おっさん(満二歳)武器を手に入れる3
「フレイヤさん!!」
アルフはボロボロのナイフときれいなままのナイフを持って武器屋に走った。走ってそしてルルンに聞いたのだ。
フレイヤが作らせた二本の木のナイフに使われた木の秘密を。
「昨日の…どうした?」
「あの、ありがとうございました」
フレイヤがいつも武器についての指導をするときに頼む木の武器は、あえて柔らかい木を使って作られていた。
一日握っていると、手の汗と握っている圧力で手の形になじんでいくようになっているのだと、ルルンは笑ってアルフに「確かにちょっと強引だけど…それも無謀な冒険者を助けるためなのよ」と言った。
武器の性能に頼って魔物に殺されてしまう冒険者がここセクンドゥスには多いのだそうだ。
始まりの街である程度力をつけて意気揚々と街道沿いに魔物を倒し、武器を手に入れその勢いのまま慢心し強敵に挑んで敗れる。そんな冒険者をフレイヤは見ていたのだ。
ただ声をかけ、注意を促しても調子に乗った冒険者は聞く耳を持たなかった。
だからフレイヤは武器屋で身の丈にあわない武器を購入しようとする人間に、強引に鍛える方法を選んだのだそうだ。
女性に、そう、とても美しい女性に負けた冒険者たちはその後慢心を捨て、己の技量の研鑽を積むようになったからだ。人間は美しいものに弱いものなのである。たとえその相手が武器フェチだとしても。
「ミズガル王国の第二王女、そして王国騎士副団長としてこの地にいる人々は皆守るべき命だ。貴方の命の糧になれたのであれば嬉しいよ」
アルフからの感謝を受け取ったフレイヤは美しく笑って、職務の途中だからとアルフに背を向けて町の巡回に戻った。
アルフはその背中に深くお辞儀をして手の中のボロボロの木のナイフをぎゅっと握った。
「貴族のお遊び」という言葉に対するもやもやはいまだ晴れないが、アルフは何か胸が熱くなった。
次の街に行くにはもっと鍛えなければならないと、アルフは心に決めたのだった。
エルからもらう金で冒険者を雇って護衛にすればいくらでも街から街へ移動できるが、アルフが見たいのはあの洞窟で見たような、冒険の先にしか見ることのできないものだ。
そこに思い至ってアルフは下げていた頭をガバッと上げた。
「そうか、俺は冒険者として見てくれなくてそれで…腹が立ってたのか」
アルフは笑った。
インセペットでは感じたことのない感情だったからもやもやしたんだな。
なんて考えると胸のもやもやが晴れた気持ちになっていた。
この街にくる途中で出会ったレクタに農夫と勘違いされた時には感じなかった気持ちだということに、この時アルフは気が付いていなかった。
これでまた一区切りでございます。
貴重なお時間を使ってここまで読んでくださって本当にありがとうございます。
次章アルフの初恋をテーマに考えておりますが、予定は未定につき、別のテーマと前後いたしました時には笑ってお許しください。