どうやら今まで私は運がものすごく良かったらしい
宜しくお願いします
薄暗く、少し不気味なこの建物を入った途端、そこには建物からもらった印象通りの古くてボロい家具が飾られていて、でもその家具のすべてが古い時代の高級品だとひと目で分かる。そしてその奥にあるホコリ被った赤色のソファーには一人の少女が半分寝転んだ状態でこっちを不審な目で見ている。
その少女はこの建物には似合わない可愛くてキレイなワンピースを着ており、同時にその桜色の髪の毛もまるでどこかのお嬢様みたいにサラサラで綺麗だ。
だが、一つだけ、彼女の腕や足には素人の私でも人為的だと分かるいろんな傷がいくつもあり、そして彼女の可愛いほっぺたにも一箇所だけ紫色の打撲痕がある。多分、この内出血が収まってもあとぐらいはつくのでしょう。
でも、私が驚きのはこれからだった。
「ミミ・ベネザル男爵令嬢......」
そう、ミミ・ベネザル男爵令嬢は私とエーナと同じくこのクソゲーの悪役令嬢の一人。 確か翔さんの情報によると彼女のルートにいる攻略者のうち二人がもう性悪女に攻略済みで、もう一人は攻略される手前だとなんとか。幸い彼女が悪役になるルートには隠れキャラが存在しておらず、エーナと私みたいにそのキャラを警戒しなくてもいいらしい。
でもそのアザ、打撲痕、まさか、性悪女達に?
「はあ、エーナ・セナルデンこの平凡顔は誰だ?」
う、私が一番気になってることを......
はいそうですわよ、私はこの貴族界の中でも悪役令嬢の中でも一番平凡で、唯一夜会で語られるネタはレオールの婚約者としてのみ、いいや、今はあの性悪女をイジメる最低女としても語られますが、ですが平凡がなんですか?
いいじゃないですか、平凡だって、誰かに聞いたことが無いのです?『人生は平凡が一番、新鮮さや華々しさをリアルで追求すると本当に戻れなくなるから』と。
まあ、これも前世での友達が言ってた言葉ですが。
「ああ、ベネザル男爵令嬢、申し訳ございません、この御方はエモリア・メリエード伯爵令嬢で、多分ですが私達と同類です。」
同類?まさか、エーナ!
「ほう、そうか、じゃあお前も知ってるんだな、ここがどこか、そして私達の本当の敵は。」
「え、その、あの、」
嘘、まさか、この人って......
「すみません、私個人の都合で何も説明せず連れてきました、ですが彼女は裏切りません、これだけは信じています、そうですよね。」
何言ってるの、当たり前でしょう、
だけど問題はこのミミ・ベネザル男爵令嬢。もし私が正しければ彼女は私と同じく転生者だ、でも、エーナの知り合いとはいい、彼女はまだ敵か味方かも分からない。
よし、ここはとぼけてみましょう。
「え、ええ、そうですが、いきなりなんですの?」
「ほう、では、エーナ・セナルデン侯爵令嬢とエモリア・メリエード伯爵令嬢、こちらへおいでください、お茶をご用意しますわ。
勿論、メリエード伯爵令嬢が大好きなハーブティーで。」
やはり、転生者だ、それに私は今試されてる。
駄目ですわ、私は今丸腰状態であると同然、これはなんとしてもごまかさないと。
「まあ、ありがとうございますわ、ベネザル男爵令嬢。
それとエーナは本当にベネザル男爵令嬢とお親しんですね。」
「え、」
「え?エーナが私の好みをベネザル男爵令嬢に教えたのでは?」
「え、ええ、そうですわ、あの、ベネザル男爵令嬢、先に例の部屋に行ってもいいですか?」
「ああ、いいぞ。」
聞きたいことは山ほどあるけど、それはエーナのその真剣な顔を見た途端に口が開かず、歩いていく殺風景で薄暗い廊下には私とエーナの足音しかない。
「......ごめんなさい。」
「エーナ?」
どうして、どうしてまたあなたが謝るのですの?
本当は謝る事ではなく説明してもらいたいのに。
もう、今回ばかりは耐えられません、ですから、
「ねえ、エーナ、そのミミ・ベネザル男爵令嬢は一体何者ですの?」
「......エモリアにはご存知でしょうか、その、最近数名の令嬢によからぬ噂が流れてると。」
「ええ、私もその一人ですものね。」
「あ、う、」
「いえ、本当のことですから。」
「それでは私の噂もご存知です?」
「エーナに?」
「やはりそうでしたか、実は私にもいくつか殿方達と遊んでるとか、本当はもう節操なんてモウ無い、とか、なんとかで......」
あ、あの性悪女!!
