おっさん(満二歳)武器を手に入れる1
翌朝、アルフはフレイヤとの約束の場所に来ていた。
どんよりとした雰囲気である。昨日夕方、修理を終えたナイフを受け取ったが、同時に木のナイフを二本渡され、彼女は有言実行ですよ。とルルンに耳打ちされた事を思うと、無視するという選択はアルフには出来なかったのである。
「美人なのに無駄におせっかいな人というか、なんというんだろう、こう……」
アルフはフレイヤの顔を思い浮かべて、そうつぶやいた。インセペットのギルドの受付嬢ルーメンとはまた違った部類の美人であるフレイヤ。
長い赤髪に負けず劣らず派手な印象の顔の作りだった。しかし、そのうるんだ唇から紡がれる……いや、繰り出される言葉はまるで矢の様に刺さるものだった。
いい年をして、身の丈を知らず……
アルフはまた、ため息をついた。おっさんの自覚はある、がしかしそれはエルにそうだと決められて作られたからだ。
満二歳、本当なら、普通の人間ならまだよたよた歩く幼児の年だ。
身の丈がわかりようもあるまい。
おっさんだけど幼児。などという道理は、通常ならあり得ないのだから。
「感心だな!私よりも早くついていたこと、誉めてやろう!」
女騎士フレイヤに早朝連れてこられたのは、水晶の森のごく浅い場所だった。
アルフの武器への関心の低さに、武器フェチの女騎士“フレイヤ・V・フォン・ミズガル”は大変憤慨しており、魔法でのエンチャント(付加効果)など本当の武器使いの前にはクソの役にもたたないのだ、と言ってのける。
アルフは拒み切れずに武器の扱いを教授されることになってしまったのだった。
「どこぞの貴族のお遊びか知らんが、王国一のこの私に捕まったのが運の尽き!このミズガル王国の第二王女にして王国騎士副団長の私の剣技とくとあじわうがいい!」
どこぞの貴族のお遊び、というフレイヤの言葉にアルフは何か、感じた事のない胸の疼きを感じ顔をゆがめた。
それをどうとったかアルフにはわからないが、女騎士のやる気は見てわかるほど満々になった。
アルフはナイフで、フレイヤは小枝での剣術指導だったが、アルフはボロボロになるまでその技を受けていた、日が暮れるまで。
一番星が顔をのぞかせて大分たったころ、アルフはやっと這う這うの体で宿の部屋までたどり着くことができたのだった。
ベッドにたどり着いたところで、アルフの記憶は途切れていた。
この世に生まれてはじめて、アルフは疲労によって寝落ちするという体験をしたのだった。