表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/30

おっさん(満二歳)の初めての洞窟探検 4

「うおわあ!」

「アルフさん!」


 レクタがとっさにアルフの腕を掴むが、レクタよりアルフのほうが重く落下の勢いも相まってともに上体を落としてしまう。レクタは何とか地面の凹凸で踏ん張ってアルフと自分の体を支えている状態だ。


「くそ!ピットフォールスパイダーかよっいつの間に住み着きやがったんだ!おかしいだろ常識的に考えてっ!」


 アルフが落ちたのはピットフォールスパイダーの罠だった。至極切れやすい糸を吐き出すこの蜘蛛の魔物は、地面に穴を掘り、糸で覆うとそこに足を踏み入れ落ちてくる獲物を食らうのである。

 主に洞窟を住処にしているが、定期的に冒険者の訪れる水晶の森の洞窟に住み着くのはその性質上珍しい魔物だった。なぜなら罠を張っているところを目撃されれば罠としての意味をなさないからだ、ピットフォールスパイダーにはその程度の知能はあった。

 しかし、だからこそこの場所に罠をはったのだとも言えるだろう。


「ひっ」


 アルフが下を向くとアルフの二倍はあるだろう、まるで蟻ようなあごを持つことが特徴のピットフォールスパイダーが今か今かと二人が落ちてくるのを八つの目で見つめていた。


「アルフさんなんとか上がってくれ!」

「わ、分かった!」


 もがくようにすり鉢状になった穴の側面を蹴って上に上がろうとするアルフだが、側面にもピットフォールスパイダーの切れやすい糸が張り付けられておりなかなかうまく力を籠められない。揺れるたびに少しずつレクタの体も穴へ近づいて行ってしまう。


「くううう!」


 ぎちち、とピットフォールスパイダーがあごを鳴らす音が洞窟にこだまして二人に焦りが増していく。レクタの手ににじむ汗がアルフを支えきれず少しずつだが掴んでいる腕を取り逃がしていく。


「た、のむううううううう!」


 アルフの悲痛な叫びが反響すると同時に、ピットフォールスパイダーが待ちきれなかったのか穴の奥から這い上がってきた。その心が恐怖に染まったアルフは脚をじたばたと動かしているがやみくもに動かされたそれは空を切るばかりだった。


「アルフさん!落ち着いて!」


 レクタが何とかアルフをなだめようと声をかけるが、恐慌状態のアルフには届かない。

 大きく開かれたピットフォールスパイダーのあごが、ついにはアルフの足を捕える事のできる距離まで伸ばされた。

 がきぃいいん!

 一咬み目は紙一重で躱せた。二咬み目の準備とばかりに細かくカチカチとあごを鳴らすピットフォールスパイダーにアルフは冷汗が止まらないし、レクタの手からアルフの腕は逃げていく。

 そうして、二咬み目がやってきた。


「くそおおおおおお!」


 がきぃいいん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