私の親友に何してるんですの、それってあなたのことじゃない!!!!
「エーナ、それは気にならなくてもいいのよ、だって私はあなたを信じてるもの!」
「エモリア、ありがとう、でも、幸い私も一部の後輩に信用されてますから大事にならなかったのですが、ですが、私達以外にも数名、良からぬ噂が流れているご令嬢がいるのよ。」
「それって......」
「ええ、その一人がミミ・ベネザル男爵令嬢。」
「ですが、どうして、」
「私達のご両親には権力があり、運もありますから今まで変な目に合わずに済んだのです、ですが、ベネザル男爵令嬢は運が悪く、噂が数日以内にエスカレートし、最終的にクラスメート達に暴力を振られた挙げ句に退学処分を強制的にされたのです。」
「そ、そんな、」
あ、でも確かに聞いたことがあります、私の噂が少しだけひどくなってたときに一人3クラスの人達に殴られながら学校を辞めさせたご令嬢がいると。
でもその時私は自分の事でいっぱいいっぱいでしたから最終的に何もできなかったのですが、でも、その騒動からもう数ヶ月たった今でもこんな多く傷があるというなら当時はどれだけ酷かったか......
「エモリア、あなた本当は薄々気づいてるんでは、本当は誰がこんな酷い事をして、誰が私達を貴族界から追放しようと、」
いいえ、エーナ、あの性悪女は私達を貴族界から追放どころか私達を侮辱する挙げ句に処刑するつもりよ、
でも、今言ってもいいのでしょうか......?
「あ、ここですわよ」
私が考えてる間にエーナは止まり、一つのドアの前に立っている。
ですがエーナは手をドアノブではなく地面につけ、そして地面にある小さいあのに手を伸ばし、数秒後そこには一人ぐらい入れる幅の階段が現れた。
その、凄いですね?なんかスパイ映画に出てくるようなお通路で、うん。
いや、違うんです、すごいは凄いんですがなんか微妙っていうか、もっと派手な通路とかあったらびっくりしますのに。
「どう、エモリア、びっくりしたでしょう。」
あ、そうだ、この世界ではスパイ映画とかなく、微妙っていう感じは多分前世での記憶が左右されてるからだ。
だからここはこの世界のご令嬢らしく、
「ええ、本当に言葉が失うほど驚きましたわ!」
よく言えたわね、ほんと、元声優さんからの演劇指導のお蔭ですわ。
「驚くのはまだ早いですわよ、さあ、こっちへ!」
私はエーナの後ろに付き、その暗い階段をさがって数分、やっと光が見えてきた。
「おお、やっと来たか。」
え、嘘、この声は、
「嘘、ベネザル男爵令嬢?」
「おお、お前たちが遅いから先に来たぞ。」
この人絶対にどこかの秘密通路から来たでしょう、じゃないとそんなに早くお茶を準備し、先にこの部屋に向かってた私達を追い越すことができませんもの!
「もう相変わらずですわね、ベネザル男爵令嬢。」
「ああ、そうだ、エーナ・セナルデン、実はティーカップを持ち忘れてな、私の足がまだ完治してないようだから代わりにとってもらっていいか?」
「ええ、いいですわよ、あのピンク色のでいいですかね?」
「いや、白いカップでよろしい。」
「え?あ、ええ、もちろんですわ、少々お待ちください。」
「それでは私も、」
「いや、エモリア・メリエード、お前はここに残れ、少しだけ聞きたいことがある。」
「あ、うん、はい。」
「では、エモリア、ベネザル男爵令嬢、後ほど、」
「ああ」
「ええ、後ほど。」
“バン!”
あ、やっぱりここには他の入口があった!
「では、エモリア・メリエード伯爵令嬢、少し疑問かあるますがよろしいでしょうか?」
え、なんでいきなりかしこまってるんですか?
「え、ええ、いいですわ、何でしょう?」
「フフ、ではここは遠慮なく直球で聞きますわ、どうして秋内翔さんと同盟になり、そして彼に協力しようとしたのでしょう?」
「え?」
どうして、翔さんの前世でのフルネームが?
しかも......
誤字、脱字及び気になる点などありましたらお気軽に感想欄や活動報告のコメント欄に書いてくれたら嬉しいです。(待っています~~)




