こんにちはそっくりさん 2
アルフとアルフとそっくりな顔を持つ若者の目がばっちりとあった。
「どうして廃棄したはずのお前がここに?」
小首を傾げ言葉を発した若者に、アルフはあっけにとられた。その間アルフの肩に手を置いている執事の顔はアルフを振り返ったりまた若者に向けたりと忙しい。
「は、廃棄ってなんだ」
「そのままの意味さ、君は僕が一年前魔法で作ったんだよ、二十年後の自分が見たくてね、興味本位さ。時間に関係する魔法は危険だってそこのじいやがうるさいからじゃあ作っちゃえと思って。しゃべるように設定したんだけど動かないし失敗だと思ったんだけど起動に時間がかかるタイプだったんだねぇ、どう?不具合とかない?」
ほけほけと重大なことを言ってのける若者に、アルフも執事も口をあんぐりと開けたままだ。
「お、俺は人間ですらなかったのか……?」
記憶を失ってはいるが、アルフには自分は人間のおっさんであるという自覚があった。だからこそおっさんなりに頑張らなければといつも思っていた。だというのにこの目の前の若者はその小さな小さな矜持さえのんびりとした口調でへし折った。
「あれ?もしかして記憶って形成されてないの」
「あ、ああ、自分がアルフって名前とおっさんだって事しか……」
「ふーん作るときにおっさんおっさんとだけおもってたからかなぁでも名前……アルフってどっからでたんだろなんで僕の名前じゃないんだ?」
「だ、旦那様、”アルファ”ではございませんか?」
「ああ!そっか適当に実験体アルファとかって呼んでた呼んでた!それをアルフって記憶しちゃったんだね君!すごいや!」
などとはしゃぐ若者とは反対にアルフはどんどん怒りが込み上げてきた。
勝手に作って勝手に捨ててなにがすごいやだ!
アルフは怒りのままに握ったこぶしに熱が集まるのを感じた。
「あっちゃああああああああ」
アルフが怒りに任せて罵声を投げかけようとした数舜早く、執事がアルフから距離をとってそのまま庭の中央の噴水へ飛び込んだ。
執事の声に驚いて怒りの霧散したアルフだったが自身のこぶしが真っ赤に燃えているのを目端にとらえて驚愕した。
「お、おおおおおれもえてる!?」
「あれ、魔力暴走起こしてるの?それってでも赤ん坊が良くやる奴だよねぇ……?」
「何をのんきなことを言ってるんですかぼけっちゃま!」
のんびりとした若者の横からいつの間にか戻ってきていた執事が濡れネズミ状態で叫んで若者をアルフから遠ざける。
そして深呼吸をした執事は大きく腕を振り上げると、アルフの頭を狙うようにその腕を振った。
次の瞬間、大量の水がアルフの上から降り注ぎ、アルフは意識を失った。