おっさん(満二歳)は武器を求める。1
初めての洞窟探検を終えたおっさん(満二歳)のアルフはクエストの報告を終わらせ宿に帰ってきていた。レクタの泊まる宿に自身でも部屋を取ったのだ。
部屋に帰るとまず、日課にするようにと言われた武器の手入れをし始めた。するとアルフの得物であるナイフにかけがあることに気が付いた。
「武器屋に行こう」
手入れの方法は知っていて損はないが街にいるのなら武器屋に直してもらう方が確実であると、生まれた街インセペットの受付嬢ルーメンに事あるごとに言われていたアルフは、今日はもう遅い時間だからと、ナイフの手入れをそこそこにして眠りについた。
洞窟探検は大変だったが、アルフはとても満ち足りた心で眠りについたのであった。
そうして翌日。
とにもかくにも、冒険者が尋ね物をするならギルドである。
「おはようレクタ!」
「おはよアルフさん……おっさんのくせに元気だなぁ」
寝ぼけ眼で少々失礼な事を言うレクタに苦笑いを返し、宿をでてアルフはギルドに足を運んだ。
覚悟していた先二日で味わった大音量の迎えの言葉に見舞われることはなく、拍子抜けだと少しばかり寂しく思いながらアルフはアーントの座るカウンターの椅子に座った。
「これはこれはアルフ様!本日はどのようなご用件でしょう?」
「あ、ええと実は武器がかけてしまいまして」
事情を話すと、少し躊躇いながらこの町一番の武器屋へのルートが赤く塗られた地図を渡される。
ウルズがいないせいなのかは定かではないが、幾分顔色のいいアーントが言うにはこの街で一番の品ぞろえだという、セクンドゥスの武器屋にやってきた。
アーントの様子が気になっていたアルフだが、武器屋らしい武骨なドアに少々気持ちが昂ったアルフは、その気持ちのまま勢いよくドアを開ける。
「いらあしゃあああい!」
金属を鍛える槌の音が店の奥から響き、それに全く負けない音量で来店への声掛けが行われる。
そこにはウルズがまたアルフの耳元で満面の笑みのまま立っていた。
「な、なんで君がここに?!」
「えっだってここ私の家ですもん!両親がやってる店なんで休日は大体看板娘やってます!」
そう、そこはウルズの生家であり、彼女の両親が営む武器屋だったのだ。
この環境にいたのでは、確かに声は大きくなるばかりだ。アーントさんが一瞬戸惑いを見せたのはこれが原因か……とそんなふうに思いながらアルフは妙に納得してしまうのだった。
大音量にアルフが耳をさすっていると、怒涛と言えるウルズのセールストーク(?)が始まった。
「それでアルフ様!今日はどういったご依頼ですか?冷やかしも大歓迎ですけど出来れば売り上げに貢献していってもらえると嬉しいです!例えばこれは獣人国独特の竜刀を研究した父が作った自信作でこっちのは母が付加効果を付けた一級品ですよ!」
ウルズが手に取りすらすらと武器の説明をしてくれる中、アルフは付加効果という言葉に興味を持った。
「なぁ、そのエンチャントってなんだ?」
「ええ?エンチャントも知らないんですか?!冒険者なのに遅れてますねー!」
ごちぃぃん
アルフが傷つく暇もなく、ウルズの頭に巨大な拳が落とされた。
「こんのバカ娘!お客様になんば失礼なことやっとうとーーーー!」