔をしていたのか......
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